第46話 新しい迷彩服


 ランディが次々と装備を車に摘んでいく守備隊の方に顔を向けたまま言う。そうして突然声を上げた。


「おい、あれ」


 ランディの視線の先には変わった形をした武器を積み込んでいる兵士がいた。ランディの声でAランク全員が門の方角を見る。


「グレネードランチャーかよ」


 ヤナギが声を出す。


「マリー、今の発言は訂正だ。グレネードランチャーを使うのなら別だ。湯水の様に弾を打つことがなくなる」


「それにしてもよ、下手に撃つと地下トンネルの天井が落ちて陥没するぜ。無茶しやがるよな」


 スティーブが呆れた声で言う。


「あのタイプは小型だから射程距離は150メートルくらいか。ズドンとぶっ放してから前進していく作戦か。大雑把だよな」


 武器に詳しいヤナギが言うとルリが


「それだけ射撃に自信がないのよ。でもこれで確実にヤナギとランディの出番はあるわね。頑張ってね」


「それにしても守備隊は高額な武器をわんさかと持ってるな、羨ましいぜ」


 ランディが言うが横からエリンが


「グレネードなんてハンターには不要でしょ。銃はもちろん弾だってべらぼうに高い。効率が悪すぎるわ。使うたびに大赤字よ」


 そりゃそうだと頷くAランク達。グレネードランチャーはもちろん4層の武器屋で売っている。サムの武器屋にもあるが、まず生産される数が少なく本体の銃の代金が高い。リンドウが持っている狙撃銃よりも値段が高い。しかも射程距離はせいぜい200メートル程度だ。その上に弾は特注で1発50万ギール近くする。費用対効果が悪すぎるとハンター達からは見向きもされない銃だ。


 話をしながら見ていると全ての武器や装備、食料、そして兵員などを積み込んだトラックが次々とD門から出ていく。


 するとD門近くから支部長のツバキが近づいてきた。ぎりぎりまで守備隊と打ち合わせをしていた様だ。


「ヤナギが言っていた駐車方法と車のキーの件は念押ししておいたわよ」


「助かる」


「それにしてもグレネードまで持ち込んでるのかよ」


「まるで武器の展覧会の様だったわ。でもいくら武器が良くっても使う側の質がどうかよね、ランディとヤナギはしっかりと準備をしておいて。出発はこちらから何も連絡がなければ2週間後の9時」


 ツバキの言葉に頷くランディとヤナギ。全ての車両がD門から外に出ていくと自然解散となりサクラとマリーはこのまま外に出て射撃練習をするというのでその場で別れるとそれ以外のメンバーは四層の中心部に向かって歩き出す。


 途中でバラバラになっていって最後に残っているのはリンドウとエリンとルリの3人になった。


「リンドウが迷彩服を変えたんだし、私もたまには変えてみようかな」


「そうね、この服嫌いじゃないんだけど飽きてきたかも」


 そうして2人で今から迷彩服を見に行くから一緒に来てと手を取られて引っ張っていかれる。彼女らに連れて行かれた店はサムの武器屋ではなくて防具を専門に扱っている店だ。リンドウも顔を出したことはある。もちろん普通の迷彩服も置いてはいるのだがそれらオーソドックスな防具は少なくてどちらかといえば奇抜というかよく言えば斬新なデザインの防具が多くて早々に退散した記憶がある。


 今2人が来ている皮のスーツも陳列されていた。目のやり場に困ったリンドウが店内で視線をあちこちに泳がしている中2人は店員と話をしながらいろんな装備を手に取ってはイマイチねとか言いながら見ている。


 女の買い物は長い。リンドウは途中から店内にある椅子に座って端末を見て時間を潰していた。


「ねぇ、リンドウ。こっちとこっち。どっちが好き?」


 声に顔をあげると2人が着替えて立っている。


 エリンは茶系のセパレートタイプで上はしっかりと身体は隠れているが下はショートパンツだ。上のシャツも前ファスナータイプで胸元、そしてショートパンツから伸びている足には身体保護スーツの黒のメッシュが出ている。


 ルリのはもっと卑猥だ。下はショートパンツではなくホットパンツだ。そして上はマイクロミニスカートの様になっている。当然こちらも前ファスナーだ。パッと見た感じだとホットパンツが見えなくて思わず中を覗き込みたくなる格好だ。


 2人ともスタイルが抜群に良いのでセクシーモデルの様だ。


「どっちでもいいんじゃないか?」


「もう、ちゃんと見てよ」


 ぶっきらぼうに言ったリンドウにルリが唇を尖らせて言う。仕方ないなと立ち上がって近づいて2人の格好を見ると、


「ルリのはダメだな。スカートの裾がひらひらしすぎだ。戦闘中突起物に引っかかると行動できなくなるぞ」


「言われてみればそうか」


 2人もAランクハンターだ、ちょっと変わった趣味があるとは言え戦闘時に自分たちが動きやすいというのが大前提なのは変わらない。


「じゃあ私のにしようか。他にはいいのが無いしね」


 結局エリンが来ていた迷彩服にする2人。色はエリンが茶系、ルリは緑系にする。


「新しい服に慣れたいの。午後一緒に荒野に出ない?」


「鍛錬か。いいな」


 エリンの言葉に頷いたリンドウ。一旦部屋に戻って昼食を食べると狙撃銃を持ってD門に行く。既にそこにはエリンとルリが来ていた。新しい迷彩服を着ている2人。左肩にはしっかりAランクのパッチが張ってある。


 2人が新しい迷彩服に変えたのはあっという間に広まったらしく、2人を見ようとそれなりの人数のハンターが集まって遠目に2人を見ていた。


「相変わらず人気があるじゃないかよ」


 四輪駆動車の後部座席に乗り込んだリンドウ


「妬ける?」


 と助手席から身体を後ろに向けてエリン。車を出しながらルリも、


「リンドウも興奮してるんでしょ?犯したくなってるんじゃない?」


「なってねぇよ」

 

「ねぇ、リンドウ。このまま荒野の廃墟で3人でしない?」


 とエリン。


「しねぇよ」


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