そこにいたのは

 男はただ立ち尽くしていた。


 つい先程までの記憶はなく、ただぼんやりと思い浮かんでいたのは最愛の妻と楽しく談笑していた絵面だけ。ここがどこかと見渡すと目の前には見慣れたリビングが広がっていた。


 私は何をしていたのだろう。ふと、右手に冷たい感触があることに気づいた。瞬間、思わずそれを離してしまい、ゴトンと金物が落ちた音がする。


 そしてそのすぐそばには、見覚えのある愛しい人と自分の形をした二つの人型が倒れていた。

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