私、女神になりました♪～MP頼りのステータスで敵をボコボコに！～

初ログイン♪強制ログアウト♪

　土曜日まで待ちきれない！っと、鈴奈（すずな）に言ったら『家に来て♪』と誘われた。

『いつ来ても驚くわ』

『ほんと、いつまでも慣れないね～』

『慣れたら庶民（しょみん）の終わりだと思っています』

　そんなくだらない話をしながら鈴奈の屋（・）敷（・）の玄関を通る。

　（久しぶりの実家みたいな感じだと言ったら、鈴奈が調子に乗りそう。）

　神城（かみしろ）　鈴奈はお金持ちである。

　私達が通っている学園の理（・）事（・）長（・）が鈴奈の祖父なのだ。

　何度か会ったことがあるけど、孫好きのお爺ちゃんで私にも大変に良くしてくれる。

　しかも、失恋た私が、私を振った彼と同じ学校に行きたくないと鈴奈に相談したらそれを聞いたお爺ちゃんが…………

『なら、私のところに来（こ）させなさい。鈴奈もそれがい（・）い（・）だ（・）ろ（・）う（・）？』

……っと言ってくれたそうなの。

　本当に、ありがたいわ。

『で、ゲームはどこなの？』

『私のゲーム部屋に置いてあるよ』

『今、幾（いく）つ目だっけ？』

『6』

　鈴奈と私は一緒にゲームをすることが多かった。

　鈴奈は家族以外の男が大の苦手で、女子とばかり話ていたけど、恋ばなについてくことが出来ず、孤立（こりつ）し始めていったところをオタク話が話せる相手がいなかった私に見つかり、

『ゲームをしたことがないなら、一緒に遊ぼうよ♪』

っと誘ったのが仲良くなったキッカケ。

『今回の作品は【-Rilly-（ライリー）】のア（・）レ（・）でしょ？

　あそこって、人工学習AIを搭載（とうさい）しまくった結果、開発中のゲームが1年延期したんじゃなかったっけ？』

『それが、

　1ヶ月前になって非公式で完成が噂されてて、ついに1週間前に完成が発表されたのよ！』

『私が見ていない隙に……はぁ』

『まぁまぁ、今からするゲームで嫌なことは忘れよう♪』

　鈴奈のゲーム部屋に着くと、勝手知ったる扉を開く。

　そこには、とても大きなテレビの周りに数々のゲームが散乱している中に未開封の段ボール箱があった。

　クールを装（よそ）ってきたけど、箱の表面に書かれたゲーム会社のロゴやイラストを見ると気持ちが昂（たか）ぶってくる自分がいる。

『こ（・）れ（・）ね？これなのね？』

『そう！

　これが【-Rilly-】最新作であり、初作品のフルダイブ型VRゲーム』

『【オ（・）ー（・）プ（・）ン（・）・（・）ザ（・）・（・）ワ（・）ー（・）ル（・）ド（・）】よ！！！！！』

『こ、これが…』

　私は、とても感動して、

『【オープン・ザ・ワールド】ォオオ！！』

……なぜか叫んぢゃった。

『そっちの箱は、美代（みよ）のね！開けてみて♪』

『えっ、いいの？』

『どっちを開けても同じぃぃ～』

　それなら？…と、段ボール箱を開いていく。

『ヘッドギアね。それと、メ（・）モ（・）リ（・）ー（・）カ（・）ー（・）ド（・）？』

　全体が黒色、蓋（ふた）に金色の大きなロゴが彫（ほ）られた高級感が溢（あふ）れる箱の中には、小さな四角いカードがクッションに包まれてた。

　慎重（しんちょう）に手に取ってみると、挿（さ）す部分が他のゲーム機とは少し違う形をしている。

『ヘッドギア本体にソフトが搭載されているんだけど、予約購入版にはゲーム内で使える特典のメモリーカードがあるの！』

『特（・）典（・）って？』

　鈴奈が、よくぞ聞いてくれた！という顔をして、一度、深呼吸をする。

『今回の特典は【-Rilly-】のこれまでの全8作品のゲームデータを公式サイトを使って、メモリーカードにダウンロードすることで、1（・）作（・）品（・）に（・）つ（・）き（・）1（・）つ（・）、プレゼントがゲーム内で貰えるの！』

