第34話 空中庭園へ

 空中都市が楽しみで、早くに目が覚めてしまった。くっきーとショコラの寝顔を見て和んでおこう。


(ふふっ、気持ちよさそうに寝てるね)


 たまに、すぴーって音がするのが可愛い。朝からほっこりしたから、そろそろ2人を起こして食堂へ向かおうかな。2人のほっぺたをつんつんっとして起こしてみる。


『くまぁ? サラ、おはよくまぁ』


『ぴ? サラ、おはよぴよ~』


「ふふっ、2人ともおはよう。そろそろ朝ごはんを食べに行こうか?」


 お着替えをして準備をすると、2人を抱っこして食堂へ向かう。食堂でジークさんとレイナさんと一緒にご飯を食べて、ささっと宿を出る手続きをして外に出る。


 どこの門でも良いみたいなので、北門に向かおう。門番さんに手続きをして貰ったら外に出て、少し門から離れた所まで歩いて行く。


『そろそろいいぴよね』


 ショコラはそういうと、大きくなった。どうしよう……ひよこがそのまま大きくなったんだけど!?


「ショコラ、えっと……乗っても大丈夫なの?」


(というか、飛べるんだろうか?)


『任せるぴよよ!』


「えっと、登れるかな?」


 ジークさんが抱きあげてくれたので、そのままショコラの背中によじ登る。ジークさんとレイナさんはひょいっとジャンプして、そっと飛び乗った。


「2人ともかっこいい!」


「ふふ、ありがとうございます」


「サラ様を乗せるのはお任せください」


「ジークさん、ありがとうございます」


『いくぴよよー!』


 ショコラが小さい羽をぱたぱたぱたっ! とはばたかせるとゆっくりと上昇を始める。


「わぁ、さすが朱雀のショコラだね! お空飛んでるよー!」


 まさか本当にこの姿で飛べるとは思わなかったよ? でも、可愛い、もふもふ……思わず頬ずりしちゃう!


「ふふっ、ショコラ気持ちいいね!」


『ふふ、うれしいぴよよ』


 大空を飛んで行く巨大なひよこって、ちょっとびっくりな光景だけど、それよりも空からの景色が凄すぎてとても楽しい。風が来ないと思ったら、くっきーが風の魔法を使ってくれていたみたい。


 少し飛んでいると、先の方に空に浮かぶ街があった。


「あれがそう?」


『そうぴよよ。もうすぐ着くぴよー!』


「わぁ、本当に浮いてるんですね!」


「すごいです!」


 レイナさんもジークさんも私も、本当に街が浮いている光景を驚いて見つめている。上から街の様子を見せてくれたけれど、この街は広い。中央にお城があって、周りには石造りの家が沢山並んでいる。


 こんな巨大な岩が浮いているのも不思議だし、ここに住んでいた人がいるのも驚きだ。どんな人達が住んでいたんだろうなぁ。そう考えるだけでもロマンがあるね!


「お城まであったんだね、こんな空中に人が住んでいたなんて不思議だね」


『そうくまね』


「それにどうやって浮いているのかも不思議だよね」


『サラ、お城の辺りに下りるぴよよ』


「うん、ありがとう」


 ショコラから降りるのも、ジークさんが手伝ってくれた。降りると、お城が凄く大きい事に驚いた。所々崩れている所があるけれど、それでも中にも入れそうなほどしっかりしている。


「ふわぁ……お城大きい……」


「サラ様、これは凄いですね!」


「レイナさん、これは凄いですよね!」


「ショコラ様、ここにはもう人は住んでいないのですか?」


『そうぴよよ。もう大分前に、今のエルネスタ王国におりたんだと思うぴよ。実際はどうだったのか分からないぴよよ』


「そうなのですね、ありがとうございます」


 ジークさんとショコラがそんな話をしているけれど、どうやって降りたんだろう?


