第118話 オムライス実演中

「お皿とスプーンを出して~」


 お皿は調理場に、スプーンは4本ずつカトラリーケースに入れて食堂に。


「あれ? この器は?」

「これも出してって」


 マグカップみたいな、カップスープ入れるような器も並べられてる。


「スープ、作っておいたんよ」

「わぁ! ありがとうございます」

「なんのスープ?」


 母さんと朝湖がラーメン屋の寸胴みたいな鍋をのぞきながら言うと、「びしそわーず」って、ひいばあが答える。


 びし??


「わあ、美味しそう。嬉しいね」

「うん! ひいばあありがとう」

「いっぱい飲んでね」

「やったあ」


 分からん。謎スープ。


「ビシソワーズっていうのは、じゃがいもとネギを使ったミルクスープだよ」

「へえ~」

「冷たいスープだよね」

「飲んだことない~」


 飲んだことあったかな?

 分からんけど飲んだら分かる。当たり前か。


「ごはんが炊けたら卵でくるんで、スープを注いで一緒に食堂へ持って行きます」

「は~い」

「今のうちに順番を決めます。コンロが5つあるので、五人ずつ。やりたい人!」


 手が挙がったのは、住吉さん、服部さん、鬼ノ目さん。あと二人。


「僕やる」

「じゃあ朝湖。あと一人」

「ぼく、やります」

「はい井川くん、じゃあ二番目ね~」


 有沢さん梶口さんマコモコ石上くん、刈谷くん篠崎くん佐々木くん小林くん八嶋さん、比護杜さん小猫母さんおれと、ひいばあが陽太の分も作る、で順番は決まった。

 それから座る席を選んだりお茶を運んだりしていたら、ごはんが炊けた!


「中の具が片寄ってるんので混ぜますよ」


 と言って取り出したしゃもじがヤバイレベルでデカイ!

 ひいばあちっちゃいから余計でかく見える。

 フタをパカッと開けると、湯気と一緒に美味しそうな匂いが広がった。


 ぐ~


 おれの腹が鳴った! 恥ずかしい!

 みんな笑ったけどみんなおなかすいただろ??


 ひいばあがデカイしゃもじで軽そうに混ぜ始めると、炊飯器もデカイからふつうな気がしてくる不思議。


「ここに型代わりの容器を用意しました。大中小とあるから、自分の食べられそうな量を選んで使ってね」

「ああ、なるほど」


 良いものを見た、という風で住吉さんがうなずいた。

 それを見て母さんが彼女に言った。


「あなた一番最初でもいいかしら? 見本になってくれる?」

「あ、いいですよ」

「ありがとう」


 最初の5人は自分の塩かけた卵、バター、お皿を持ってそれぞれのコンロにフライパンをセットしてから、住吉さんの周りに集う。

 もちろんその他大勢もその周りのギャラリーと化した。


 住吉さんは驚きの(大)をチョイス。いや、いいんだけど。

 デカ炊飯器からプラ容器にごはんをよそって、ペンペンと詰める。


 ちなみにさっきのデカしゃもじは既にひいばあが洗ってて、普通しゃもじになっている。普通なのにめっちゃ小さく見える。


 住吉さんは流れるようにコンロへ移動。

 コンロはガスだ。

 スイッチを入れて、火力スイッチ(中)を押す。

 自分ちのコンロじゃないのに、手慣れてるな~。


 バターを落として菜箸でくるくるっと引くと、次にカッカッカッカッと音をたて、卵を攪拌する。


 じゅわ~


「美味しそう~……」


 卵流しただけなのに、本当うまそう。

 菜箸で少しくるくると混ぜて、ごはん(大)を乗せる。


 フライ返しでごはん乗ってない部分の卵を掛けて、フライパンを傾けて端っこに寄せる。

 お皿を持って、チョイチョイとひっくり返して、完成!


「すげー」

「うま~い!」

「ありがとうねえ」


 いつもニコニコしてるから、歓声の中にいても変わらずニコニコしてる住吉さん。

 フライパンをくるくると拭いて、綺麗にしている。

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