『さらに！』

『全8作品のデータがすべて予約限定商品のデータだった場合、完全制覇としてゲーム内で選べる種（・）族（・）が（・）増（・）え（・）る（・）らしい！』

『へぇ～。

　運営も集大成（しゅうたいせい）とか言っていたから頑張ってるんだね。

　でも、それじゃあ、新規の人が不満を持って来ないんじゃないの？』

『予約版は復刻版にして公式で売っているみたいだし、普通にプレイしても充分に楽しいらしいよ～』

　それに、今までプレイしてくれた人が優遇（ゆうぐう）されるのは私達には嬉しいことでしょ♪っと鈴奈は言った。

　ちなみに、完全制覇特典は貰えないが市販のメモリーチップでも前作のゲームをダウンロードして使えば特典は貰えるそう。

　私は訳も分からず、持ってきて♪と言われた全8作品のゲームソフトが入った袋を鈴奈に渡し、鈴奈がテレビに公式サイトを映し出して次々にダウンロードしていく。

『これで終わり！早速プレイしよ！』

『そうね！』

　私達はヘッドギアにメモリーカードを入れて、データの移行完了を確認してからゲームをプレイするのだった。

………………

…………

……

『……ここは？……ゲームの中か！』

　綺麗な場所。

『ようこそ、【OTW】の世界へ♪』

　紫色のウェーブがかかった髪に金色の目の活発系美女が呆（ほう）けている私を出迎（でむか）える。

　運営公式キャラクターの女神リリス。

　彼女は【-Rilly-】の全ての作品でチュートリアルまでの案内役を任せられている便利な女神さんだ。

　ちなみに、【OTW】とは【Open・The・World】の頭文字の略ね。

『お名前を聞かせて！』

　私の目の前で透明なウィンドウが開いた。

『うーん。今回の名前はどうしよう？』

『ミヨ？ミィー？違うな～』

『ミ…オ、ミヨー、ヨミ。ヨミ！』

　私は記入欄（らん）に【ヨミ】と入れる。

『ヨミさん、次は種族と職業を選んでね♪』

　またウィンドウが開き、種族と職業を選ぶのだが……種族が多すぎる！？

『しかも職業ごとに専用で覚える技とステータス、設定まで凝（こ）っているなぁ。これ』

　ヨミは考えた。

　ヨミは根（ね）を上げた。

『もう！多すぎ！【人族】でいいよ！』

　人族を選び、キャラメイクに移（うつ）る。

　極限まで身長を縮（ちぢ）めて、黒から白にした髪を最大まで長くして赤のリングで後ろに束（たば）ねる。あ、髪に赤のメッシュを先端に入れようかな♪

ーーーうん。私じゃないな。ロ（・）リ（・）ってる。

　次に、職業は……と見ていると選択欄の中から【料理人】が目に入った。

[職業]

