第105話 雅な事
全体会議で兵農分離の説明と兵募集などをして、みんなに理解して作業を進める事にしたのだが………。
「麿は雅な事をしたいぞよ。ここは雅足りんのう」
なんて大内義隆が言い出した。
「はぁ………」
俺はため息をついて大内義隆を見た。
「ふむ。儂も雅は足りんと思う。一考の余地あるな」
伊達稙宗まで言い出す。
む、稙宗までそんな事を言うなんて。
「この城や城下町は遊びが無い。実用的過ぎて装飾が少ないしな」
と三好政長。
むむむ、シンプルイズベストなんだよ。余計な装飾はむしろ邪魔だろう。俺は顔を顰めた。
「そうそう。麿はもっと美しいものに囲まれたいのじゃ」
大内義隆ぁああああ!
睨んで義隆をみる俺。
「あぁ、信長様。私も実は大内義隆様達が言うのも少し分かります。ここは食器や身の回り物が、………質素なのです。適度な装飾は生活に潤いを与えますし。見て美しい物は心が癒されます。それに………」
あぁ、生駒家長までぇ………。
義兄とは言え家臣だぞぉおおお。
俺は恨めしい顔で家長を見る。
「お金になります」
「ん! 金!!!」
俺は目を見開き家長を見る。
生駒家は武家商人
「良いものを買って売るそれで莫大な富が得られます。具体的に明で買った物がこちらでは20倍で売れたと聞いています」
「ああああ、それ駄目だ。良いもの見分ける事が出来ないぞ」
「何を仰います! この国で一番の目利きが出来る審美眼の持ち主が、こちらにいらっしゃるじゃないですか」
家長が手を開いて義隆を差す。
「ん? 麿? 麿の事かのう。本物と偽物、良いものとそうでない物は見れば分かるぞよ」
「大内家のその財力は貿易によって産み出されたのです。そうですね」
家長は義隆を見る。
「うむ、麿の館には。大内塗りの漆器はもとより、朝鮮や明、オランダ、スペインの一流の品が溢れておったのじゃ」
「ふむ、その漆器は尾張でも作れるのか?」
「漆と職人が居れば可能でしょう。連れて来ますか? どうせ武断派の奴らには漆器の価値など分かりません。五右衛門様が居ればパッと転移出来るのでしょう?」
と相良武任。
「良し、五右衛門と一緒に行ってくれ」
もう良い事は即決だ。
「勘合貿易もやれば良いのじゃ。麿は貿易で良いものを手に入れたからのう」
大内義隆が気軽に言う。
勘合貿易とは明や朝鮮と『勘合』と言う割符を使い、割符を持つ者としか取引しない方式だ。
大内義隆の父義興が将軍足利
その際、「勘合」を貰い日本国王の正式な代理として日明貿易を独占し膨大な利益をあげていた。
「義隆様、勘合貿易には『勘合』が必要なのですよ」
と相良武任が諭す様に義隆に言う。
「麿は正統な大内氏の家督を継いだのじゃ。当然『勘合』を持っている決まっておろう」
義隆は懐から「勘合」を出した。
まるで水戸黄門が印籠を出す様に、義隆が掲げた勘合にみんな目が点になる。
「何ぃ!!! マジかぁ!」
俺は思わず大きな声を出す。
「まことの事か! 勘合があれば………」
「勘合を初めて見た」
「すげぇ!」
………。
みんなも驚きそれぞれ声を出す。
「へ! ビックリ仰天、驚き頂点、俺の親父は腸捻転!」
塙直政も驚いて叫ぶ。
明まで行ける船を作れば、儲け放題じゃねえかぁ! 水軍も至急作らなきゃならねえぞ!
大内義隆………、侮れんな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます