第10話『イザナギの三神・ツクヨミ』
誤訳怪訳日本の神話・10
『イザナギの三神・ツクヨミ』
ギリシア神話における月の神はアルテミスです。
ゼウスの娘で、アポロンの双子の妹ということになっています。
ギリシア神話に出てくる女神は、たいがい豊満なガッチリ美女。ミロのヴィーナスを思い浮かべればイメージできると思います。
その豊満グラマラスな美女群の中で、アルテミス一人だけが、華奢でペチャパイの女の子なのであります。
狩の神さまでもあるアルテミスは、ノースリーブのミニワンピで背中に矢筒を背負っています。サンダル履きで、髪はベリーショート、 とうぜん性格も、ティーンの女の子そのもの。敏捷な気分屋で、ツンデレの元祖。ジブリの『もののけ姫』に似ていると言えばイメージしていただけるでしょうか。
こんなエピソードがあります。
ある日、池で水浴びをしているところをリア充の若者に見られてしまいます。若者は「なんて、キュートで可愛いんだ!」と惚れてくれるのですが、反応はトンガっています。
「この覗きのリア充めええええええええええ!!!」
一瞬で、若者を石に変えてしまいます。
なかなか魅力的で、ゲームやカードなどに頻繁に出てきますので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
これに引き換え、イザナギの三人姉弟の真ん中である月讀命(つくよみのみこと)は、実に影の薄い存在であります。
どれだけ薄いかと言いますと、父のイザナギから「夜の国を治めなさい」と言われた後、それっきり現れてこないのです。
日本書紀で、ほんの一度だけ保食神(うけもちかみ)という穀物の神さまを殺したという記述があるだけで、古事記には出てきません。
日本書紀よりも古い古事記に出てこないのですから、元々は無かったと考えてもいいのかもしれません。
では、なぜツクヨミは出てくるのか?
3という数字がキーワードかと思います。
イザナギのマジックフライトでも述べましたが、三段階や3という数字は安定するということで、後付けされたのではないかと思います。
もう一つは、中国から伝わった陰陽思想……思想というと大げさなのですが、記紀神話が成立した8世紀初頭では、陰陽で表現することがクールだと思われていたのではないでしょうか?
日本人と言うのは、こういう点にとても柔軟、フレキシブルです。カッコいいと思えばなんでもありなのです。
イザナギの三神について語りたかったのですが、とりあえずツクヨミでありました。
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