第32話 エルネスタ国王様に会う

 次の日緊張からか、朝早く目が覚める。着替えて準備が出来たら、くっきーを抱っこして食堂へ向かう。ジークさんとレイナさんはもう来ていた。相変わらず早いなぁ。


「おはようございます!」


『おはよくま~』


「「くっきー様、サラ様。おはようございます」」


 みんなで一緒にご飯を食べたら宿を出て、王城へ向かう。しかし、いきなり行って大丈夫なんだろうか?


「ジークさん、いきなり行って大丈夫なんですか」


「はい、事前に打診をしているのと、陛下からの書状がありますし大丈夫ですよ。今回は特例というのもありますが……」


「そうなのですね~。では安心していきましょう!」


「ふふっ」


『ふふっ、サラらしいくま』


 レイナさんとくっきーに笑われたけど、気にしないもんっ!


 くっきーを抱っこしてぽてぽてと歩いて行くと、王城の門に着いた。ここからはジークさんとレイナさんにお任せです!


 ジークさんが話をしてくれて、少しすると門が開いて中に入れてくれた。中に入ると、案内してくれる人がいたのでその人に付いて行く。


 まずは、部屋に案内された。少しその部屋で待っていると、豪華な服を着た男性を先頭に何人かが入って来た。


 慌てて立ち上がると、ジークさんとレイナさんに合わせて礼をする。


(うぅ、緊張する~……)


「わざわざアレクシス王国から来て頂いて感謝する。私はエルネスタ王国第1皇子のクラウスだ」


「こちらが神獣のくっきー様と聖女のサラ様です。我々は護衛のジークとレイナでございます」


「サラです。よろしくお願い致します」



 挨拶をすると、クラウス様は私の前に跪いた。


「神獣くっきー様、聖女サラ様。この度はエルネスタ国王の為に来ていただいて感謝致します」


「分かったくま。普通にしていいくまよ」


「ありがとうございます」


 そう言ってクラウス様が立って席に戻ってくれたので、ホッとする。その後は書状を渡して、国王様の容態を聞く事にする。


「早速だけど、本題に入ろうか。陛下の容態は良くないというかとても悪い状況だ……医師達はいつ亡くなってもおかしくないと言っている」


「あのっ、私は薬草をお料理すると回復させることが出来るので、お料理を作らせて貰っていいですか?」


「えっ、料理で? 変わった聖女様なんだな。でも今までどの医者に見せても原因が分からなかったんだ……」


 確かに変わってるよね……うん。私もまさかお料理で回復すると思わなかったしね。でも治るんだから作らせて貰おう。


「調理場に案内させよう。サラ様よろしく頼む」


「はい、分かりました」


 くっきーを抱っこしてお付きの人に付いて行って調理場に向かう。調理場の片隅を借りてお料理をしていく。


「ジークさん、まずはスープでその後卵とじでいいですかね?」


「そうですね。まずはそれで様子を見ましょう」


「そうですね」


 まずはスープを作って煮ていく。その後は薬草の卵とじを作る。私の側には何人も私の手元を良く見ている。さすがに国王様に食べさせるものだから、安全じゃないとだもんね。


 居心地の悪い感じを受けながら、スープと卵とじが出来た。さて、これはアイテムボックスに仕舞わない方が良いかな? と思っていたらくっきーがひょいっとアイテムボックスに仕舞ってくれた。


(ま、まぁいいか~)


「お料理が出来たので、案内をお願い出来ますか?」


「畏まりました」


 さっきの人に付いて歩いて、またクラウス様のいる部屋に戻ってきた。国王様の所に急ぎたいんだけどなぁ……。


「サラ様、ありがとうございます。早速陛下の所へ一緒して貰っても?」


「はい、ぜひお願いします!」


 今度はクラウス様も一緒に国王様の所へ向かう。少し歩いて国王様の部屋に入ると、豪華なベッドに寝ている人の顔色は土気色で生気を感じられなかった……。


「くっきー、スープを出して貰って良い?」


『これくまよ』


 スープをコップに少しよそい、スプーンで国王様の口に運ぶ。


(お願いだから飲んで!)


