第4話 三度目の正直
次の日は最後の帰り
おばあちゃんが色々と
「玉男、お前のワイシャツを取りに行ってくれんね?」
いつもとは別のクリーニング屋の場所を説明する。父さんはおばあちゃんの説明に従って、クリーニング屋を探した。
ブルーの
「お待ちください。すぐ行きま〜す!」
声が店の奥から聞こえてくる。
しばらくして出てきた女性が、あの
「あらっ」
「
「こちらこそ」
「また
「そうね、私も……」
父さんは少し
「いやあ、トイレから出て、席に戻ったら、もういなかったんで……」
「友達が急に、他の店で飲もうって言い出して……」
「合コンの方はどうでした?」
「やっぱり、ダメでした。最後までしっくり来なくて。そちらは?」
「僕の方も無理でした」
頭を横に振る。
「ほんとに合コンは難しいですね」
はにかんで答えた。
「そうですね、思ったようには行きませんね」
父さんは頭を指で
「何かご用事ですか?」
「そうそう、これです」
ポケットからチケットを取り出す。
「白のワイシャツ、お頼みしてました」
「今から探すので、ちょっと待ってくださいね」
チケットを父さんの手から取って、たたんでいるワイシャツを探し始める。
「あっ、これですね」
ワイシャツを見つけて、父さんに手渡した。
「これです。ありがとうございます」
話を続けたいが、父さんは何を言っていいのかわからず、時間だけが過ぎていく。
「じゃあ、また」
父さんはその場を離れたくなかったが、最後にゆっくりと店のドアを開けて出た。
母さんがどこに住んでいるのかはわかったが、次回また
二人の現実を見つめ直すように、父さんは青空を見上げた。
カウンターの後ろには
「いらっしゃいませ」
父さんを迎える。
父さんは狐につままれたような顔をして黙っている。
「どうかなさいました?」
おばさんは
「いやあ、ここクリーニング屋ですよね?」
「はい、そうですけど」
「あの〜、さっき若い女の人がいたんですけど」
「まあ、失礼! じゃあ、私は若くないって言いたいの?」
と言いたさそうに
「今、
「あっ、そうですか?」
胸を撫で下ろす。
どうおばさんに説明しようかと、考えている父さんに……
「何かワイシャツに問題ありました?」
おばさんは不安な顔をして聞いてきた。
「いやあ、別に……」
持っていた白いワイシャツを、体の後ろに隠した。
「ただちょっと、娘さんに質問がありまして……」
言葉が、どうにかこうにか出てきた。
「何かありました?」
「いやあ、大したことじゃないんですが、ちょっと」
下を向く。
「はるこ〜、お客さんだよ!」
振り返って、大きな声で奥に叫んだ。
「なあに?」
奥から
「ああ、さっきの方」
その笑顔に
「あのう、今晩一緒にディナー食べませんか?
僕、明日東京に帰らないといけないので……」
勇気を振り
「えっ、今晩ですか?」
「はい、今晩」
「わたし、大阪に新幹線で戻んないといけないんです。
明日から仕事で……」
言いにくそうに答える。
「あっ、そうですか」
がっかりした声が口から漏れた。
次に父さんの口から思ってもない言葉が
「じゃあ、見送りさせてください。
深く頭を下げる。
父さんの言葉を聞いた母さんは、「プッ」と吹き出してしまった。
「何時の新幹線ですか?」
強引に尋ねる。
「七時半ののぞみです」
「じゃあ、六時半にここに来ますから」
母さんの返事を聞く前に、父さんは店を出て戸を閉めた。
二人の
「あの人、
春子ちゃん、変な男に引っ掛けられないでね」
「じゃあ、帰り
母さんは
三度目の奇跡で、父さんはやっと自分の人生を変えるためにアクションを起こした。
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