第3話
男はみんな同じなのかなあと思った時がある。
私の名前を間違うなんて、それも夜中に恭一が寝返りをうった時に、
「なお……」と呟いた。
あいつの口から出た知らない女の名前。はっと飛び起きた私。
あいつとは付き合っている恭一のことだ、その時はあまりに悔しく手、暗闇の中でじっと睨んでいた。
眠っている恭一のことが許せずにベッドから出て、一人座り込んで憎いあいつの背中とお尻を見て、布団を掛けた。体を揺すって起こして詰問するという選択肢もあったが、やめた。私ももらったPRADAのキーホルダーを無くしている事をまだ言っていないから。
仕事で何かのミスを直すとか言いたかったとか? 違うな、直二郎とかいう男の友達の名前、もしくは名尾さんという上司のこと?
まあ、恭一も好きにすればいいじゃない。なおちゃんと仲良くねと私は思う。好き、だったけれど、最近なんだか空気みたいになってきた。
私は東京で開催される就職セミナーに参加するために新幹線に乗っている。
今頃、恭一は私の部屋で眠い目をこすりながら、髪をかきあげて私を探すはずだ。私の名前は桜井巡(さくらい めぐる)。
何だって親はこんな男のような名前を付けたのだろうか。女らしい名前だったらいくらでもあるのに、学生時代からずっとそう、中学の時も高校の時もめぐみじゃなくて、めぐるなんだとなんど言われたことだろう。
もうそれにも慣れたし、恭一のからだにも慣れてしまった。
東京から帰ったら、別れよう。
それでいい、私はうなずく。心の赴くままに自由であれと思いながら。
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