第11話 報酬

 俺はセイリウムさんにゴーレムの性能や使い方、あらゆる機能を説明したうえでゴーレムを操作するための徽章を引き渡した。


「ありがとうアルト君。例の話を聞いた以上、君の力がどのくらい重要になってくるのか確認しておきたかったんだ。想定していたよりもはるかに高性能なものが来てびっくりしたけど、おかげで君のことを信用できたよ。信頼も、ね。」


 セイリウムさんはそう言って右手を差し出してきた。俺もその手を固く握り、握手を交わした。


「ありがとうございます!これからももっといいものを作れるように頑張ります!」

「あっはっは、君は本当に真面目だね。それに魔道具に対して本当に真摯だ。アメリアちゃんは君のことをとても気に入ったといっていたけど、僕も君のことは結構好きだね。これから困ったことがあったら僕のところに来るといい。できることであればなんでもしてあげるよ。」

「本当にありがとうございます!じゃあ、早速なんですけど一つお願いしたいことがあるんですがいいですか?」


 俺は早速、セイリウムさんに一つお願いをしたいことがあったのでしてみる。


「おお、早速かい?何が欲しいんだい?」

「この町で商売をするための許可証が欲しいです!」

「え、そんなものでいいのかい?それくらいなら商業ギルドに行けばすぐに作れるんじゃないの?」


 セイリウムは不思議そうな顔で俺に聞いてきた。彼は貴族中の貴族であるため、俺の身分の問題をきれいさっぱりと忘れているようだった。


「俺は下民なんで、商業ギルドに行っても許可証はもらえないんですよ。」

「あ、そうだった!君は下民だったの忘れてたよ!」


 セイリウムさんは手をポンとたたきながら、ポケットに入れてある通信の魔道具を取り出した。


「もしもし、セイリウムだけど。カエラはいるかい?」

『少々お待ちください、すぐに変わります。―――変ったわよ。どうしたの?』

「ちょっと急ぎで商業ギルドの許可証を用意してほしいんだ。僕の推薦で作ってもらえるかい?」

『分かったわ。三分後にギルドに許可証を持たせる子をギルドに来させてちょうだい。』

「ありがとうカエラ。すぐに行くよ。」

『ちょっ、あなたは来ちゃダ・・・ブツッ』


 セイリウムさんは強引に通信を切り、みんなを連れて町へと戻った。セイリウムさんは何やら来るのなと言われていたようだったが、そんなことお構いなしに商業ギルドへと向かっていった。


 俺たちは全員で商業ギルドへと向かっていった。その中にはもちろんセイリウムとアメリアもおり、ギルドに入った瞬間、建物の中の雰囲気が急に張りつめたものに変わった。お構いなしにカウンターへと向かうと、カウンターの奥のほうでアメリアにそっくりの女性がとても怒った顔をして仁王立ちしていた。


「なんで私が怒っているか分かりますか?」

「えーと、大所帯できたから?」


 セイリウムさんは本当に気が付いていない様子で、首をかしげていた。


「あなた本人がここに来たからですよ!あなたがここに来るとほかの商人さんや職員が困るでしょう!」

「あ、あぁ。そういうことね。それはごめんと思ってる・・・」


 やっと気が付いたようで、申し訳なさそうに謝罪した。


「全く、これ以降は同じようなことがないように。来るならせめて変装してきてください。アメリアもですよ?」

「分かったよ。」

「ごめんなさいお母様。」


 バースデー父娘はバースデー母に怒られていた。その彼女の視線が急にこちらへ向いたので、俺は少し身構えてしまう。


「そんなに心配しなくても初対面の人にいきなり怒ったりしないですよ。私はアクマリンの町の商業ギルドマスター、カエラ・バースデーです。これからよろしくお願いします。」


 思っていたよりも普通の対応をしてもらえたので、少し安心した。カエラさんから商業ギルドの許可証を受け取った。許可証の裏面にはセイリウムさんの署名も入っており、この町で一番の信用を受けた許可証であるという証明がされているということになる。それはつまり、俺が何か問題を起こした場合、その責任の半分はセイリウムさんのところにも行ってしまうということと同義である。


 その重大さをかみしめながら、ちゃんとしなけれいけないなと俺は気を引き締める。俺のその心の内を読んだのか、カエラさんが安心したような表情を見せた。


「あなたが初めて連れてきた子だからどんな変な子なのかと不安だったけど、これなら大丈夫そうね。」

「なにさ、まるで僕に見る目がないみたいな!」

「そりゃあ、あなたにはものを見る目はあっても人を見る目は全くないじゃない。」

「ぐぬぬ、否定できないのが悔しいな…」


 情けなくカエラさんに軽く言いくるめられてしまったセイリウムさんであった。


 その後、簡単な説明を受けて、ギルドを出た。そこでセイリウムさんたちとは別れ、ドラゴンナイツのみんなとマリアで宿屋へと向かった。大仕事が終わった後の疲労がどっとあふれ出てきて、突然睡魔に襲われる。


「俺たちはこれから軽く依頼をこなしてくるが、アルトはどうする?」

「ごめん、俺は眠いからこのまま部屋で寝るよ。」

「そうか。じゃあ四人で行ってくるよ。夕方には戻ってくるから、起きれたら一緒に飯を食いに行こう。」

「了解・・・」


 俺は睡魔には勝てず、ふらふらとベッドに倒れこんでそのまま眠ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る