2-15

 フランスのばあちゃんちに帰ってきた。

「桂吾、お帰り!」

ばあちゃんが出迎えてくれた。

「ただいま!母さんいる?」

「マリアは、仕事でウィーンに行ってるわ。

でも、来週には帰ってくるわよ。

桂吾が半年もロンドンに行ってると思わなかったから、心配してたよ」

「母さんが?」

うん、うんと頷きながら、

「マリアは、あんな感じだけど、桂吾のことを心から愛してるのよ。

そうゆうの面に出さないんだけどね。

クールビューティーを気取ってるから。アハハ。言いたいこと言わないで、強がってるとこは、桂吾!マリアに似ちゃったのね!」


母さんが戻ってくるまでの間、ハリスがいた時みたいに、朝散策をして、バイオリンの練習をしたり、ギターの練習をしたりした。

ばあちゃんの作ってくれる食事は、温かくて、優しい味だ。


ウィーンから、母さんが戻ってきた。

「桂吾!ロンドン長過ぎよ!何かの犯罪に巻き込まれてんじゃないかって心配したわよ!」

帰ってくるなりの、大声!

「アハハハハ!なんの犯罪だよ!ジョージのところにいたんだから、全然大丈夫だったよ!」

「あの人が一番危険人物じゃない!」

「アハハハハ!まぁな!ハリスの元カレだって、知ってた?」

「えっ?えーーっ!嘘でしょ!!どうゆう趣味してんのよハリス!」

「な!俺もウケたわ!ハハハ。」


母さんと、こんな会話ができる日がくるなんて、思ってなかった。

わざわい転じて福と成す、か……

彼女と別れて、ってまず付き合ってね~けど。

会えなくなって、心に蓋をして感情を無くして毎日を過ごしてた。


悠弥に全部すっぽかして泣いてろ!って言われて、初めて泣いた。

大輝の面談から逃げるように、ばあちゃんちへ来た。

母さんと、ハリスにバイオリンを教えてもらって、プロのギタリストのジョージにギターを教えてもらって、ライヴまで参加させてもらって、

なんて素晴らしい経験をさせてもらってるんだろ。

彼女のお陰で、俺は成長できたんじゃないか?


「母さん、いつまでここにいる?」

「2週間。そしたら、アメリカへ行くわ!」

「そっか。じゃ、ピアノを教えて欲しいんだけど」

「いいけど、2週間でいいの?私じゃなくて、誰か先生頼んだ方が良ければ、そうするし」

「母さんに教えてもらいたいんだ!」

「そっ!じゃ、早速ピアノ弾く準備して!」

「アハハ。今すぐかよ!ハハハ」


ありがとう

彼女に感謝したい。

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