第43話 ハンターの立ち位置の確認
ハンター達が巨大廃墟を探索して戻ってきてから3ヶ月が経った。政府と都市防衛本部、そしてハンター本部との間で会議が持たれ、その席上で都市防衛本部が廃墟の地下を探索して工場を探し出す事が決定する。過去の地下鉄の路線図が見つかったのかどうかは政府は公式に発表していない。
ハンター本部は都市防衛本部からも手助け無用との発言もあり当初は完全に傍観を決め込んでいたが、政府より失敗続きの都市防衛本部には全て任せられない。一部でもハンター本部と合同作業をすべしとの強い意見があり、最終的に巨大廃墟に都市防衛本部が入った後の彼らの輸送車両の安全確保のみ請け負うことにする。これはすなわちハンター本部から見ればお前さん達は廃墟で勝手にやってくれて結構。乗って来たトラックや装甲車だけは見張っといてやるよということだ。
最終的に合意するとハンター本部から各支部に対して通達が降りて来て再び支部と本部とのオンラインミーティングとなった。席上政府との決定事項を告知し、その上でハンター支部として何名のハンターをどれくらいの期間出すかというのが議題だ。
最初に今回のハンター本部としての役割の説明があった時には全員の支部長がよくやったと本部の今回の対応を評価した。地上の安全確保も口で言うほど容易くない。守備隊でそこもやってくれるのならハンターの死亡リスクがグッと減る。願ったり叶ったりだ。
「ミッションの期間は?」
「とりあえず1か月の予定らしい」
「1ヶ月で終わり?それじゃあ無理だろう。中途半端なだけだ。やらない方がいいんじゃないのか?」
各支部長からは辛辣な意見が出てくる。
「本部としては守備隊がどうなろうが関係ない。我々がその1ヶ月の間どうやるかという点に絞って検討してほしい」
誰かが発言した。
「早い話、今回ハンター達は廃墟の駐車場の管理人ってことだよな」
的を得た言葉に全員が大笑いした。そして笑いがおさまると
「1ヶ月なら2チームは必要だな」
「というか管理くらいならBランクくらいでもできないか?」
さまざまな意見が出てくる。風通しが良くて常にオープンに議論できるのがハンター本部の良いところだとツバキはいろんな声を聞きながら思っていた。
「Bランクか。確かに数はいるが装備に不安はないか?」
「いや、Bランクの中でもベテランの奴らはそれなりの装備を持っている」
そこでC地区のアズミが発言をする。
「人数に縛りはあるのかい?それと報酬はどうなってる?」
その質問には本部の担当者が困った顔をした。
「正直Aランクを出す前提で報酬は作ってきた。Bランクとなると見直しになるな」
そう言って画面に映っている支部長に30分待ってくれと一旦休会になった。
休会中C地区のアズミから通話が入ってきた。
「C、D地区は今回も合同になる。事前にある程度意見をすり合わせておきたい」
「いいわね」
自分もそう思っていたから了承する。
「それで、そっちはどう考えてる?」
聞かれたツバキは
「考えられるやり方は3つかな? Aランクのみ、Bランクのみ、A、Bの合同」
「そうだな」
「正直言うとAランクのみでは出したくないの。最近彼らを使いすぎている。しばらくはゆっくりと休めさせてあげたいところ」
「確かにな。優秀だけに使いたくなるんだよな。特にリンドウはフル稼働だろう」
アズミの言葉にリンドウはもちろんだけどエリン、ルリもそうなのよと答えるツバキ。
「となるとBのみかAB合同か」
「Bランクにも昇格のチャンスを与えたいわね。交代も必要だしAランク2名のリーダーの下にBランクを30名程つける?」
「悪くないな。つけるBランクの人数は全体のバランスがあるだろうが30名程度ならいいかもな」
「C地区から提案して」
「いいのか?」
「お願いするわ」
アズミとの打ち合わせが終わってしばらくするとオンラインミーティングが再開された。
「今報酬を画面にアップする。左がAランク、右がBランクだ。それと人数だが本部と支部が持っている持っているトラックと装甲車から見て最大で1箇所に40人は輸送できる」
廃墟は5箇所あるので全部で最大200人だ。
本部の説明を聞きながらアップされた資料を見る支部長。ツバキもその資料を見て妥当な報酬だと感じた。
「報酬はこれでいいんじゃないか」
1人が言うとこんなもんだろうと他の支部長達も同意する。そして次に誰を派遣するかと言う議論になった。
どこの地区もAランクの派遣には二の足を踏んでいる。彼らを酷使しすぎているという認識だ。従いBランクだけで行かせると言う声が大勢になりつつあった時C地区のアズミが発言をする。
「Bランクを管理するためにAランクを2名、そしてBランクは30名にしてはどうか。仕事をしている間は2交代制になるだろうから現地ではAランク1名の下にBランク15名、これを2チーム作って交代で監視する」
「なるほど、いい案だ」
2、3人の支部長が賛同する声が聞こえてきた。
「それともう一つ条件というかお願いがある」
とアズミが続けて、
「都市防衛隊の装甲車についているマシンガンを戦闘時にハンターが使用する許可だ。あのマシンガンを使えるのならかなり楽になるからな」
都市防衛隊は全ての装甲車の屋根にマシンガンを装備している。あれば使えるとなると万が一機械獣が多数襲いかかってきても十分に対処可能だろう。
「そりゃいいアイデアだ。Bランクの負担も軽くなるぞ」
「ちょっと待て。今ここで政府と都市防衛本部に聞いてみる。
画面には端末を通じて話をしている本部の担当者の姿が見えている。マイクをオフにしているので声までは聞こえてこないが。数本の通話を終えるとマイクをオンにし、
「許可がでた。それくらいなら構わないだろうということだ」
「となるとアズミ支部長の案に賛成だな」
「Aランクがリーダーとして同行するのならBランクにとっても良い経験になる」
結局各地区でAランクのリーダー2名とBランク30名のチームを作りこれが2週間交代で守備隊の車両の護衛をすることになった。
そこでツバキが発言を求めた。派遣人員についてはアズミの案で問題ないと言い、そして、
「期間が1ヶ月ということですが、今回の巨大廃墟については既に地下の入り口を見つけている廃墟とまだ見つかっていない廃墟があります。見つかっていない廃墟については入り口を見つけるまでに時間がかかることが予想されます」
「なるほど。ツバキ支部長の言う通りだ」
本部担当者が画面の向こうで頷きながら言う。
「それともう一点。地下に降りた守備隊が4週間経っても地上に戻ってこないケース。この場合にはどうしますか?もちろん地上に上がってこなかったからと言ってハンター達が地下に降りて行く必要は全く無いと考えていますが、待ちの状態をいつまでとするかは決めておいた方が後で揉めないと考えます」
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