「ねぇ、ショコラ? どうやって降りたんだろう?」


『魔法陣があったんだと思うぴよ』


「お城の中とか入ってみても良いかな?」


『誰もいないんだし、大丈夫ぴよよ』


「よし、探検しよう!」


 ジークさんとレイナさんに少し止められたけれど、くっきーが結界を張ってくれるというので許可が下りた。


 お城の中に入ってみると、中は今でも人が住んでいそうなほど綺麗だった。外は崩れている所があるのに不思議な感じだ。


 お城の中を探検して色々なお部屋を見ていると、ある部屋に入った時にびっくりして心臓が止まりそうになった……。


「ど、どうして……?」


「「サラ様?」」


『サラ、どうしたくま?』


『どうしたぴよ?』


「どうして……ここにこたつなんてあるの?!」


『こたつくま?』


『こたつぴよ?』


 驚いて懐かしい景色に涙が出そうだったけれど、2人の可愛い仕草に涙も止まったよ。


「うん、これね……私が居た所にあったんだよ。こっちの人はここにこうやって入る事ないでしょう?」


「そうですね」


「確かに、床に座る事はないですね」


 レイナさんとジークさんがそう答えてくれるから、やっぱりこれは日本人がいたんじゃないかな。この部屋に何かあるかもしれない?

 急いで机の所に行って何かないかを見てみる……。探してみると、机の後ろにある本棚から日記のようなものが見つかった。


「これ……日本語だ」


「サラ様の居た所の文字……ですか?」


「はい、日本語って言います。やっぱりこの部屋の主だった人は日本人だったんだ……」


 読んでみると、私とは違い聖女召喚ではなくて、気が付いたらこの世界にいたんだって。そして、この世界にお味噌とかお醤油を色々な地域に教えてきたから、この本を読んだ日本人に世界を周って楽しんで欲しいって書いてあった。


「今、私がお味噌とかお醤油を食べられるのはこの人のおかげなんだね」


『そうくまね。でも他にもあるみたいくまね』


「そうだね、少しずつ探しても良いかもしれないね」


『そうぴよよ。どこかに行く時は私が連れて行ってあげるぴよよ。だからいつでも呼んでいいぴよよ』


「ふふっ、ショコラもありがとうね。どこかに行く時はお願いね」


『任せるぴよよ!』


「サラ様、食の違いは大変でしょうから良かったですね」


「はい! レイナさんにも美味しいものを沢山作りますね!」


「ふふっ、楽しみにしてます。くっきー様、一緒に食べましょうね!」


『ふふっ、一緒に食べるくまよ!』


 まさかここに来て、日本人に関係のある物が見つかるとは思わなかった。そしてお味噌とかお醤油とか日本で使っていた食材を色々な所に教えたってすごくありがたいね。この世界を周る楽しみが出来た気がする。


 日記の一番最後に、ここの庭園に良い物があるから見て行くと良いって書いてある。でも庭園はどうなっているんだろう?


「庭園に行ってみても良いかな?」


「「もちろんです」」


『何があるか楽しみくまね!』


『ドキドキぴよ!』


「ね~。何があるか楽しみだね!」


 お城の中をまた歩いて行くと、中庭に出られる所を見つけたので、外に出てみると……。


「わぁ!! バラ園だぁ!」


「綺麗ですね」


『お花がいっぱいくま~!』


『きれいぴよー!』


 中庭に出ると、バラ園が広がっていた。色とりどりのバラが沢山あって、とても綺麗だ。庭園を歩いて回ってみると、日本に居た時と同じバラが沢山あった。なんだか懐かしい気持ちになる。


「ふふっ、なんだかここを歩いていると懐かしい気分になるね」


『たまに来たらいいぴよよ』


「ショコラ、ありがとうね」


『サラ、ここら辺でお花を見ながらお昼ごはんはどうくま?』


「わぁ、それはステキだね!」


「くっきー様、それは良いですね!」


「レイナは食べたいだけだろう!」


(ふふっ、相変わらずの食いしん坊さんな感じがなんだか癒されるね)


 お昼ごはんはまたスープとかを出して貰うけれど、いつもと違って綺麗なバラを見ながらだから、なんだか気持ちが明るくなるね。


『くふふ、綺麗な景色と美味しいごはんはステキくま~』


「くっきー様、本当ですね~。美味しいご飯と美味しいお花はステキです!」


「レイナさん、お花食べないで~!」


「あっ!」


「ふふっ」


『食いしん坊レイナくまね~』


「くっきーも食べちゃだめよ~?」


『ぼくは美味しい物がいいくま!』


『私はサラのご飯がいいぴよ!』


「みなさん食いしん坊ですね」


「ジークさんの言う通りですね~」


 みんなで笑いあってご飯を食べた。懐かしい気持ちにはなったけれど、とっても癒された気がする。午後もまた色々見て回ってみよう

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