第4話 会議

「ちょっと失礼しますね。」


 アルトはメリッカから魔法銃を預かり、鑑定を始める。


・・・・・・・

名称:ランページ・ボルトアクション

区分:超高威力対生物ライフル

耐久度:25900/45000

所有者:メリッカ・ワットソン

備考:銃口の内部にわずかなヒビあり。スコープにわずかな誤差あり。

・・・・・・・


「この銃の名前はランページ・ボルトアクションですね。かなり使い込まれてるのか、耐久が半分近くまでってますね。その影響なのか、銃口にヒビが入っていたり、スコープがずれていたりするみたいです。」


 メリッカはアルトの鑑定をきいて、少し考えこむような素振りを見せる。


「さすがね。わざとスコープを素人にはわからない程度にずらして渡してみたのだけれど、まさかそのほかの故障も見つけられるとは思っていなかったわ。」


 アルトはほっとしながらもランページをメリッカに返した。渡す直前に故障をすべて修理した状態で。


「さて、スコープを戻さないとこれからの作戦に支障が出るからね。ってあれ?いつの間に直したの?」

「渡すときに直しておきました。ついでに銃口のヒビのほうも完璧に直してます。」

「あ、ありがと。」


 メリッカがランページをまじまじと見ていると、今度はライムが話しかける。


「さて、ある程度彼を信頼できたところでゴーレムの対策について考えようじゃないか。アルト君、俺たちはゴーレムについて無知だから説明をお願いできるかい?」

「分かりました。まずゴーレムの仕組みなんですけど、体の可動部、例えば肘や肩、足などには風と炎の付与魔法が施されています。そして、そのほかの装甲部分には土と闇、炎の付与魔法が施されています。これによってゴーレムは超人的な攻撃力とスピード、防御力を兼ね備えています。」

「それじゃどうしようもなくない?あたしのランページじゃぶち抜けないの?」

「おそらく単純な威力不足で厳しいと思います。それに、ゴーレムはただ強くて早くて硬いだけじゃないんですよ。一番の脅威はあらゆる魔道具との親和性です。どんな魔道具でも融合して自身の体の一部にすることが可能です。かなりの確率で何かしらの結界の魔道具を身に着けていると思います。」

「なるほど、それではメリッカの銃撃ではダメージはおろかかすり傷一つもつけられない可能性すらあるということか。それで、君には何かアイデアはあるのかな?」


 アルトは収納の魔道具から、メリッカの持つ銃をさらにゴツくしたような見た目の銃を取り出してメリッカに渡す。


「この銃はリーパーと言って、俺が作った中でも最高峰の威力を持つ対物ライフルです。単純な威力ならランページの10倍くらいはあると思います。こいつでゴーレムの頭部を攻撃してください。そのあとのゴーレムの状況によって3パターンに分けて行動しましょう。・・・・・」

「分かった。その判断はアルト君がしてくれ。メリッカはその新しい銃に慣れるために道中の魔物の群れに撃ってみたらどうだ?」

「あ、それもそうね。それじゃ遠慮なく…」


 メリッカは龍車の窓を開け、銃身を外のホーンフロッグに向ける。スコープをのぞき込み照準を合わせて引き金を引く。


-轟音-


-閃光-


 ホーンフロッグの群れは跡形もないどころか、あたりの地面ごと消えてなくなってしまっていた。


「うわぁ!!この銃すっごい!威力も精度もすごくいい上に反動がほとんどない!」


 メリッカはとてもご満悦の様子。一方ほかの三人はというと・・・


「まずい、メリッカがまた新しいおもちゃを手に入れてしまった。。。」

「あんなの目の前に打ち込まれたらまともに戦える気がしないぞ…」

「メリー、今回はほどほどにしてくれると嬉しいなぁ…」


 どうやらこのパーティーで一番の問題児にとんでもないものを渡してしまったのかもしれない、と心配しなってしまうアルトであった。

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