若きハンター達の戦い
「真子さん!」
「任せて!」
宝樹がそびえ立つ広場は、宝樹を中心に広がっている。
だがそこはハヌマーンが陣取っているため、俺達は宝樹から200メートルぐらいの地点で一度立ち止まった。
理由は、真子さんに
真子さんのフィールド・コスモスは、町を覆っている結界プロテクト・フィールディングより強度が高いため、災害種であっても突破する事は出来ない。
この場には多くの異常種や災害種もいるんだから、1匹でも逃がせばどんな被害が出るか分からない。
だから真子さんにフィールド・コスモスを使ってもらい、この場の魔物を全て倒すつもりだ。
「展開完了!いつでもいいわよ!」
「了解!」
さすが真子さん、仕事が早い。
「まずは数を減らす!それからハヌマーンを狙うぞ!」
本音を言えばすぐにハヌマーンを狙いたいんだが、魔物の数は500近いから、数を減らさないと思わぬところから攻撃が飛んでくる。
通常種や上位種なら何とでも出来るが、稀少種だと注意が逸らされる恐れがあるし、異常種や災害種なんて普通に致命傷もんだ。
だから種類を問わず、まずは数を減らすところから始めないといけない。
「了解!出し惜しみ無しで行くわよ!」
俺の号令と共に、真子さんがスピリチュア・ヘキサ・ディッパーを生成し、S級術式スターライト・サークルを発動させた。
半径50メートルで展開されたスターライト・サークルによって、周囲に氷の鏡が現れる。
その氷の鏡から光が舞い、跳ね返りながら威力を増幅させ、次々と魔物達を貫く。
しかも全包囲攻撃だっていうのに味方には一切当てていないから、マジでとんでもない処理能力だ。
「久しぶりに見たけど、相変わらずえげつないわね」
「範囲内なら、どこにいても当たるんだもんね。威力も高いから、稀少種までならこれだけで終わっちゃうんじゃない?」
プリムとルディアのセリフに、俺も同意だ。
いや、真子さんの刻印術の強度と精度なら、異常種どころか災害種でもいけそうだな。
さすがに今回は同時補足してる魔物の数が多いから、威力は落ちてるみたいだが。
「フィールド・コスモスも使いながらだし、威力はどうしてもね。それより前方にスペースを作るから、戦うならそっちでお願い」
「分かった!」
その真子さんの言葉通り、俺達の前方の一部は、スターライト・サークルが届かなくなった。
そのスペースに魔物を追い込んでいるが、周囲は相変わらずスターライト・サークルの光が乱舞してるから、魔物達は完全に動きを封じられている状態だ。
さらに恐ろしい事に、ホーリー・グレイブやファルコンズ・ビーク、ランサーの方も同じような感じでスペースが出来てるぞ。
生活型刻印法具でこれなら、設置型ってどれだけ処理能力があるんだよ?
というかスピリチュア・ヘキサ・ディッパーって、マジで単一属性型なのか疑わしいんだよな。
いや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
せっかく戦いやすいスペースが出来てるんだから、とっとと倒すとしよう!
俺はそのスペースに駆け込みながら、スターライト・サークルに追い込まれた魔物に向かってアイスエッジ・ジャベリンを放った。
みんなも同様に、魔法を叩き込んでいる。
そして真っ先にスペースに辿り着いた俺は、薄緑にミスト・ソリューションを発動させ、目の前のクエイク・コングを斬り捨てた。
「てやあああっ!」
俺の次に駆け込んできたルディアも、アサルト・ブレイザーを纏わせたドラグラップルでクレストホーン・ペガサスを殴り飛ばしたし、ミーナもメイス・クエイクで、ダークブレス・ブルを叩き潰している。
通常種や上位種、稀少種はもちろん異常種や災害種も多い戦場だから、エンシェントクラスの多くが所属している俺達ウイング・クレストが率先して高ランクモンスターを狩る必要もある。
スペースの外はスターライト・サークルの光が乱舞してるから、高機動戦闘をメインにしているプリムは少し戦いにくそうだが、それでも極炎の翼を纏い、極炎のグランド・ソードをスカーレット・ウイングに纏わせ、カトブレパスを真っ二つにしているから、そんなに時間を掛けずに倒せるだろう。
ある程度まで数が減ったら、俺はハヌマーンに向かう予定になっている。
だけど今は、1匹でも多く魔物を倒さないとな!
