啼泣★
「まだ報告していなかったが、俺たちは昨日の探索で “いぬ” と遭遇した」
苦衷を吐露する表情で、レットが告げた。
「アッシュロード、あの迷宮のいっそうには “
眉根を寄せていたアッシュロードの表情がより厳しく、ほとんど睨み付けるようになった。
「……確かか?」
「ああ」
声を押し殺したアッシュロードに、レットが重苦しくうなずく。
「さらに悪いことに、こいつらも強化されてる。“
「……」
出現数が多く
地下四階以降に出現し、先制攻撃を受ければ
二〇年前に女王マグダラのパーティがこの “いぬ” に驚かされ、全滅一歩手前に陥った逸話は今でも語り草だ。
https://kakuyomu.jp/users/Deetwo/news/16818023211749321767
「俺たちは驚かされなかったが “滅消” が通らず、竜息を二度浴びた」
「……」
今度こそアッシュロードは押し黙った。
これでまた
本物の “
大幅に強化された “
そしてここにきて、ついに確認された“いぬ” の存在。
しかも強化までされているという。
行方不明のエバ・ライスライトたちが “いぬ” に驚かされ、あるいは強化に気づかずに “滅消” を使い、狼狽したところを竜息を浴びて全滅・
探索者なら誰だってそうする。
アッシュロードでもだ。
そしてその “滅消” の力をライスライトに与えたのは、アッシュロード自身なのだ。
原因不明の事態に陥り “
「――だからどうだっていうのさ」
へっと、ふてぶてしく肩を竦めてみせたのは、ホビットの少女だった。
エバ・ライスライトから愛らしいと評された顔が、悪童面に歪んでいる。
「関係ないね、そんなこと――なぜかって? エバがそんなイヌコロにやられるわけがないからさ!」
顔が見る見ると赤らみ、瞳には涙がたまった。
「あたいは信じないよ! あたいは信じない! あたいは
ついに
やるせない
やがてホビットの泣き声が嗚咽に変わったとき、アッシュロードが言った。
「おめえの言うとおりだ。パーシャ」
「ひっく?」
「巨人が出ようがイヌコロが出ようが、俺たちのやることは変わらん。迷宮を踏破し、すべての “K.O.D.s” を集める。それまでに奴らが帰ってくればそれでよし」
「……帰って……こなかったら?」
「女神に居所を訊くまでだ。あとは地獄の底を引っぺがしてでも迎えにいく。邪魔するなら悪魔だろうと魔王だろうと皆殺しだ」
決して声を荒げているわけではない。
だがその場にいたアッシュロード以外の全員が、凍り付いた。
殺気などという表現では生ぬるい迫力。
この男なら本当にやる。
理屈ではなく本能として、誰もが直感した。
地獄に乗り込み、魔王を斬り伏せ、あの娘を取り戻す。
この男なら――やる。
凍り付いた空気から探索者たちを救ったのは、来室を告げるノックだった。
王城からの使者は一同に登城を求めた。
「急にお呼びしてもうしわけありません」
謁見の間に現れた女王マグダラが、参集した探索者たちに告げた。
「再び迷宮の未知に挑むあなた方に、新たな力を授けましょう」
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