【料理人】

【第Ⅰ職】料理人

【第Ⅱ職】大料理人

【第Ⅲ職】料理の達人

【特殊職】専業主婦・主夫

【特殊職】 ？

【特殊職】 ？

（※【特殊職】は増える可能性があります。）

　専業主婦が特殊職なのか……………

　そういえば、私。

　彼と恋人になって結婚して子供を育てるのを夢見ていたなぁ…。

『あれ、涙が』

　このゲームの世界では感情表現をよりリアルにするために涙や汗が出せる。

　涙は落ちるとすぐに消えるが、感情を数値化したもの=感情値が一定を越えて脳波が不安定なままだと強制ログアウトになる。

『あれあれっ！？

　どうしたの？気分が悪くなっちゃった？』

『いえ、大丈夫で……す。ぐすっ』

『ぜんぜん大丈夫じゃないよね！？』

　女神リリスさんが私の周りを慌（あわ）てた様子（ようす）で漂（ただよ）う。

『リリスお姉さんにお悩み聞かせて？』

『いいの？』

　ちょっぴり。ナイーブになったから、一旦ログアウトしようと思ったけど、人に話すより、ゲームキャラに話した方が気が楽かもしれない。

　ちょっと、会話にも興味あるし。

『ゲームは楽しむもの♪

　そのために、悩みの1つ2つ言ってスッキリして貰わなくちゃ☆』

『うん。ヴん。ぅうわぁぁ～ん』

　リリスの甘えさせる言葉に私の涙腺は崩壊（ほうかい）して、思い思いの言葉をリリスにぶつけた。

『うんうん。辛（つ）らかったね』

　AIと言っても、リアルな人間らしさを残したリリスには現実の世界の人じゃないという感覚もあって予想外に話やすかった。

ーーーそして、3（・）時（・）間（・）後（・）。

『そうよね！身勝手よね。人間って！』

『そうそう、あそこまで仲良くなってオタクだからダメって！何なの！』

『運営の人も私に期待しすぎよ！まだ生まれて450時間なのに！』

『ほんと期待してたのにぃ～』

　何故（なぜ）かリリスと私は愚痴（ぐち）の言い合いで心が通（つう）じ合っていた。

『ヨミは私の【同類（なかま）】よ！お互い人生が灰色！』

『いや、そこまでじゃないけど、なんか、ありがとー』

　話していたら目の前にウィンドウが出る。

ぴこん♪

≪女神リリスから【同族】と認められました≫

ーーー受（・）け（・）入（・）れ（・）ま（・）す（・）か（・）？ 【Yes】/【No】

　同族？同類の間違えかな？

　運営しっかりしなさいよ…。……別に悪い気もしないし、

ーーー【Yes】。

≪種族が【神族】になりました≫

≪職業が【女神】になりました≫

≪称号【新たなる神】を手に入れました≫

≪称号【語る者】を手に入れました≫

≪スキル【呪言（じゅごん）】を覚えました≫

≪称号【語る者】により、スキル【呪言】がLv2になります≫

　あれ？何これ？

『楽しかったわ、ヨミ♪

　またどこかで話しましょう！』

ぴこん♪

≪強制転移します≫

　ちょ、リリス……

　私は、落ちていた。……空（・）から。

『え？私、え？』

　混乱して頭が回らない！

『さっきまでリリスさんと話してたよね？強制転移だっけ？』

『で、なんで、空からぁぁぁあ！？』

　私は叫けんだ。

　叫んでいる間も地面が近付づいてくる。

『あ、ダメだ。ぶつかる』

　目を瞑（つむ）る。

　スタートはデスペナからか……うっ、

　大きな音と振動が身体に伝わる。

　…。

『痛くない…？

　ぶつかったよね？私』

　恐る恐る目を開く。

ーーーそこには、

ーーー世界が広がっていた。

『なにこれ！すごい！これ、やばい！』

　あまりの驚きに語彙（ごい）が幼（おさな）くなってしまう♪

　でも、私はゲーマーなんだから冷静になって評価しなきゃ♪

　わぁ…、凄い。クオリティが今までのゲームの比じゃないな…！

『私、ゲームの世界にいる！』

ぴこん♪

≪プレーヤー【スズ】が【テレフォン】の許可を求めています≫

　許可しますか？　【Yes】/【No】

『ふー、ふー、冷静になれー』

　とりあえず、感動を体で表して広げた両腕を戻す。

　【Yes】っと。

　【スズ】は、鈴奈がいつも使っているネームだからね。ていうか、今の私のアカウント知ってるの鈴奈しかいないから。

『も～。遅いよぉ～。どれだけ待たせるのー』

『ごめんごめん。リリスとついつい話し込んじゃってぇ～』

『リ（・）リ（・）ス（・）と（・）？』

『え、女神リリスと、だけど？』

『なんか不味（まず）かった？』

『いや…。別にぃ？』

『それより、今どこ！？』

　周りを見渡す。ここ……見覚えある。

『始まりの大地ね！』

『え！？始まりの大地！？

　何で私を置いて冒険しているのよぉ～』

『いや、ここから始まったんだけど？』

　私のいる場所は【-Rilly-】の処女作（しょじょさく）である【クローズ・クロニクル】、略して【クロクロ】のスタート地点【始まりの大地】に似ていた。

ぴこん♪

≪ワールドアナウンス :

　この地に女神が降（お）り立ちました≫

≪女神の気配に反応して眠っていた使徒（しと）たちが目覚ます≫

≪【教会】の機能が新たに解放されました≫

ぴこん♪

≪運営からのメッセージ :

　誠（まこと）に申し訳ありませんが、今から1分後に全（・）プ（・）レ（・）ー（・）ヤ（・）ー（・）は【強制ログアウト】します≫

　え～！？