第42話『オモヒカネとアメノホヒノミコト』
誤訳怪訳日本の神話・42
『オモヒカネとアメノホヒノミコト』
八意思兼神(ヤゴコロオモヒカネ)、略してオモヒカネという神さまが登場します。
スサノオが大暴れして高天原をメチャクチャにして、頭に来たアマテラスが天岩戸に隠れた話をしました。
高天原の八百万の神さまたちは困り果てて、天安河原(あめのやすかわら)に集まって会議をしました。困った時には、みんなで集まって会議をする(大勢の時もありますし、主要メンバーだけの時もあります)のが、日本の神話から現代に至るまでの特徴だと申し上げました。
その天河河原で議長になって話をまとめたのがオモヒカネなのです。
自分を騙して岩戸から引っ張り出した張本人なのですが、逆に、そのことでアマテラスはオモヒカネを信頼して、相談役にしておりました。
まあ、アマテラス自身、岩戸に隠れてみんなを困らせたのは更年期のヒステリー……思っていても、口にしませんし、指摘する不躾な神さまもいません。
オモヒカネを重く用いることで、そういう反省や気持ちを現していたのかもしれません。。
余談になりますが、日本神話や日本の歴史においては、人を糾弾するということが、あまりありません。
世界史はズボラな勉強しかしませんでしたので証拠を挙げろと言われると困るのですが、外国では、糾弾が行き過ぎて魔女裁判的なことが、たびたび行われます。
中世や独立前後のアメリカの魔女裁判は、文字通りそうですし。中世の異端審問(ガリレオがやられました「それでも地球は回っている」の呟きが有名ですね)。フランス革命のジャコバン派などの恐怖政治、ロシア革命、中国の文化大革命、東京裁判などがそうですね。日本人は戦犯として3000人あまりが処刑されましたが、アメリカ人など連合軍側で戦犯に問われた者は、わたしの記憶の中にはありません。
その、オモヒカネにアマテラスは聞きます。
「ねえ、オシホミミが逃げちゃったんだけど、他に適任者はいないかしら?」
「そうですね……それでは、第二皇子の天之菩卑能命(アメノホヒノミコト)をおつかわしになってはいかがでしょう?」
「そうね……血筋から言ったら、あの子になるかなあ……」
ということで、アメノホヒが呼び出され豊芦原之千秋長五百秋之瑞穂国(とよあしはらのちあきのながいおあきのみずほのくに)……長ったらしいので、これからは地上と書きます(^_^;)。
「はい、兄に成り代わって、このアメノホヒが地上を治めます!」
あたかも大河ドラマの主人公のようなカッコよさで引き受けて地上に向かいます。
しかし、ミテクレはかっこよくとも、政治的な手腕というものは別物です。
アメノホヒがとった政治は、徹底した融和主義とでもいうようなもので、何かにつけてオオクニヌシに相談して政治を行います。
まるで、源氏の血筋が途絶えた後の鎌倉幕府の将軍です。摂関家や皇子から選ばれた将軍にはなにも決定権がない飾り物でした。
融和主義というのは、無責任と紙一重なところがあります。
なんの見通しもなく、ただ優しくすれば道が開けるだろうという、よく言っても楽観主義に陥ることがあります。
幣原喜重郎という、大阪出身の唯一の総理大臣がいました。
戦前は外務大臣で、大陸に対しては徹底した融和主義をとって、結果的に事態を混乱させ、現地の日本人が多く犠牲になることを防げませんでした。ワシントン軍縮会議では代表になって渡米、当時のタイム誌の表紙を飾ったこともあります。レジ袋を有料化した某長官同様、いわば人気者でした。
戦後、軍部から遠く、任期もあって、融和主義であったということで戦後二代目の総理大臣になりますが、半年余りの任期では「平和主義」を看板にしただけで、なにもできずに吉田茂にバトンタッチしました。
二十代の終わりころ、所用で門真市役所に行った時に『幣原喜重郎コーナー』を発見しました。各種受付が並んだ片隅に、学校の購買部ほどのショーケースがあって、レジカゴに三杯分くらいの写真や手紙などの資料が並んでいるだけでした。
2018年に生誕150年のプロジェクトが企画されたようですが、ざっと見たところ、ちょっと寂しいものを感じました。
脱線しましたが、アメノホヒは、その子の代でオオクニヌシの家来になってしまいました(^_^;)。
アマテラスは、第三の使いを地上に送ることになりますが、今度は、自分の血筋ではない神を送ることになります。
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