第28話 未来の祭り
「その辺は千年後と変わらないんだなぁ……」
(……うん?)
その言葉を隆幸は聞き逃さなかった。 彼は気付かないフリしながら尋ねる。
「ほう? じゃあ、千年後もこういう歌があるってことだな?」
「うん! 沢山あるよ!」
物凄くいい笑顔で答えるツギオだが、それを聞いて疑惑を持つ隆幸。
(祭りがなくなったから復活させたいって話しじゃなかったのか?)
隆幸の疑心をよそにツギオはいい笑顔で歌った。
「『初めての子と艦に乗るときゃ、後ろに出すより前が良い』とかね」
「……どういう意味?」
「徴兵に艦で帰ってくる時、死体で出るときは後ろの貨物エリアからで、生きてかえって来るときは前の出入り口からになるから」
「……微妙にキツイ理由だな」
どうやら未来の日本では戦争することがあるらしい。
戦艦と女を見立てるのはそれゆえのことだろう。
ツギオは尚も興奮して続ける。
「それから……『入れても良いかとスーラ―に聞けば プロテクト通すと鍵渡す』とかね!」
「……全然意味がわからん」
「えーと……スーラーってのはハッカーの事で自分の端末に入って良いかと聞かれて、認証キーを教えるって話しで、ベッドの上でそろそろ良いかと聞いたら、ハッキングのことと勘違いしてプロテクトキーの方を渡したって事」
「なんかすげぇ高度な話してんのに、結局そっちに行くんだな」
「そんなのどこの世界でも一緒だよ」
そう言ってけらけら笑うツギオに嬉しそうに隆幸は尋ねる。
「しかしハッカーが参加するとは……随分と参加者のバラエティに富んでるな。どんな奴が参加してるんだ?」
「ちょっと待って!……………………あった! これこれ!」
そう言ってツギオは端末を開いてある写真を見せる。
「去年の祭りの集合写真! こんな感じだよ!」
「これはまたすげぇな……………………」
去年という言葉には気付いたが華麗にスルーする隆幸。
何故ならもっと気になるところがあったからだ。
何しろ、参加者のほとんどは日本人どころか地球人ですらない。
肌の色は白黒黄にとどまらず、赤青緑も居て、しまいにはドラゴ〇ボールに出てきそうな宇宙人も法被を着ている。
隆幸は紫と白の斑模様をした法被を着たフリ〇ザのような人を指さして言った。
「このナメ〇ク星破壊しそうな奴は何?」
「その人は町で一番の振り手のレイゾーさん。みんなこの人に習って振ってるよ。この人が居ないと棒振りが始まらないから」
「教えるのが地球出身ですらねぇのかよ……」
隆幸のあきれ声を聞いてあはははと笑うツギオ。
「レイゾーさんは500年前に地球の古屋形町に引っ越して来たから、町のもっとも古い家系の一つだよ?」
「今から500年後でも町で最も古い家系か……凄いな……」
想像を絶する結果に驚く隆幸。
ツギオはしんみりと思い出を語る。
「よくレイゾーさんに怒られたなぁ……『ちゃんと腰を落としなさい』って」
「その辺は変わらないんだな」
心の中で中尾隆〇さんの声で再生された隆幸は思わずくすりと笑う。
(小学生の頃からいつも言われるんだよなぁ……)
棒振りをやると大概は腰を高く振ってしまいがちだが、腰を落として後ろ足と腰が一直線になるように振るのが綺麗と言われている。
この辺は流派によって差異はあるが、金剣町の棒振りはそこが肝だったりする。
そして、それはあることを意味する。
(うん。確実に千年後でも存在してるな)
確証を得た隆幸はにこやかな笑顔を変えずに尋ねた。
「つまり、千年後にも祭り歌や棒振りが残っていて祭りのたびにやってるってことだな」
「もちろん! 千年経っても祭り馬鹿のやることは変わらないって!」
嬉しそうに失言をかますツギオだが、隆幸は冷静に聞いた。
「そんで、お前は何しに未来から来たんだっけ?」
「祭りを復活させるた……め……に……」
ようやく自分の失言に気付いて顔を青くするツギオ。
「残ってるなら、イチイチ教えてもらう必要は無いな?」
「あぅ……」
顔が青いまま両手のひとさし指をちょんちょんするツギオ。
ポリポリと頭をかく隆幸。
「本当は何しにここに来た?」
隆幸はジト目で睨みながら尋ねた。
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