第2話 こいつも鬱か…

 2019年07月18日


 日本語教育能力検定試験対策コースを受講後、梅田のアイリッシュ・パブに飲みに行った。外国人ばかりだったのだが、あまり背が高くなく細身の体で、顔が青ざめた日本人のサラリーマンが入ってきた。最初、私の席から離れていたところに座っていたのだが、気がつくと横に座っていた。


「お、こんばんは」


 と、私が、確か声をかけたと思う。そして、話をしているうちに、同じ大学の工学部の後輩だと分かった。


「これって奇跡ですよね!」


………まあ、奇跡ってか、ただ単に大学が一緒だっただけだが。


「しかし、良くこんな外国人ばかりのバーに入ってこられたね」


「ネットで探してて、一度来ようと思っていたんですよ。俺実は今仕事で悩んでて鬱なんですよ」


………こいつも鬱か。


「仕事の何を悩んでんねん?」と、聞くと、自分のしたい仕事ができないのだと言う。そして、転職したいのだが、そうしたら、年収が今より確か100万円ほど下がるのだとも言う。それで、私が「家のローンが大変なんやろ?」と聞くと、


「いや、もう、完済してるんですよ」


「子供さんは?」


「娘が二人います」


「年収は?」


「850万円です」


………悩むことないと思うけど。


「まあ、あんまり思いつめるなよ」


「わかりました。このバーには時々来ますので、また、お会出来たらと思います」


 そんな夜だった。私は、グデングデンに酔っ払った。実は、私は大阪に50年住んでいて、バーはこのバーしか知らないのだ。酒代がリーゾナブルだし、多人種で、アメリカみたいなので気に入っている。と、ライブ参戦の話とは、無関係な話が滑り込んでしまった。すいません。

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