第2話 到着
「わかりました。では、やらせてもらいますね。」
アルトは魔力で出来た工具を空中に浮かべる。その工具を使い、あっと言う間に魔導騎馬を分解する。
手早く以前触った魔導騎馬のパーツと見比べてどこに問題があるのか探る。数百あるパーツをものすごいスピードで見ていき、ついに故障の原因になったパーツを見つけた。
右前脚の付け根部分の可動部に付与魔法が付けられているのだから、その付与の炎の割合が高すぎたため金属の膨張が設計時よりも大きくなってしまったため部品が割れてしまったのだ。
アルトは手早く同じ形の部品をストックしていた鉄で作り、付与魔法を正しく付与し直して組み立てた。ついでに他の部分の付与魔法もより最適な割合に変え、しっかりと組み立てた。
形は故障前と一切変わらないまま、スペックは少し上がっている。一応のためにアルトは直したばかりの魔導騎馬を起動して乗ってみる。
試しに走らせてみたが、特に異常は見当たらなかったため、御者と令嬢に修理が完了したことを伝える。
「すいません、少し時間がかかってしまいましたが、修理完了しました。」
「もう終わったのか?!まだ初めてから10分も立ってないぞ!?」
「はい。ちゃんと動作チェックも済ませてあるので今すぐ使って頂いても問題ないですよ。」
御者は驚きながらもしっかりと立っている魔導騎馬をみてアルトを信じたのか、魔導騎馬を馬車に繋ぎ始めた。
「君のようなとても腕のいい魔道具師に出会えて本当に幸運だった。ありがとう。」
御者は馬に跨りながらアルトに礼を言った。
「旅の魔道具師の方、本当にありがとうございました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「アルト・ロゼンタールです。」
「アルト様、この御恩は必ず返させていただきます。何か困ったことがあれば、アクマリンの町にあるバースデー邸にいらっしゃってください。では、失礼いたします。」
そうして馬車はアクマリンに向かって走っていった。さっきの速度の三割り増しで。
〜〜〜〜〜
「先程の魔道具師、かなりの技術をお持ちでしたが、私めは彼のことを知らなかったのですがお嬢様はご存知でしたか?」
「いいえ、私も名前すら聞いたことはありませんでしたわ。魔導騎馬をたったの10分で直してしまうほどの魔道具師なんて世界中を探しても見つからないでしょうに。」
「彼のことはどうなさいますか?」
「もちろんあの技術力を死なせてしまうのは惜しいでしょうし、それは世界にとっても大きな損失です。お父様にお願いして彼に最大限の援助をしますわ。」
「私もその方がよろしいかと思います。私の方でも彼のことを探ってみます。何かわかればすぐにお知らせします。」
「お願いします。でも、あまり無理はしないでくださいね。」
アルトの知らないところで貴族との繋がりが出来上がるのだった。
〜〜〜〜〜〜
貴族の魔導騎馬を修理してから約20分程歩いたところで、アルトはアクマリンの町に到着した。
町に着いた頃には、もうすでに太陽も落ちかけており、町も酒を飲む人たちでごった返していた。
流石に今から冒険者ギルドに行って冒険者登録するのは厳しいので、また明日にしようと思う。
とりあえず宿を取って荷物を置いてくる。軽く食事も取って、そのまま商店街に向かう。この街は王国最大の冒険者たちの町であり、売ってある商品は冒険者が依頼の際に必要になるものや、戦闘時に使う武器や魔道具、ポーションなどが多い。
特に魔道具は戦闘用のものが7割を占め、アルトにとっても魔道具といえば戦闘用のものが一番馴染み深い。
しかし、今までゴミ捨て場にあるようなものを漁って直して使ったり、自分で素材を集めて自作していたので全くと言って良いほど相場を知らない。
今日は戦闘用の魔道具の相場を知るのが目的である。今後自分の店を持つことになったときにも十分役に立つだろう。
ということで一番最初にやってきたのは、この町1番の魔道具店だった。
この店では、あらかじめ作ってある既製品と、一から希望を聞いて作る特注品をの両方を取り扱っていた。
ある程度回っていると、魔道具にも区分があることがわかった。魔道具は質によって六つに分けられる。
E級:計測値1〜99までの魔道具
D級:計測値100〜199までの魔道具
C級:計測値200〜299までの魔道具
B級:計測値300〜499までの魔道具
A級:計測値500〜999までの魔道具
S級:計測値1000〜の魔道具
この計測値というのが、魔道具に充填できる魔力の限界値であり、より精密かつ丈夫に作られた魔道具であるほど限界値が高くなる。
簡単な照明の魔道具程度のものなら、どれほどレベルの高い魔道具師が作ったとしてもD級が限度である。
逆に、戦闘用の魔道具の一つである属性を変化させられる剣、いわゆる人工魔剣にははっきりと差が生まれ、E級からS級まで存在する。
この店では一番高いものでもB級のものまでしか取り扱っておらず、その値段はおよそ三百万ケルーだった。銅貨換算でおよそ三十万枚もの値段であった。
B級の魔道具でそんなにするとは全く思っていなかったので、アルトは少しばかり驚いた。何かの間違いかもしれないと思い、他の店も回って見たのだが、やはりどの店もそのくらいの値段設定であった。
アルトは自分の思っている魔道具の価値と世間一般の魔道具の価値に大きなギャップがあることを知れて満足し、そのまま宿に戻っていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます