※川口直人 51(大人向け内容有り)

 今日は久々に2人揃って仕事が休みの日だった。鈴音に何処かへ遊びに行こうかと言われたけれども、それはやめようと俺から提案した。何故ならこれから俺は父と手を貸してくれそうな会社を訪問して協力相手を見つけなければならず、鈴音と過ごせる時間が取れなくなってしまう。

だから今日は鈴音と2人きりでゆっくりすごしたかったからだ。


この話をしたとき、鈴音は笑顔で俺に言った。


「それじゃ、2人で映画でも借りて、部屋で食事しながらゆっくり過ごそう?」


そう、鈴音は決して不平不満を言ったりしない。すみれと交際していた時は、文句や要望が多くて、正直辟易していた。女性と言う者は不平不満が多いものなだと自分で自分に言い聞かせていたけれども、鈴音と交際して初めて分った。


鈴音はパートナーとして最高の相手だと言う事が…。




****


 今日は2人でDVDを2本借りて来た。1本はSFXを駆使したファンタジー映画。もう1本は最近話題になったラブストーリーの洋画だった。2本とも2人で話し合ってレンタルしたDVDだった。


「「ただいま~」」


2人でレジ袋をさげて、俺の部屋に帰って来る。


「フフフ…沢山買っちゃったね?」


鈴音が楽しそうに俺を見あげる。キッチンのカウンターテーブルの上には所狭しとアルコールと食材が乗っている。


「先に料理を作ってしまおう」


俺が言うと、鈴音は「うん」と言って頷く。そして2人でキッチンに立って昼と夜の分の料理を作り始めた―。



2時間後―


カウンターテーブルの上には2人で協力して作った料理が並べられた。焼きおにぎりやサンドイッチ、味付け卵にポテトサラダ。フライドポテトやチキン唐揚げ等々…。


「まるでパーティー料理みたいだね?」


鈴音が俺を見上げて言う。


「ああ。だけど、これで今日は1日ゆっくり過ごせるよ」


「うん」


「よし、それじゃ早速料理を持って部屋に行こう」


「そうだね」


2人で食事を部屋に運び、センターテーブルに並べて準備が終わる。


「最初に何見る?」


鈴音はちょっと考えてから答えた。


「う~ん…それじゃこっち」


手にしたのはSFXの映画っだった。


「うん、俺もそっちの方がいいかな?」


やっぱりラブストーリー映画は夜、お酒を飲みながらゆっくり観た方がムードがあっていいかもしれない。

早速プロジェクターを用意すると鈴音に言った。


「カーテン閉めてくれる?」


「うん」


鈴音はすぐに返事をすると部屋のカーテンを閉める。遮光カーテンだから部屋の中はあっという間に暗くなる。


「フフ、何だか本物の映画館みたいでワクワクするね?」


俺の隣に座ると鈴音が楽しそうに笑った。


「そうだな、最近は値段も安くなったし…思い切って買ってよかったよ」


2人の趣味が一緒で本当に良かった。


「さて、それじゃ早速観ようか?」


「うん」


そして俺はプレイスイッチを押した―。



2人だけの映画館は最高だった。映画が好きな鈴音は食い入るように画面にくぎ付けになっている。そんな鈴音を観ていると、何故か鈴音の幼馴染の男が頭に浮かんできた。俺が鈴音と会えない時間、あいつは鈴音に近付いてくるんじゃないかと不安な気持ちが込み上げて来る―。



「あ~…面白かった…ね?直人さ…!」


俺は無言で鈴音を抱きしめ、キスをした。


「ど、どうしたの…?突然…?」


唇を離すと鈴音が戸惑いながら尋ねて来た。


「ごめん…鈴音に…突然触れたくなって…」


鈴音の髪に顔をうずめながら言う。


「うん…いいよ…」


「鈴音…」


そして俺と鈴音はそのまま身体を重ねた―。




****


「ねぇ…直人さん、何かあったの?」


ベッドの中で鈴音が尋ねて来た。


「え?」


「何だか、今日思いつめた顔していたように見えたから…」


そうか、鈴音は何となく気付いていたのか。


「実は…暫く仕事が忙しくなって…会えなくなりそうなんだ…?」


「え…?本当…?」


鈴音が目を見開く。


「うん…何時に帰れるかも分らないから…連絡も難しいかもしれない…」


言いながら腕の中の鈴音を抱き寄せる。


「忙しいなら…仕方ないね。それなら私からも連絡入れない方がいいね。迷惑かけたくないし…」


鈴音がポツリと言う。


「鈴音…」


後は言葉なんかいらなかった。俺と鈴音は少しの間、会えなくなる。



だから互いの温もりを忘れないよう…2人はこの日、何度も飽きることなく身体を重ねた―。





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