Bパート 6
聖剣を抜くと決意した勇者の両脇に、ルミナスロッドとギガントアックスが出現する!
それらは光の粒子をこぼしながら頭上で円を描き、光の輪を形作った!
そして、勇者が右手を掲げると同時に光の輪は中央部へ収束し、
光が収まると同時、勇者の右手に収まったのは究極の戦士にふさわしい聖剣――
「はあああ……っ!」
呼気を整えながら、勇者が飛翔するバッタの
「コオオオ……ッ!」
対する魔人王も、亡き大将軍から返却された魔剣を構え……。
両者、同時に踏み込んだ!
「――つあっ!」
「――フッ!」
常とは違い、自ら攻めに出た勇者の中段突きを、魔人王は魔剣の腹で受け流す!
「――シアッ!」
「――ふっ!」
勇者の上体が泳いだスキを逃さず放たれた横なぎの一閃は、しかし、リンボーダンスのごとく身を反らされることで回避された!
「――ぬんっ!」
「――オオッ!」
反撃に放たれた勇者の横なぎを、魔人王は素早いバックステップで回避する!
これはもはや……
――舞だ!
極めて高い領域で技量が拮抗した両者の攻防は、演舞がごとき様相を呈しているのだ!
「――むん!」
「――ハアッ!」
勇者の攻撃を、魔人王が防ぎ……。
「――シャッ!」
「――おおっ!」
魔人王の反撃を、勇者が防ぐ……。
目まぐるしい攻防は、互いに刃を当てられぬまま無限に続くかと思われたが……。
転機が、訪れた。
「――ムッ!?」
斬撃を回避し後退した魔人王が、わずかに軸足を滑らせる。
その足に踏まれたのは――果実だ!
魔人王自ら用意し振る舞った果物は、最初の
それが攻防の
魔人王レイの故郷で実る果実は、地上のそれに比べ
したがって、足を滑らせたと言ってもそれは一センチに満たぬごくわずかなものに過ぎぬ。
だが、それは必殺技を放つのに十分なスキを生み出した。
「――おおおっ!」
「――グウッ!?」
サンライトホッパー渾身の突きが、ホワイトホッパーの真芯に突き刺さる。
そのまま勇者は両手で剣を握り、これを押し込み続けた!
これこそは――
「ホッパー――――――――――」
『――――――――――フレア・ブレイク!』
勇者の全身にみなぎる、太陽そのものの力が……。
突き立てられた刃先を通じ、魔人王へと注ぎ込まれる!
それは内部から邪悪の権化を
ホワイトホッパーに注ぎ込まれた太陽の力が最高潮に達し、もはや収まりきらなくなったそれが、背中側から花火のように噴出していく……。
しかし、これで終わる魔人王ではなかった。
「……グッ!?
――ルシファーズ・ウェイブ!」
魔人王の手に握られた魔剣が、爆炎のごとく闇の魔力を吐き出し……。
その状態で、聖剣を突き立てる勇者の肩に振り下ろされた!
魔力を最高潮に高めた状態での
「ぐっ……おおお……っ!?」
いかにサンライトホッパーの防護能力が強固であろうと、これをまともに喰らったのだからたまらない。
勇者は
「グッ……ガアア……ッ!?」
対する魔人王も、一歩たりとてゆずらぬ!
勇者の肩に振り下ろした魔剣へ両手を添え……。
恐るべき
「ぬうあああ……っ!」
勇者が……。
『うおおおおおっ!』
ドラグドライバーが……。
「オオオオオッ……!」
そして、魔人王が――吠えた!
そして轟音と共に――玉座の間を満たす光が消え去った!
せめぎ合う太陽の力と闇の魔力……。
そのぶつかり合いがとうとう限界に達し、地震を巻き起こすプレートのように弾け合ったのである!
「――ぐはっ!?」
勇者が、入り口側の壁に叩きつけられ……。
「ぐう……あ……っ!?」
その腰から弾け飛んだドラグドライバーが、少女の姿――レッカに戻り、玉座の間に倒れ伏す。
「あ……主殿……すまぬ……」
床に這いつくばり、満足に動くことのできないレッカが主にそう詫びる。
「いや……よくやってくれた……」
通常時の姿――ブラックホッパーへと戻った勇者は、膝立ちとなりながらこの世界で巡り合った相棒をそうねぎらった。
全身を覆う漆黒の甲殻はぶすぶすと焼きただれ……。
体の至る所から、白煙が吹きあがっている……。
ダメージの甚大さは疑う
「後は……おれの仕事だ!」
そう……。
サンライトホッパー最大の必殺技をもってしても、魔人王の命には届かなかった。
「グ……ヌッ……!」
叩き飛ばされたところを玉座に受け止められた魔人王は、苦痛にうめきながらも立ち上がりつつあったのである。
足元には、根元からへし折れた魔剣の残がいが転がっており……。
内に秘めた激情を表すかのようだった変貌は消え去り、こちらもまた通常時のホワイトホッパーへとその姿が戻っていた。
純白の甲殻が焼けただれているのも、全身から白煙が吹きあがっているのも、勇者と同じ。
そして闇より暗い漆黒の目を戦意に燃やし、対手をにらみ据えているのも、やはり同じだ!
「ふううううう……っ!」
呼気を整えながら、勇者がわずかに腰を落とす。
もはや、互いに余力は残されていない……。
次なる技こそが、最後の攻撃であり、そして――勝敗を決する一撃!
「コオオオオオ……ッ!」
まるで、鏡写しのように……。
魔人王が、やはりわずかに腰を落とす。
ブラックホッパーとホワイトホッパー……。
最強の改造人間たる両者が、このような状況で放つ技と言えばただ一つ!
「――とおっ!」
「――デアッ!」
二人のホッパーが、跳躍する!
そのまま共に、バレリーナのごとく華麗な空中回転を披露した。
これこそは、バッタの脚力を余すことなく拳に伝える極意……!
ここから放たれる跳躍拳こそが、ホッパー最大最強の一撃なのだ!
「ホッパアアアァァ――――――――――」
「――――――――――パアアァァンチッ!」
もはや、駆け引きも何もなく……。
ブラックホッパーが、全力の拳を打ち抜く!
そしてそれは、ホワイトホッパーも同じ――ではない!?
ホワイトホッパーは……。
魔人王は腰だめに構えた拳を――振り抜かなかった。
無防備に跳んだまま、自身の跳躍力すら上乗せされた勇者の拳を真芯に受けたのである!
「――何っ!?」
勇者が
「――グウアアアッ!?」
間違いなく致命の一撃を受けたホワイトホッパーは玉座に叩きつけられ……。
これを半壊させながら、倒れ伏したのである……。
ブラックホッパーの……勝利だ。
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