第236話 私語

「そういえばさ、ファンクラブ入ったよ〜」


 正座して顔突き合わせてると、話題にこまるなと思ったら、なんて返したらいいのか分かんないとこ来た!


「すごいね! あれ、すごい。毎日日記書いてるの?」

「あれはモコが書いてるんだよ」

「えっ! 滝夜じゃないの!?」

「違うんだって。なんか、一か月分くらいまとめて書いて、合うものを上げてるって言ってたよ」

「へえ〜!」


 っていうか、何故そんなに詳しいんだ咲良。


「ファンクラブ、わたしにはなくて、そういう手もあったかって、勉強になった」

「逆にないんだ! へえ〜、意外!」

「会員数30000超えらしいですよ?」

「凄っ!」


 そんなことになってたのか、アレ……

 自分と乖離し続けてんな、怖いしかないぜ。


「でも見てて面白いもん、実際滝夜じゃないし〜」

「それな〜」


 うう、げんたくんまで……

 もしかして、全員見てるのか、アレを。

 おれが怖くて一回も見てないアレを。


『みんな、ここで私と公の話をしよう。

 公とは全体のこと、つまり社会のことだ。私とは自分のこと。

 公共という言葉は皆が関わるということだ。

 学校や交通機関、遊園地などに限らず、ほぼ全ての環境は公共と言える。

 公共のものは自分勝手に使うと、他の人に迷惑をかける。だからルールを守って利用する訳だ』


 そうだねって思いながら聞いてるけど、何故突然そんな話を始めたのかが分からない。

 みんなも目が合うと、?な視線を送ってくる。


『さて、仕事場は公だ。特に、働く自分と利用する相手との間には大きな違いがある。利用者は働く者に誠実な働きを求める。遊んでいるように見えることは、その期待を裏切ることだ。

 もちろん楽しく仕事することは必要なことだ。特に保育園は楽しいところだというイメージは積極的に持ちたい。

 だが、私語はやめよう。

 仕事に全く関係のない話をして笑っていると、職種によっては大問題となる。

 また、面白過ぎて注意がおろそかになることは絶対に避けて欲しい。

 今君たちは、保護者の命より大切な子どもを預かろうとしている。ゆめゆめ忘れないで欲しい』


 そうか、私語か。

 うるさいとか、静かに、とかは言われたことあるけど、こんな風に言われたことなかった。

 私語禁止、って言ってくれたらすぐ従うのに、わざわざ説明してくれたんだな。

 反省。

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