第12話 <救出作戦!>
薄暗い森を三人で歩いていく。うへぇ、どこから何が出てくるか分からないなぁ。
前をスキップ気味にリリスが歩いていく。恐れ知らずってまさにこのことだね。羨ましいなぁ。
動きやすい服装で来て良かったよ。森の地面は所々ぬかるんでいて気持ち悪い。
「リリ、大丈夫ですか?」
「なんとかね。どうしてここの森はこんなに歩きにくいのよ。湖近くの森は快適なのにぃぃ!」
「これが本来の森ですよ。それより……」
「うん。囲まれてるね」
周囲に感じる歪な複数の気配。これは魔物だね。逃げ場はなし、か。
見た目だけだと私たちって最高のごちそうだものね。美少女二人にこの世で一番可愛いおネコ様。そりゃあ涎垂らして襲ってくるわよね。でも、そんなことさせないけど。
せっかくだし、例の武器を使っちゃいますか。私もイリヤも武器を取り出す。
私のは刀身のない柄だけの剣。イリヤのは持ち手だけの槍。勘のいい人は分かると思うけど、これはあの映画の武器を参考に作ったの!
「イリヤ、いこう!」
「ええ。リリは絶対に傷つけさせない!」
「「魔力解放」」
某有名映画の音楽が聞こえてきそうな雰囲気を醸し出しつつ、私の柄から真っ赤な魔力の刃が生えてくる。魔力を刃として使い、相手を切り裂く特別な武器なの。
でも、色が気に入らないのよねぇ。イリヤの槍は綺麗な青色なのに、どうして私のは赤なのよ! これじゃあ、私が悪の帝国みたいじゃないの。誰が暗黒面よ!
草むらから真っ黒い狼が現れる。どこにでもいるようなシャドーウルフね。雑魚だから大した問題じゃないわ。
数体が勢いよく駆けてくる。地面を蹴って飛び上がるけど、それは悪手。標的としては狙いやすい。
牙が私に届く前に首を一閃。魔力の刃は同じく魔力でないと弾けないから、刃は何の抵抗も受けずに狼の首を切断する。黒い瘴気が漏れて狼は消滅した。討伐一!
でも、魔物って厄介なのよね。仲間が殺されても怯むことなく襲ってくる。
数だけは多くて鬱陶しい相手に思わずため息が出ちゃう。その間にイリヤは槍で次々魔物を蹴散らしていた。演舞のような槍捌きは惚れ惚れしちゃうね。
『ギャウッ!』
「うるさい」
せっかくイリヤの戦いを鑑賞していたのに、横合いから無粋な魔物が飛び出してきたから私は炎の槍を生み出して発射する。無詠唱発動は普通できないらしいけど、転生の特典なのか私は使うことができる。普段は呪文を唱えるやり方のほうが好きだけどね。
魔物の脳髄を焼いた槍は、その後ろまで飛んでいって複数体を巻き込んで爆発した。固まっているからまとめてやられるのにね。
イリヤに混じってリリスも魔物と戦っている。光の爪を伸ばして次々相手を切り裂いていくから恐ろしい。リリスは素早いから、あれやられると対処のしようがね……。
で、そんなこんなで魔物たちを狩り回っていく。しばらく進むと、奥に洞窟が見えてきた。入り口には、見張りらしき緑の小人がいる。
「あれが魔物の根城かな?」
「ですね。ほら、ゴブリンがいます」
「ということは、さっきのシャドーウルフはゴブリンが飼ってるやつか。どうする? 連れ去られた人たちは多分あの中だよね?」
いきなり洞窟に火炎魔法を放って燻製にするわけにもいかないし。かといって正面突破は危険だし。
「……私が行って村の人を助けてきます。脱出したら洞窟を焼き払ってください」
「ええっ!? 危ないよ」
「安心してください。リリを残して死にません」
やだ、もうっ。こんなところで告白? イリヤも大胆だなぁ。
まっ、冗談は置いといてお任せしますか。ちょっと強いホブゴブリンって魔物がいたとしても、イリヤの敵じゃないし。
気配を薄くする補助魔法を付与してイリヤを送り出す。援護として見張りは殺しておきますか。
遠距離から電撃を飛ばして見張りを暗殺。イリヤの突入を見送って私は近くでリリスと遊ぶことにしよう。
しばらくリリスとじゃれ合う。と、洞窟の奥からイリヤの気配がしてきた。一緒に何人かもいるっぽいから、救出には成功したんだね。さっすが!
暗闇からイリヤが二人の女性を連れて走ってくる……けど、おーおー団体さんも一緒か。
「リリ! ゴブリンキングもいますよ!」
「問題ない。それより、もう中を攻撃してもいいいの?」
「はい。連れ去られた人はこれで全員です」
「オッケー。じゃあ、“クリエイト・ウォールロック”」
洞窟を塞ぐように岩の壁を作り出す。さて、向こう側で暴れているゴブリンたちを焼き尽くして……。
「ん? リリスどうしたの?」
「にゃあー!」
わずかな岩の隙間にリリスが火を吐いた。壁と天井の合間から黒い煙がもくもく出てきてるから、多分内部は大火事でしょうね……。というか、リリスが火を吐けることに驚きなんだけど。この子、ネコの聖獣よね?
容赦なく攻撃したリリスにちょっと引いたけど、これでお仕事終わり。村に帰りますか。
「っ! イリヤ危ない!」
そう思ったのに、視界の端で光るものが見えたから思わず飛び出す。イリヤの頭を狙っていた矢から庇ったけど、代償に腕を刺されちゃった。これ、結構痛いね。
「リリ!? 伏兵ですって!?」
急いでイリヤが潜伏していたゴブリンを仕留める。リリスが側に寄ってきて心配そうに顔を覗き込んでくれた。
「あはは、大丈夫」
「みゃあ……」
「申し訳ありませんリリ。私を庇って怪我を……」
「いいよ。それに、このくらい平気だから」
とにかく、今イリヤが倒したので最後かな? 近くに歪な気配はもう感じなくなったし。
じゃあ、今度こそ帰りましょうか。私たちは、助けた人たちを連れて村に帰ることにする。
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