第5話 あるヲタクの目撃談

           あるヲタクの目撃談


  ローラン首都 カオルン 21:00 


カオルンのオフィスビル街、残業していたサラリーマンも少しづつ家路に帰り、オフィスビル付属のカフェテリアはほとんどこのビルのサラリーマンしか利用しないのでパラパラとしか人はいない。このカフェの制服はあのおっぱいを強調した制服のオマージュでしかも店員もカワイイ穴場なのだ。

 お客は目に刺さるような蛍光グリーンのレインコートを着た女の子、今日は雨なんか降ってない、あれは何かのコスプレなんだろうか?耳がついている。ボクのチェックしてないゲームなんてなかなか無いだろうけど、昨今の美少女コンテンツの乱発状態ではさすがにすべてをチェックすることは不可能、けどどこかで見たことがあるような、しかし猫耳のキャラなんてそれこそ星の数ほどいる、すべてのキャラが猫耳のソシャゲだってあるくらいだ。

 そしてもう1人ホスト風の男がさっきから大声でしゃべっている

ホスト風の男「だから超うぜーって思ってさ!そうなのよ!まじなのよ」

こういう具合で会話になんの内容もない。本当に誰かと会話してるのかと疑いたくなる、それほど何の内容もないのだ、会話になってない、うるせーんだよ、早くどっかいけ。


  最近ネットをSaint社の衛星通信に乗り換えた、サービス開始直後はレビューを見るまで待機、と思っていたが、評判は上々なので待ちきれなくなってしまった。もちろんこのカフェテリアでも通信は良好、速度は爆速である。

 この衛星通信システムは「MatriX」という名前で、今までの無線ネットワークとはまったく異なるもの、とされているけど技術情報はほとんどまったく公開されていない。さらに、現在市場シェア98%を支配している電脳系のOSでは使うことが出来ないので初心者にはなかなかハードルが高い。


 その電脳OSなのだが、ここ1年程度自動更新のバグが急増している、開発者の頭がおかしくなったのか?との噂も流れているし、公式が利用者の情報を抜き取って政府に渡すためのバックドアプログラムを仕掛けているといった陰謀論も流れている。

 インペリアの軍事情報が電脳の更新プログラムに仕掛けられたサプライチェーンウィルスで情報をすべて抜き取られたという噂まで流れている、インペリアのアンチウィルスシステム「ギガント」は何も出来ずにすべての情報を抜かれたとの話だ、もちろんインペリアは否定しているけれど。

 

 それが事実だったらいつ世界が滅んでもおかしくない。核ミサイルの解除コードなどもすべて盗まれたってことだから。でもインペリアもそこまでバカじゃあるまい、大統領命令、解除コード、の他にも物理キー、ヒューマンチェックなどのロックをかけているはずだ。逆にそれが危険だっていう人もいるけれど。ヒューマンチェックが入ると、土壇場で艦長がビビってしまい、本当に撃ちたいときに撃てないことになりかねないというわけだ。確かに自分が世界を滅ぼすボタンを押せるかどうかといわれるとなかなか自信がない、誰もわからないというものだろう、本人さえも理解していなかった感情が生まれるかもしれない。

 

 とにかく電脳OSの更新がエラー祭り、バグりまくりなので電脳と縁を切れてせいせいした。もちろん他の電脳系端末と同期しずらいのは問題だが、このSaintOS、は非常にシンプルで動作軽快、満足のいく仕上がりだ。

 今日はそのSaint社から新たな重要なお知らせ生放送があるというのでボクはここで待機しているというわけなのだ。非常に意外なことにレインコートの少女も同じ生放送を待機していた。むふ。あんな少女なのにMatriXに手を出すとはなかなかやるではないですか。なんのコスプレなのか聞いてみようかな・・・。写真取らせてくれるでしょうか・・・。


そんなことを考えていると生放送が始まった。

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