第46話 伊藤屋惣十郎2

「次にこの布だ」

俺は芋虫の糸で織った布を惣十郎見せた。


「な、何ですか! この生地は? シルク、いいや違う、違うのか、極上のシルクよりなめらかで肌触りが良い。そしてこの素晴らしい光沢!」

惣十郎は初めは指を滑らせ、撫でて、頬擦りして感動している。


「そして柔軟性があって丈夫ですよ。普通に洗ってもその輝き衰えず。摩擦に強く染みも出来にくい。そして水を弾きます」

俺は惣十郎に芋虫糸で織った布の特徴を説明した。


「シルクの欠点を全てカバー出来てるのですか? その上シルク以上の光沢と滑らかさを実現出来てるなんて……」

惣十郎は俺に尋ねる。


「そう、シルクと違って変色もしないよ。凄く丈夫で破れにくいし」

俺が惣十郎に答えると。


「女性の下着にしたら最高よ。もう手離せない。アタイも着てるわ」

帰蝶が続ける。


「後で見る? うふ」

俺の耳元で小声で、誰にも聞こえない様に囁いた。


ぞくっとするね。いつの間に下着を作ったんだ。直子に頼んだのか。芋虫シルクの下着姿の帰蝶を想像しちゃうよ。いかんいかん、今は商談中だ。


「売れる、売れるぞ。買う。買います! いや売ってください。独占させてくれるなら言い値で買います。是非買わせてください」

惣十郎は慌てて俺にすがり付く。


「良いよ。独占で良い。複数の商人と付き合うのは面倒だからね。値段は後で帰蝶と決めてくれ」


「ありがとうございます。今日は来て良かった。見せていただいた物はどれも素晴らしい最上の物だった。最高の商談でしたよ。幸運の1日でしたよ」

惣十郎は感動して俺の両手を握る。


「おいおい、勝手に商談を終わらせるな」


「え! まだあるのですか?」


「とっておきのヤツがね」


「最高に美味しい蜂蜜とあの素晴らしい2つに生地よりも良いもの……」

ごくり。

惣十郎唾を飲み込む。


「これだ!」

おれは、斑猫ハンミョウの前翅を出した。それは、甲虫のモンスターの翅なので、とても硬い。そして、金属光沢のある緑色にビロード状の黒紫色が混ざり、白い斑点と赤い横帯が入る複雑で美しい模様。更に果実の芳香。


「な、な、な、何ですかこれは!」

惣十郎は驚く。


「モンスターから剥ぎ取った素材だよ。このまま飾っても良いし、加工してアクセサリーにしても良い。また、服のワンポイントや宝石箱の飾りなど、応用はいくらでもあるだろう」


「あの素晴らしい布といい、この素材といい、どこで手に入れたんですかああああ?」


「おいおい、それはマナー違反だよ。教える訳無いだろう」


「あ、失礼しました。そうですよね仕入先を明かす訳無いですよね。しかし、これはいったい何のモンスターのどの部分ですか? 何処にいるのですか? 売り出すのに名前もつけられないです」


「それも今は秘密だ。名前は惣十郎さんがつけて良い。精々高値で売ってくれ」


「勿論、これは高く売れます」


「他にもモンスターの素材があるので、買い取って欲しい。今まで狩ったモンスターの素材が沢山あるし、今後も狩るので継続して提供出来る」


「おお、是非売ってください」


「じゃあ、先ほどの布とモンスターの素材の値段は帰蝶と詰めてくれ」

もう帰蝶にお任せだ。


「承知しました」

「分かったわ 、アタイに任せて!」


これで鉄砲が買えるぞ!

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