第127話 キャンプファイヤ? BBQ!
男子部屋に戻ったら、はしゃいでうるささマックス、そして奴らからはプールの匂いがした。ちくしょう。
「や~滝夜、なんで寺なんか行ってたんだよ」
「可愛いかったぞ? マジでマジで」
「朝湖ちゃんだろ、マジ天使!」
「うるさいなお前ら」
あいつも行ったのか。そりゃま行きたいって言うだろうけど。
「はい食堂に集合~」
さっとふすまが開いて、母さんが呼びに来た。
もし夜で聞かれたくない話をしていても、こうやっていきなりふすま開けられることは間違いないと確信した。ここにプライベートは存在しない。
「は~い」と返事をしてみんなは立ち上がる。
先に呼ばれたらしい女子部屋だが、先行するのはさっきの二人だけ。ゾロゾロと歩いて食堂に着くと、残りの女子が走り込んで来た。
何してたんだ。
プールの後の女子がアレコレしないとダメっていう常識はおれにはまだなかった。
食堂は変貌していた。
まるで技術室のようにテーブルや隅に道具が積まれて、運べ! という空耳が聞こえた。
「は~い、これ運んで~」
リアルでも聞こえるぜ。
「落としたりぶつけたりしないでね~」
「こっちじゃこっちじゃ」
どうも小猫が先導して、運ぶのがおれ達だと。
お前も運べよ。
「床に置かないようにせよ」
玄関へ行くと、靴が並べられていた。
前言撤回、小猫運ばなくていいや。
そういえばお前、準備や案内、ずっとやってんだもんな。
さっきまでニワトリがいた庭を抜けて、家の東側にまわる。
結構広い石畳の道を通って歩くと、急に開けた場所に出た。
キャンプ場?
運動場?
いややっぱりキャンプ場?
中央にキャンプファイヤぽい木組みある……本格的!
「なにキャンプファイアやんの?」
「すげー!」
「もはや個人の自宅を超えてんな」
「そこにドアストップはさんで~」
振り向くとドアが開いてて、ニコヤカにマコちゃんが手を振ってる。「こっちこっち~」
「なんだよこんな近くに勝手口あんじゃん」
「こっから荷物渡すから運んで~」
「ハイハイ」
玄関からの距離は大したことない。おれ達は女子が代わりばんこに渡すアレコレをどんどん運んだ。
人数が多いせいか、荷物は大変に多い!
一番大きいテーブルは、運んですぐ組み立てた。それからイス、調理器具、食器、最後に食材。
「ハイ終わり」
最後らしいクーラーボックスを渡すと、勝手口は閉じられた。さっきまで渡してくれてた女子がゾロゾロと合流する。
おれ達は指示に従ってコンロを設置したり、調理器具を用意したり。結構やることある。
「今晩は~」
最後になった服部さんが、中村さんとお父さんを従えてやってきた。
ようやくこっち来たんだ。それとも、もう来てたけど片付けとかしてたのか。
「こんばんは~」
「初めまして愛菜の父親です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いしま~す」
みんな手は止めずに顔だけ見せてあいさつ。母さんだけはかけ寄ってペコリ。
「もう当番は決まってますか?」
「いえ、大体です」
「できたら、娘には一人で黙々とできる役を。例えばイス並べたり肉焼いたり」
「オッケーです。ではイスを。準備ができたらお肉焼いて下さい」
「ありがとうございます」
母さんはイスの並べ方を指示してあとは任せた。
お父さんは終わったら座っているように指示して、母さんと同じ仕切りに回った。
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