 国王様の喉がこくりと動いた。少し国王様の身体が光った……もう少し飲ませよう。スプーンでまた口に運ぶと、今度はもっとごくんと飲む事が出来たみたいだ。


 そうすると、身体がぱあっと光って光が収まると、国王様の顔色が大分戻っていた!


「父上っ!」


 クラウス様が呼びかけると、国王様の目が開いた。


「良かった……」


「……く……うす?」


「父上っ!」


 クラウス様にスープを飲ませてあげるようにお願いしてみると、快く請け負ってくれた。それだけ大事に思っているんだろうと心が温かくなった。


 その間に薬草の卵とじをくっきーに出して貰う。これが食べられるくらい元気が出ると良いのだけど……。


「クラウス、これは一体?! 身体に力が沸き上がるみたいだ」


「アレクシス王国の聖女様が父上の為に来てくれたんだ。この聖女様の作ってくれたスープを飲んだら、こんなに元気になったんだよ」


「そ、そうなのか」


「あの、少し起き上がって頂いても大丈夫ですか? 出来たらこちらも食べて頂きたいのですが……」


「それは?」


『サラの作るエリクサーっぽいお料理くまね』


「「エリクサー!?」」


 もう、くっきーがエリクサーっぽいとか言うから驚いているよ?!


「食べたら、もっと元気になると思うので、食べて頂けますか?」


「あ、ありがとうございます」


 そう国王様が言うと、自分で食べられるくらい元気が出ていたみたいで、今度は自分で食べている。食べ終わると、さっきよりさらに強くぱぁっと光った。光が収まると、顔色もとても良くなった国王様がそこにいた。


「なんだこれは!? 本当にエリクサーみたいだ!」


「父上っ! 本当に良かったです!」


 クラウス様が泣いて喜んでいる。きっとずっと不安だったんだろうなぁ。無事に治って良かったなぁ。と思っていると、国王様とクラウス様が振り返る。


「「聖女様、ありがとうございます!」」


(わわっ、びっくりしたっ!)


「いいえ、元気になって良かったです」


「先ほどは態度が悪く申し訳ありませんでした」


「そんなことなかったですよ? それに今まで治せなかったから不安だったんですよね? だから大丈夫です」


「サラ様、ありがとうございます」


『くふふ、サラのお料理は元気になるくまよ』


「えぇ、とても元気になりました。もう身体の重いのも何もないです」


『ぼくの鑑定でももう何も引っかかってないから大丈夫くまよ。さっきは呪いって出ていたくまよ』


「呪い?」


「「呪い!?」」


『そうくまね。治したから今は呪いを使った人に跳ね返っているくまよ』


「そうなのですね。それは本当に助かりました、ありがとうございました!」


『ふふ、元気になったならそれでいいくまよ』


 そういえば、クラウス様も少し疲れた顔をしていたんだよね。カップにスープをよそうと、クラウス様に差し出した。


「クラウス様も少し飲まれませんか? 疲れが溜まっていると思うのですが」


 そういうとクラウス様はびっくりした顔をしたけれど、すぐに受け取って飲んでくれた。


「ははっ、確かに元気が出る! サラ様は凄いのだな」


「いいえ、私は他に何も出来ないですよ。ただのくっきーのお友達です」


「友達、そうか。それは素晴らしいな」


 クラウス様にも笑顔が戻って良かった。さて、この後はどうしたら良いのかな? と振り返ってジークさんを見る。


「サラ様、良かったですね」


「はいっ! この後どうしたら良いのでしょう?」


「後はお任せ下さい」


 その後は国王様とクラウス様とジークさんでお話をして貰った。私には国同士の話し合いは無理です~、わかりません!


 レイナさんと一緒にのんびりジークさん達を眺めて待つのです。ジークさんが戻ってくると、王城を後にする。


「ふぅ、これでエルネスタ王国も大丈夫そうですね」


「そうですね、サラ様ありがとうございました」


「いえいえ、ジークさんもお疲れ様でした。お話任せてしまってすみません、ありがとうございました」


 私への褒賞がって話があったみたいだけど、必要ないと断ってくれたんだそう。どうしてもっていう時はアレクシス王国と話し合いでお願いしますって事になった。


 私自身は特に欲しい物ないしね。欲しい物は大体が食べ物だしね~。お昼ごはんを食べたら、空中都市の話をジークさん達に聞いてみよう!

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