Side・バークス
ったく、大和達と知り合ってからってもの、とんでもない戦いのオンパレードだぜ。
なにせ大和とプリムの奴は、知り合ったその日にアビス・タウルスを瞬殺しやがったし、その1週間後には終焉種オーク・エンペラーとオーク・エンプレスをタイマンで、ちょい前の戦争じゃスリュム・ロードにアントリオン・エンプレスまで仕留めやがったからな。
その上で、ここガグン大森林の終焉種ハヌマーンにまで手を出そうってんだから、あいつらはイカれてるんじゃねえかと思わずにはいられねえ。
だが理由も分からなくもねえ。
大和が強くなろうとしている理由は、仲間を守るためっていう理由もあるが、ヘリオスオーブに滅びをもたらすっていうアバリシア神帝国の神帝を倒すためだ。
その神帝は魔化結晶を使う事で、エンシェントクラスを凌駕する力を手に入れたっていう神託が下ってるらしいから、対抗するためにはその上を目指すしかない。
さらに最大の理由は、神帝が大和や真子と同じ世界からの来訪者
別に大和や真子が悪い訳じゃねえんだが、あいつらは根が真面目なのか、自分達の世界の人間がヘリオスオーブを滅ぼす存在に成り果てた事に責任を感じちまっている。
確かに神帝は大和達の世界の人間かもしれねえが、そもそもの話として神帝は200年以上も前に転移してきたらしいから、あいつらと直接関係がある訳がねえってのにな。
それにあいつには、いや、あいつらには借りというか恩があるから、この場のハンターは誰もあいつらの責任だなんて思ってねえってのによ。
「おら、よっ!」
少し苛立ちながら、目の前のシェイカー・コングに蹴りを見舞い、
「ナイス!せいっ!」
そのシェイカー・コングの頭に、クラリスの矢が突き刺さり、命を断つ。
今の俺のレベルは57になってるし、装備も
嫁のサリナ、クラリスと一緒なら、Mランクモンスターでもいけるんじゃねえかと思ってる。
「ぬわっ!」
ところがメガ・クエイクの剛腕が、俺の真横で空を切った。
いや、俺が避けたんだが、けっこうギリギリだったから、マジで焦ったぞ。
「バークス!油断しすぎだ!」
「新婚早々未亡人なんて、私達はイヤだからね!」
そのメガ・クエイクはクリフさんの大剣で両腕を斬り落とされた後、サリナの槍に心臓を貫かれて息絶えた。
ヤベえ……これは後で説教だ……。
「わ、わりぃ!」
「悪いって思うんなら、もう油断しないでよね?」
そりゃ当然だ。
戦闘中に余計なこと考えてた俺が悪いんだし、それが油断だって言われたらその通りなんだからな。
「おうよ!」
今は全神経を集中だ。
後で説教されるのはこええが、まずはこの場を乗り切ってからだからな!
Side・カール
俺の目の前では、災害種のアバランシュ・ハウルが、母さんの大鎌で首を斬り落とされていた。
俺もファルコンズ・ビークの一員としてトラレンシア、そしてソレムネに行ったし、スリュム・ロード討伐戦にも参加したから、アバランシュ・ハウルを見たのは初めてじゃない。
あの時は進化してなかったから後方支援に徹してたが、それでもアイシクル・タイガーに襲われた時は死ぬかと思った。
ウイング・クレストのラウスとキャロル様が駆けつけてくれたから助かったが、同時に年下2人の強さも目の当たりにしたから、しばらくは自信を失ったもんだ。
ソレムネ進軍中でも進化は出来なかったが、その後母さん達がリベンジって事で入ったイスタント迷宮攻略中にやっと進化出来たから、少しは自信を回復する事が出来た。
そう思ってたんだが、そしたらラウスはエンシェントクラスに進化してやがったから、もう笑うしかなかったな。
そのラウスが所属しているウイング・クレストは、エンシェントクラスが10人以上もいるから、もはや羨む気持ちも無いが。
「カール、後ろ!」
「分かった!」
俺の相棒でサブ・リーダーのホリーさんの娘、ハイフォクシーの武闘士ミリーの声に反応して、後ろから襲い掛かってきていたフリーザス・タイガーに対して、槍をカチあげた。
ミリーは俺より1つ年上で、レベルも俺より高く、進化もソレムネ進軍中だったが、俺にとっては姉みたいなもんだ。
そのミリーは、俺の槍で宙に浮いたフリーザス・タイガーに向かって、爪の生えた手甲に
そんな攻撃を受けた訳だから、フリーザス・タイガーの首は大きくえぐれているし、それで息絶えている。
「次は!?」
「クレスト・ユニコーンっぽいな!」
その次に俺とミリーが手を出したのは、異常種のクレスト・ユニコーンだ。
G-Iランクだが俺達にとっては十分格上の魔物だし、反りのある角を伸ばす事で突くだけじゃなく斬り付けることも出来るから、元々の足の速さもあって、近付くのも大変な魔物だ。
「カール!あれはあんたにあげるよ!せいっ!」
ところがミリーが地面に拳を叩き付けると、地面となっている扶桑の根が槍のように隆起し、クレスト・ユニコーンの動きを阻害した。
ミリーの
本来なら扶桑の根の上じゃ使えないんだが、ミリーは
と言っても、大和や真子のアドバイスを受けて改良したんだが。
だけど、俺はまだ
いや、今はそんな事は後回しだ。
俺はフライングを使い、ミリーがグローイング・ランサーでカチ上げたクレスト・ユニコーンの上に飛び上がる。
俺はハーピーハーフって事もあってか、
ハイクラスに進化した事で
クレスト・ユニコーンは俺の炎の槍を食らいながら地面に叩き付けられ、命の炎を消した。
悔しい事に俺の槍はクレスト・ユニコーンを貫く事は出来なかったが、それでも今のは
プリムのフレア・ペネトレイター、セラフィム・ペネトレイターに似てるが、そんな
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