深き穴のそのまた底に潜む土竜の話

 深い深い穴の底、そのまた奥へモグラは巣をつくって住んでおりました。ミミズさえいない深い深い地面の底で、地熱の力で生きておりました。ざっと三百年ほど。

 モグラの母親も父親も普通のモグラでしたから、モグラも自分は普通のモグラだと思っていました。

 ある日、一人の騎士が穴の底まで下りてきて宣いました。地震を起こす悪しき地龍を退治すると。

 モグラは言いました。

「三つ、間違っているよ。まず地震は勝手に起こるものだ。僕のせいじゃない」

 黙れと騎士は叫んで切りかかります。

「二つ目。僕はただのモグラだ。龍ではない」

 嘘をつけと騎士は叫んで切りかかります。

「三つ目。キミが切りかかってるのは僕の尻尾だよ」

 岩盤のごとく頑丈でマグマのように赤熱した外殻に包まれた、大きな大きなモグラが姿を現すと、騎士は恐怖のあまり死んでしまいました。


《制限時間15分、お題:遠いモグラ》

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