第4話
「お湯の温度はこれ位で良いでしょうか?」
浴槽に溜まった水に熱魔法をかけて温かいお湯に変えます。
お母様の魔力を受け継いでいなかったら水のお風呂に入らないといけなかったので、お母様を口説き落としたお父様に感謝です。
何せ《武神》は【肉体強化】の魔法以外碌に使えませんから。
要するに脳筋なのです。
よくそれで国を護ってこれたものだと思いますが歴代の聖女の方が優秀だったのでしょうね。
結界が強ければ戦う相手も少なくてすみますから。
少なくとも私の様に365日朝日が昇るまで出勤はしなくてすんだのでしょう。
365日×13年=4745日、コレが私の勤務日数です。
時間の単位に直したらもっと凄い数字になりますね。
これで給料が出ないとか
いくら裏で王家と同等の権力を持とうとも私には何も返還されませんから。
せめてぐっすり寝る時間と食事を取る時間とお風呂にゆっくり入る時間が切実に欲しかったものです。
まぁ愚痴は止めましょう。
今の私は体がギシギシするまで寝れますしゆっくりまともな食事を取れます。
そして、ゆっくりお風呂に入る時間が取れるのです!
あぁこの温かいお湯に浸かるのはどれ程気持ちが良いのでしょうか!?
私は着ている物を脱ぎ捨てそっと足先を湯に浸けます。
ジーン、と温もりが伝わってきます。
こ、これは想像以上に気持ちが良いのでは!?
ゆっくり体を沈めていき肩まで湯に浸かります。
あぁぁ、疲れた身体にお湯の温もりが伝わります。
き、気持ちイイ!!!
お湯に体を浸からせるだけでこんなに気持ちが良いなんて!
世の方々はこれを毎日味わっていたのですね。
何と羨ましいことでしょうか。
あ~気の抜けた声が出ますわ。
お湯の中に浸かると体がふわふわします。
噂には聞いていましたが本当に水に入ると体は浮くものなのですね。
わざとポンポンと体を弾ませるとふわふわと体が湯の中で踊ります。
これは楽しいですわ!
こんな幸せな時間があるなんて夢のようです。
まさか本当に夢じゃありませんよね?
起きたら戦闘中の仮眠だったなんて事があれば今の私なら怒りで王都の神殿に向けて極大魔法を放つ自信があります。
えぇぐっすり寝ている聖女抹殺と言う奴です。
神殿の信者の方には少し罪悪感が無きにしも非ずですがあの聖女を護って私の睡眠時間を奪っていたのですから天罰と思って無くなってもらいましょう。
そう思えるくらいに今の私は幸せを享受しているのです。
幽閉生活最高ですわ!
ふ~少し湯に浸かり過ぎました。
体がポカポカのふにゃふにゃです。
人間の体は湯に浸かり過ぎると皮膚がふにゃふにゃになるのですね。
新しい発見です。
そんな誰もが知っている下らないことを発見するのでさえ今の私には楽しくて仕方ありません。
何時までも裸のままでははしたないのでネグリジェを着ます。
お母様がバッグに私の愛用のネグリジェを入れてくれておりました。
洗い替えの分も入れてくれていたので本当に感謝です。
有難うございますお母様。
それにしても喉が渇きました。
湯に浸かるだけで喉が渇くのですね。
不思議ですわ水に浸かって水が欲しくなるなんて。
テーブルに置かれた水差しからコップに水を入れて熱魔法で冷やします。
温かいの体は冷たい水を欲しているからです。
キンキンに水を冷やして1口。
美味しい!
そのままはしたなくもゴクゴクと水を一気に飲み干します。
ただの水がこんなに美味しいなんて!!
今日は幸せ尽くしで本当に罰が当たらないか心配に成程に幸せです。
さてどうしましょうか?
3日間も寝ていたのであまり眠くありません。
もう1度言います。
”あまり眠くありません”!!
眠気が無い。
こんな事が私の体に起こるなんて!?
何時でも眠かったのに眠くないんです。
何なら《武神》のお勤め中でも弱い敵相手なら半分寝てた私が眠くないんです!
時間が余るなんて初めてです。
お母様がバッグに入れといて下さった本でも読みましょうか?
お昼間呼んだお伽噺の続きを読むのも良いですわね。
子供向けの本ですが碌に本を読んだことない私には新鮮でたまりません。
あ、ちゃんと字も読めるし書くことも出来ますよ?
別に戦ってばかりいて脳筋になっている訳ではありませんから。
何故なら毎日、未来の皇妃の勤めが果たせるようにとお昼間に家庭教師が来るからです。
お陰で私の学力もマナーも一級品ですわ。
そんな時間があるなら少しでも寝たかったんですけど。
それもこれもコンジュ様が私を妃にするなどのたまったせいなのです。
本当、私を過労死させたいんですかね!!
《武神》の中でもこれ程ハードスケジュールだったのは歴代でも私だけでしょうね。
婚約破棄万歳です。
でも私が幽閉されて今日で4日目になるのですよね?
あの機能しているかしていないかも分からないような結界で国は護れているのでしょうか?
クレーンカ一族は国を出ますし兵士が頑張ってくれてるのでしょうか?
お勤めご苦労様です。
私の苦労を今後永久的に思い知って下さいませ。
さて私は睡魔が来るまでお伽噺を読もうと思います。
不幸な姫が素敵な皇子様に見初められる話が多いですね。
本当に私の王子様も素敵な方だったら良かったのですけどねぇ…。
まぁ私は《姫》ではなく《武神》ですし誰も私を迎えなど来ないでしょうからこの果ての塔でスローライフを寿命が来るまで過ごす気ですが。
そんな事思っていた私に思いもよらない出会いがあるなんて、今の私には予想も付きませんでした。
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