第14話 いつも封印される最新技術
食卓に並んだ料理は豪華であった。
昨日のカレーはピラフにされ、ふわふわの卵で包まれている。
スーパーで買える最高級のステーキに、コンソメスープは自家製。
カツ丼、シーザーサラダ、明太子スパゲッティ、ニョッキのボロネーゼ、牛肉が口の中でほろほろに溶けるまで煮込まれたビーフシチュー。
唐揚げにポテト、回鍋肉に棒々鶏。
デザートにプリン、ショコラプリン、フルーツポンチ、そして中央に鎮座するは――――推定・瑠璃姫の等身大おっぱいプリン。
「いやお前、作りすぎじゃね?」
「豪華ねぇ……、どうやってあんな短時間で作ったの? 今度私にコツを教えてね」
「ラッキー、今日は敦盛が作りすぎた日だな! こういう時は特に美味しいんだよねぇ……!!」
「………………たぁーいむっ!! ちょっとあっくん以外はこっちに集合!!」
誰もが目をそらしたおっぱいプリン、流石に敦盛の変調を理解したのか三人は素直に彼女に従ってリビングの片隅へ。
「え、俺だけ仲間外れ?」
「アンタはちょっと黙って待ってなさいっ! ――――ごめんねみんな、ちょっと不味い事態になってる」
「ああ、やっぱりアレか?」
「その……テーブルの真ん中に乗ってるアレ? そこまで問題なの?」
「見事なおっぱいプリンだったな、なぁ溝隠さん敦盛をちゃんとヌいてあげてる? アイツ欲求不満じゃない?」
「黙れ樹野……、アタシとアイツはそういう関係じゃないし。今はそれどころじゃないのっ!!」
焦った様子の彼女に、奏達も感じ入った物があるらしく。
「――――おい、まさかアイツが料理作りすぎる時って」
「お、勘が良いね竜胆。そうなんだよ敦盛が作りすぎる時ってストレス爆発した時でさぁ」
「分かってて楽しんでるわね樹野君?」
「確かにそうだけど……アンタ達は全然分かってない、中央のおっぱいプリン見たでしょっ!? ああいうのが出てきた時はストレス爆発でも特大のストレスが爆発した時なんだってっ!! 最低限、全部の料理食べてなおかつ問題解決しなきゃ――――ああ、考えたくもない」
青い顔で震える彼女に、三人も冷や汗を流して。
「え、そこまでアレってそこまでなの? そんなにヤバイのアレ? ……しまった、火澄ちゃんを巻き添えで犠牲にするべきだった」
「躊躇無く最愛の恋人を生け贄にしようとしたな、前々から思ってたけどお前結構鬼畜だろ?」
「福寿さんを女として見てないフリしてる竜胆程じゃないと思うぜ?」
「なんでそれで親友やってんの?」
「「女関係以外は最高に馬が合うから」」
「それは女関係で壊れ……いえ何でもないわ、今は対処を考えるべきね」
「その事でちょっと協力して欲しいのよ、今から新しい発明品を持って来て本音を探るから――」
奏と竜胆と円は、その提案に頷いて。
そうと決まれば即決行である、彼らはまず敦盛を取り囲み。
「もう終わったか? つーか何を話してたんだ?」
「まぁまぁ、大したことじゃなかったよ。それより今日は疲れたんじゃない? 肩でも揉むよ」
「こんなに料理を作ったんだ、腕があがらないだろう? 俺が食べさせてやる。ほれあーん」
「なんで竜胆なんだよッ!? そこはせめて奏でさんがしてくれよッ!?」
「ふふっ、実は早乙女君にサプライズがあるの。目を隠しても良い?」
「うっひょう!! 奏さんの手の感触だぜいやっほ――って蹴るんじゃねぇ誰だ今のッ!?」
「俺じゃないぞ」「オレでもないね」
「嘘付けテメーらのどっちかしか居ねぇじゃねぇかッ!!」
(本当なんだが)(本当なんだけどなぁ)
二人は語らなかった、奏でがこれ幸いとゲシゲシ蹴っていたのを。
彼らにだって慈悲はあるし、日頃からセクハラしている罰だろう。
その時であった。
「――――待て、なんでアイツの声が聞こえない? テメェら何を企んでやがるッ!?」
「ヤベ、バレたぞ円」
「そこでオレに振る? じゃあ奏でさんゴー!」
「じっとしててね早乙女君」
「こ、この背中の感触は――おっぱいッ!? 奏でさんのおっぱいッ!!」
「あ、オレのお尻」
「なんでテメェなんだ円ァアアアアアアアアアア!!」
「一つ言っておくぞ敦盛、――奏へのセクハラ言動は許すが、触れたら俺がお前を地獄に落とす」
「きゃっ、嬉しいわ竜胆。やっぱり私の事を……」
「いや? これも遺言でな。結婚するまで奏を清い体のままにしろと」
「これ私、なんてコメントしたらいいの?」
「それを聞かされてる俺と円もなんて言えば良いのか分からんのだが?」
「気にするな――勿論ウソだ(まぁ、実は本当なんだが)」
「テメェぶっ殺すぞゴラァ!?」
「竜胆……、夜の寝室には気をつける事ね」
その瞬間であった、バタバタを元気な足音と共に瑠璃姫の声が。
「お待たせみんなっ!! さぁこれを――こうっ!!」
彼女が敦盛に仕掛け終わった瞬間、三人はすぐに離れてる。
当然、目隠しもなくなり彼の視界は開けたのだが。
「やっぱ何か企んで――――…………ああん? 眼鏡?」
「ふふっ、名付けて『アタシのメロメロ視線は釘付けくん』!! ――もう、アンタの目線はアタシにしか行かないわっ!!」
「は? こんなのすぐに外して…………って、外れねェ!?」
「ねぇ瑠璃ちゃん? 只の眼鏡に見えるのだけれど」
「よくぞ聞いてくれたわねっ!! これは横を向いても下を向いても目を閉じても、なんなら他の部屋に行ってもアタシの顔を脳波で直接映し出す眼鏡よっ!!」
「うわマジだ目を閉じても見える気持ちワルッ!?」
「天才だとは聞いていたが、こうも高度な技術で無駄な発明品を……」
「いや高度な技術で済ませて良いもんじゃないよねコレっ!? オレ聞いたことないよ脳波で直接映し出すとかっ!?」
「…………苦労してるのね早乙女君、これからは手ぐらいは触っても良いわ」
「おい奏? ウソだろ奏? え、ええっ? さっきの意趣返しだよな? な? な?」
「どう? 褒めてくれて良いのよ?」
「これは予想してなかったなぁ……、こんなの世に出たら大騒ぎじゃないか。――うん? もしかして敦盛はいつもこんな発明品の対処を?」
「今更理解しないで止めて欲しかったッ! マジで事前に止めて欲しかったッ!!」
脳波でどうのこうの等、SFでしか聞き覚えの無い事だ。
出回っている最新のVR機器でさえ、ヘッドセットに画面を映し出すだけだというのに科学の時計を何年進めているのだろうか。
「ふふーん、もう遅いわよあっくん……これには何とアタシの問いかけでアンタの本心を言っちゃう機能もついてる優れ物、――――さぁ、罪を数えなさいあっくん!!」
「なんつーもんを作ってるんだテメェえええええええええええええええええええええええ!?」
という事で、敦盛に窮地が訪れたのであった。
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