第3話 ゴウは、学習計画を立てた③ 貸金業法の目的と用語
「第1章は、貸金業法の目的と用語の話か……」
ゴウは、テキストの第1章の内容を確認する。
冒頭は、貸金業法の目的について記述されていた。
「条文、長っ!」
ちなみに、貸金業法の目的は貸金業法第1条に規定されている。
『【第1条】 この法律は、貸金業が我が国の経済社会において果たす役割にかんがみ、貸金業を営む者について登録制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うとともに、貸金業者の組織する団体を認可する制度を設け、その適正な活動を促進するほか、指定信用情報機関の制度を設けることにより、貸金業を営む者の業務の適正な運営の確保及び資金需要者等の利益の保護を図るとともに、国民経済の適切な運営に資することを目的とする。』
確かに長い……。
最近制定される法律に共通する傾向だが、とにかく文章が長い。
プロが「解釈」という作業をしなければ扱えない条文では困るということで、国民にも解るように多くの語句を盛り込んでいるのかもしれない。
しかし、逆に伝わらない。
法律学者のなかには、こうした条文に皮肉を込めて「霞ヶ関文学」と呼ぶ者もいるくらいだ。
とりあえず、最後の部分「資金需要者等の利益の保護を図るとともに、国民経済の適切な運営に資すること」あたりがポイントだろう。
キーワード化すれば、
①資金需要者の利益の保護
②国民経済の適切な運営
が、この法律の目的ということになる。
「つぎ、いってみよー」
つぎの内容は、貸金業法における用語の定義についてだった。
「………」
ゴウは絶句した。
顧客等、債務者等、資金需要者等、個人顧客等、貸付の契約……。
このうち「債務者等」は、なんとかイメージできた。
この用語の定義は、貸金業法2条5項に規定されている。
『第2条5項 この法律において「債務者等」とは、債務者又は保証人をいう。』
(債務者はお金を借りた人、保証人は借金した人がトンだときに代わりに借金を返済する人だよな……)
詳しい話は、とりあえず置いておく。
いまは、ゴウが持っているイメージでよい。
「顧客等、債務者等、資金需要者等、個人顧客等の違いがよくわからねぇ! みんな借金した人のことじゃねぇの!?」
これらの用語の使い分け、ちがいも後にお話しすることにしたい。
あくまでも「学習計画」を立てることが目的である。
断じて、これらの用語を記憶することではない。
しかし、いまゴウは自分を見失いつつあった。
「『貸付けの契約』とは、貸付けに係る契約または当該契約に係る保証契約……、ああ?」
ゴウの苦悩を、お解りいただけるだろうか?
まず、「貸付けの契約」と「貸付けに係る契約」は、よく似た言葉だが、ぴったりイコールの言葉ではない。
貸付けの契約 ≧ 貸付けに係る契約
というイメージである。
問題は、その後の「当該契約に係る保証契約」だ。
ここで「当該契約」とは、「貸付けに係る契約」をさす。
つまり「当該契約に係る保証契約」とは、正確にいえば、
「貸付けに係る契約に係る保証契約」
……もはや、一体、なにに「係る」のか判らなくなるようなトンデモ用語になるのだ。
まとめると、
貸付けの契約=貸付けに係る契約+貸付けに係る契約に係る保証契約
ということになる。
そして「貸付けの契約」と「貸付けに係る契約」をしっかり区別して覚えていないと、勉強しているうちに大変なことになる。
「貸付けの契約」に適用される条文と「貸付けに係る契約」にだけ適用される条文があるということを意味するからだ。
いいかえれば、「貸付けに係る契約に係る保証契約」には適用されない条文があるということだ。
たとえば、貸金業者は顧客等と「貸付けに係る契約」を締結しようとする場合、その顧客から資力を明らかにする書面を徴求しなければならない場面がある(貸金業法13条)。
よく見ると判るように「貸付けに係る契約」であって「貸付けの契約」ではない。
したがって、このルールは「貸付けに係る契約に係る保証契約」に適用されないのだ。
「うぅ、いまは、こんなところでハマっている場合じゃねー」
危ないところだった。
こんな入り口のところで、遭難するところだった。
いつ派遣されるか分からない捜索隊を待たねばならないところだった。
こういう切り替えの早さはゴウの短所といえる場合もあるが、いまは長所と言えるだろう。
ゴウは、第2章の内容を確認し始めた。
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