七夕の味

「今日の夜お前ん家行くから」


 と、ぶっきらぼうに言われたのは昼休みのこと。

 大好きな唐揚げを大きく頬張っている時に突然言われたもんだから、思わず喉に詰まらせるところだった。


「っ、分かった」


 何がなんだから分からないままひとまず返事をしたけど、飲み込んだ唐揚げの味は忘れてしまった。





 夜になって『着いた』とぶっきらぼうな連絡。何の呼び出しかとドアを開けると夜の空には大きな川ができていた。


「急に悪い。俺、お前のこと好きだから、願い、叶えてよ」


 今日、七夕かあ、なんて思いながら、お昼に食べたお弁当の唐揚げの味を思い出していた。

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