第26話 未来は変わる


 さて、数日後の日曜日……

 

 ツギオは久世父と競馬に行ってみたのだが……


「思いのほか当たらなかったねぇ……」


 ちょっとだけ眉を顰めるツギオ。

 ツギオのデータを見ながら考える久世父の顔も渋い。


「大体だが、当たるの7割って感じだな」


 久世父は今までのデータを見て云々唸っている。

 そこに二階から隆幸が降りてきた。


「帰ってきたんや……どうやったん?」

「うーん7割だな。当たったり外れたりだ」

「あれ? そうなん?」


 隆幸は不思議そうな顔になる。


「未来から来たんなら全部当たらないとおかしいんじゃねーの?」


 未来から来たデータなら、全部命中しなければいけないだろう。

 不思議そうな隆幸だが、久世父は冷静だった。


「そうでもない。レース展開自体はほぼ一緒だからな」

「……そうなの?」

「ああ。これなんかは一位と二位が逆だっただけだからな」

 

 微妙に当たっている結果に渋い顔になる隆幸。

 渋い顔でデータを見ている隆幸を尻目に久世父は冷静に分析する。


「圧勝になったレースはほぼ当たっている。僅差になると半々になって、たまにアクシデントで大きく外れたりもする」

「微妙に未来が変わってるんだな……にしても全部当たってもおかしくはないはずなのに……」


 久世父の言葉は理解できる隆幸だが、今一つ納得いかない。

 だが、ツギオは腕を組みながら考える。


「うーん……多分、ちょっとした揺らぎに左右されちゃうんだと思う」

「……揺らぎ?」

「うん」

 

 渋い顔になるツギオ。


「元々僅差で勝ったってこと自体、運が左右してるから。いくら未来の情報って言っても、若干の違いは生まれるからね」

「……となると、わずかなやる気の差とか体調の良し悪しで結果が変わっているのか?」

「そういうことだな」


 ツギオの言葉を聞きながら、久世父は困った顔で宝くじの方を見る。


「そうなると、この数字が当たるかどうかも怪しいな」

「完全なランダムだからねぇ」


 ツギオも苦笑するしかない。

 思いのほか未来の情報が当てにならないのだ。

 こうなると、持ってきたデータが全部役に立つかどうか怪しい。

 上手く当てて大金持ちとまではいかないだろう。


「一応、株の情報もあるけど見てみる?」

「そっちも検証してみよう」


 そう言って内容の照らし合わせをする久世父。

 隆幸が不思議そうに尋ねる。


「そんで結局どうだったの?」

「一応勝ったよ。たまには美味しい所に連れて行ってやるよ」

「……お小遣いに反映してくれた方がありがたいんだが?」

「そうだなぁ……そういやお前も結局祭りに出るんだな?」

「……そうだよ」


 仏頂面で答える隆幸。

 すると嬉しそうに久世父は一万円札を3枚ほど渡す。


「その子連れて行って祭りで遊ぶおもちゃ考えてこい。祭りで遊ぶのも仕事だぞ?」


 そうニヤニヤ笑う久世父。


「遥華ちゃんも出てるみたいだし。そろそろ最後までやるんだろ?」

「うるせぇし」


 そう言って隆幸は慌てて部屋に戻った。


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