モテたい少年は今日も頑張る〜何も努力もしてない奴がモテてたまるか!

青の空

第1話モテたい少年は今日も頑張る

俺の名前は坂口龍馬さかぐちりょうま。バリバリの高校一年生だ。

そんな多感な年頃の子供達を皆は思春期と呼ぶ。

小学生の時は下ネタで喜び、中学生の時は謎の力が目覚めてしまった。

まぁ、ただの厨二病なのだが…。

そして、高校生になった今俺はある思いを持ち始めた。

それは…


『異性に尚且つ美少女にモテたい!』


だ。

俺はこの人生における命題と言っても過言ではないこの思いを叶える為に色々努力した。

まずは、モテるとは何かを調べるためにラノベというジャンルから読み始めた。

いくつか実践出来ることを見つけやってみたので聞いて欲しい。

まずは…『美少女を助けた』うん。まぁ、これは分かる。

プランはこうだ。


適当に街をぶらつく→ヤンキー居る→美少女絡まれる→俺助ける→惚れられる→モテる!


俺は早速行動した。

来る日も来る日も街をぶらついてみたが…いかんせん、日本は平和すぎる。

ちょっとアウトサイドな所に行っても男しかいない。

暗い夜道を歩いても街は整備され電灯が所々にありそんなに暗い場所はないし、今は女性一人でも歩きやすい街づくりが進められてる。

そして、定期的にパトカーが見回りをしているため防犯はバッチリだ!

ありがとうお巡りさん!今日も日本は平和です。


「くそっ!次だ!」


俺が次に注目したのが、料理をしてお隣さんと仲良くなりそこからモテるパターンだ。


「そうと決まれば実践だ!」


俺は学生には貴重な休日をフルに使い料理を学び始めた。

初めは包丁で手を切ったり黒焦げの謎物体を量産したり、偶に爆発もしたりした。

だが、俺は挫けなかった!

そして今では両親にも友達にも認められるほどの腕前を手に入れた。

しかし…俺は忘れていた。

そう…


「そういえばお隣さんっておばぁちゃんじゃん!」


そう、齢80歳のおばぁちゃんなのだ。

これでは恋愛のレの字もラブコメのラの字も出てこないではないか!

誰が喜ぶ!年の差が6回り以上ある大人過ぎる恋愛を!


「クソが!次だ!次!」


俺は諦めない!

そう誓い次に俺が注目したのが…

突然幼なじみの美少女が転校してくるっと言うものだ。


「いや、幼なじみなんて男しか居ねぇよ!」


ダメだ!BL展開は1部の人間にしか受け付けられない禁忌の手段だ!

『ヤらないか…?』とかイケボで言われても顔面にメガトンパンチ喰らわせれる自信があるぞ!

しかも、幼なじみが美少女とか…なに?前世聖徳太子とかなの?ガンジーっちゃってるの?


「やはり一筋縄ではいかないな…」


そして、俺は見つけた。

これなら行けるだろうという物が…!


「ふふふ、やはりこの世の心理は強者。圧倒的強者なのだ!」


そう、主人公が最強パターンだ。

やはり男とは拳でなんとかする生き物なのだ!

そう思い俺はひたすら鍛えた。

まずは、近くの田中さんが経営してる柔道教室に通い俺は師範代の田中さんを倒せるレベルまで上がった。

だが、これだけではまだ最強とは言えないだろう…。そう思い俺は思いつく限りの武術を修めた。

ひたすらに自分の身体を鍛えぬき、背中に鬼が浮き出るくらいは筋肉は着いた。

そして、大会に出場し優勝までした。

しかし、ここで忘れては行けないのが『実は最強』という能ある鷹は爪を隠す作戦を俺は実行した。

それもそうだろう、俺実は〜とか自分で言っちゃってたらただの痛い奴だ。

そんなものは中学生の時に充分やったのでどうなるかは分かっている。

メディアの取材や雑誌掲載の話も断り俺はひたすらに隠した。

だが、ある時気づいた。


「あれ?こんなに隠しててもイベント事無いと無駄じゃね?」


俺は失念していた。

最初に分かってたはずのに…この日本は平和だと。

しかもだ、ちょっと考えて見てほしい。

自分のクラスにゴリゴリの武闘派ガチ勢みたいな奴が居たら皆どう思うだろうか…?

最近白い目で見られるなぁ…って思ってはいたがあれは完全に引いてる目だ。

しかも、そんなやつが『俺は武術とかなんにもしてないよ?』って言っても信じて貰えないだろう。むしろ、そう言ってしまったらただのアホだ。


「まだまだぁ!ネバーギブアップ!」


そうして俺は鍛えるのを辞め次の作戦に出た。

そう…


「ミステリアスな男を目指すか!」


そう、元来女性とは少し危険なミステリアスな男に惹かれると本で読んだ気がする。


「ふっふっふ…これなら簡単だな!」


我勝利を得たり!

とりあえず、夕日が指す教室で1人窓から外を見上げ…


「今日は風が騒がしいな…」


とか…


「おっと…聞こえないかい?地球の声が…」


とか、言ってみた。

しかし、モテない!むしろ生暖かい目で見られる始末だ。

そして友達の中村君に言われた。

『お前まだ厨二病なのかよ!ぶはは!』

と、俺は1発殴ったあと冷静に考えてみた。


「あ…これ。ひとつ間違えればただの痛い奴奴だ」


路線変更。俺は何もしていない。少し休憩していただけだ。


そして、俺が次に注目したのが…


「何も…しないだと…?」


そう、ネットのラノベ小説では何もしてないのに美少女の方から近寄ってくると言うものが多く見受けられた。

『隣の席の美少女が〜』とか『学校一の美少女が〜』とか『美少女生徒会長が〜』とかとか。

何もしないことこそがモテるための心理らしい…


「まさか、俺が今までやってきたことは全て無駄だったのか…?」


俺は深く絶望した。

そうだよな…結局は柔よく剛を制す。

力を抜き自然に任せることこそが俺には必要だったのだ。


「我天啓を受けたり!明日から何もしないぞー!」


その日から俺は好きに生きた。

そう、自然に任せれば俺は美少女にモテるからだ。

そして、高校2年生になる時に俺は気づいた。


「あれ?そしたら、今までと変わんなくね?」


俺はとりあえず壁に頭を打ち付けた。


「くそっ!くそっ!俺は何をしていたんだ!そんなのはただの日常だぞ!ふざけんな!何もしないでモテてたら苦労しねぇよ!クソがー!!!」


しばらく頭を打ち付けた後に俺はこう呟いた。


「あぁ…モテたい。出来れば美少女に…」





これはある思春期特有の衝動に取り憑かれた少年の物語。

彼がモテる日は来るのか…それは誰にも分からない。

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