第53話怪我
荒鐘宅
時間も夜遅く時計の針は11時を示していた。
兄が今までにないくらい帰宅が遅い事で妹の響は心配なのか眠れずにいた。
(お兄ちゃん幾ら学校に平日から好きなだけ潜る許可貰ったからって………大丈夫かな)
言いようのない不安が響を襲う。
何か事情を知っているであろうアスマの名前を呼ぶ
「アスマさん」
「……ここに」
響の影からアスマがにょきりと飛び出し跪く。
デルガがアスマを
名前を呼べばいつでもどこでもやってくるようになったのだ。
「今お兄ちゃんはどこにいるの?死んでない……よね?」
「……デルガ様から先ほど連絡が入りまして「もう少しで戻る」との事でした。そこまで心配は要らないかと」
「本当?」
「はい」
数分沈黙が空間を支配する
すると突然
バチバチバチィ‼︎
「え?!今?!」
「………!」
2人が驚いていると中から普段とは違う血相のデルガが現れた。
その背中には額が切れたのが血で真っ赤になった真が背負われていた。
そのすぐ後ろにアグリードもいる。
「お兄ちゃん!!」
「響様ベットに寝かせます!」
真の部屋に連れて行き寝かせるとデルガは布を取り出し血を拭き取る。
そして血が滲んでいる服を流すと傷を確認する。
「……思ったより複雑に引き裂かれたようです」
デルガが傷痕に優しく手を当て魔力を浸透させ更に詳しく傷を確認する。
「少し時間がかかりそうです」
魔力を浸透させた事によって理解できた傷の状況を1つずつ治療していく。
そのデルガの様子を見て響は何があったのかをアグリードに尋ねる。
「お兄ちゃんに何があったの?理由を聞かせて」
声は荒げていないが響は人生で1番怒っている。
冷静なのが怖いくらいに怒っている。
「……私達の生まれ故郷である魔界で来るべき日の為にモンスターを狩りレベルアップを図っていました。最初は誰にも邪魔される事はありませんでしたが突如私達から遥かに離れた所から魔法で主様が襲われてしまったのです」
当時の状況を思い出して悔いているのか右手が左腕の二の腕に深く食い込んでいる。
「最初の一撃は頭でしたが魔力で体を覆っていたお陰で致命傷にはなりませんでした。衝撃で気絶した主様を何度か追撃が襲いました」
「どこかからか敵勢力に私達の主だとバレたのでしょうか」
「姉上」
「デルガさん」
「響……様」
真の治療が終わったデルガは響と向かい合うと頭を床につくほどに下げる。
それに伴いアグリードも頭を下げた。
デルガは頭を下げたまま口を開く。
「今回は私共の不注意により響様のお兄様である真様を危険に晒してしまい申し訳ありませんでしたっ!」
声が掠れながら謝罪を口にした。
「主様を守る存在が2人もいながらこの失態。いかような罰を受け入れます」
「ちょっと、何がなんだが……」
頭を上げず更に言葉を重ねる
「今回の失態は主様にモンスターを狩れと言われ側を離れた事により起きたことです。主様に非は無くただひたすらに私達の不注意により起きた事です」
「2人とも取り敢えず頭上げて?流石に気まずいよ」
「「しかし……」」
2人が響の頭を上げろという願いに戸惑い言葉が出てこなくなる。
そんな時ベットから呻き声が聞こえる。
「デルガ頭を上げてくれ」
「主様に合わせる顔がありません……」
「デルガ、アグリード。
強く、そして初めて自分に付き従う2人に命令を下すと渋々頭を上げた。
そして真が寝ているベットを向くと起き上がっていた。
「主様!いきなり起きられては!」
「怪我は治ってるようだから別にいいんだよ。そんな事よりだけど俺に魔力の弾丸飛ばしてきた奴に心当たりある?」
「心当たりはありません」
「そっか」
ベットから降りて柔軟をする。
「怪我はしたけどレベルは一夜とは思えないほど上がったから大収穫じゃない?」
真が笑いながら話すと響が反応する
「お兄ちゃんあんな怪我するくらいレベリングをしていたんだよね?どれくらい上がったの?」
その言葉を待っていたかのようにニヤリと笑うと胸を張り堂々と答える。
「15。これで悪魔族の下級貴族の最底辺にはなった。それに伴い悪魔族の2人と契約してる俺専用のスキルが手に入ったのよ」
謎にキャラが崩れる自分の兄に困惑しながら話を聞く。
「それは秘密なのよぉ〜!!やだぁもう!」
「そのキャラがやだぁ……」
「やめます」
場を和ませるためにやったオネェキャラが響に拒否され真は即座にやめる
「取り敢えず怪我については問題ないから心配はしなくていい。怪我はデルガやアグリードに治療して貰えればいいからな!念のために自分でも回復魔法を極めておくよ」
アイテムボックスを開くとその中から無骨なチェーンネックレスと指輪を取り出すと響を手わたす。
「これ……」
「流石に夜遅くまでダンジョン潜って心配かけたし更に怪我で心配かけたからそのお詫びかな?ネックレスは貯めた魔力を消費するとノータイムて魔力防壁が張れる優れ物。
指輪は1つだけだけど魔法が使える。これはレベルがどれだけ高くても威力は一定だ。
同じく貯めた魔力を消費する」
「お兄ちゃんありがとう!!こんな凄いプレゼント嬉しいよ!!」
「プレゼントっていうかお詫びの品なんだけどな?」
「プレゼントだよ!!」
「まぁいいか。アスマ魔力を代わりに込めてやれ。響は魔力無いから」
「……分かりました」
小僧に命令されるなど!!と言った表情を押さえ込みなんとかアスマは返事をした。
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