第2話 オルガの心臓

体中が燃えるように熱い。


オルガの心臓‥…戦争ばかりを繰り返す人間に怒りを覚えた神王が世界を滅ぼそうとしたラグナロク時代。人間の自業自得とは言え、滅亡を待つばかりの人間を哀れに思った軍神オルガが一人の人間に力を与えた。ラグナロク時代を生き残れるように。


その人間の子孫がブラッティーネ公爵家だ。


オルガの心臓を受け取ったのが娘であったこと、また自らの心臓を差し出したことから一説には当時のブラッティーネ公爵令嬢とオルガは恋人であったのではないかというものがある。


今では考えられない話だが、その時代は神と人が最も近い場所に位置していたと言われている。


まぁ、所詮は人間都合よく作った神話に過ぎない。


オルガの心臓は必ずブラッティーネ公爵家の誰かに宿って生まれてくる。


皮肉なことに妾腹である私にその力が宿ってしまったが為に公爵家は私を無碍にはできない。でも、受け入れることもできないのだ。


そしてオルガの心臓の存在が私の母を助長させ要因でもある。


だがオルガの心臓のは神の力だ。人に、ましてや子供に制御できるものではない。


時折、暴走しては私に苦痛を与える。


四回の人生で私は制御こそできていたが使いこなせていたわけではない。


時折、こうして私の中で暴れ出すのだ。


まるで檻から出ようともがく獣のように。




◇◇◇




オルガの心臓の暴走が収まった時は夕方だった。


夕食の時間はとっくに過ぎているが誰も呼びに来ない。今更、行ったところで食事は全て片付けられているだろう。


食欲はないので問題ないけど。


「っ」


暴走を無理やり抑え込んだせいで精神的にも肉体的にもかなりの疲労が感じられる。


まぁ、四回も歩んだ人生の記憶が濁流のように流れ込んできたせいもあるけど。


私は何とか立ち上がり、包帯を巻いてベッドに入った。


体も心も休息を必要としているのですぐに眠りに落ちることができた。


考えないといけないことも、やらなければならないこともたくさんある。


今度こそ死なない為の対策を考えないといけないし、この邸の人や使用人達との関係も精査して、新しく築いていかなければならない。


「‥…怠い」

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