連休明け、布団のなかで
スマホの目覚ましのアラーム音で目が覚める。7:40。
できればもう一度眠りたいが、10分は短い。どうせ10分後に起きなければならないという事実を思うと、大抵の場合眠り込むことはできなかった。
一度目のアラームを7:40より早い時間にして、ゆっくり『二度寝』の時間を取るという方法もあるのだが、祐子はできるだけ長く連続した睡眠を取りたかった。例えば6:30ごろに一度目覚めて、それから1時間ほどの二度寝をするよりは、まとまった長い睡眠を優先した。そして布団からすぐ出たくもなく、あわよくば5分ほどでも二度寝したい。結果、10分後に二度目のアラームが鳴るという中途半端な設定となった。
今日も二度寝はできず、7:50にアラームが鳴った。仕方なく起きる――はずが、体が重い。いつもならすんなり起きられるのに。昨日は酒など飲んでいない。体調も悪くない。生理は先週済んだばかりだ。なぜ?
祐子はすぐに理由が分かった。連休明けだからだ。しかも三連休だった。普段、会社に行くことには、ほとんど抵抗がない。以前のブラック企業での経験に比べればだいぶラクだし、心にもゆとりがあって職場では活躍しているし、むしろ日々同僚とともに仕事ができることを楽しんでいるくらいだった。
あんなにマシな職場にさえ行きたくないというのはなぜだろう? この連休中、9:00過ぎまでゆっくり寝ていたせいかもしれない。だけど、ということは私にとって一番いいのは家でゆっくり寝ていることで、出社はそれには劣るということになる。
考えてみれば、大多数の人間がそうだろう。家でゆっくりしていたい。当たり前のことにあらためて気付いただけだ。でも、第一希望が叶わない人生でいいんだろうか? 出社しなければならないという強制力に負けてしまって。他のみんなは妥協でも何でもしてればいいけど、私の人生、それでいいのかな? そういう義務感に縛られるのがイヤで、
枕の上の頭の中で『結婚』と『会社』を天秤にかけ、祐子は「そんなに大変じゃないんなら、結婚しちゃっても良かったかな――」と思った。このまま会社勤めを続けていれば気楽で平穏ではあるが昇給や昇進は難しそうで、いずれ気持ちの上でもどん詰まりになりそうだった。だが結婚すれば子どもができたりして、いろいろと新鮮な経験ができそうだ。もし子どもができなくても、家事や親戚付き合いが大変でも、明とは一緒にいられる――祐子の天秤は結婚に傾き、祐子の中で新たな光が輝きはじめた。祐子の表情も明るくなった。
ふと我に返りスマホで時間を確認すると、8:06だった。祐子は
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます