第11章 16 3人でランチ
翌朝―
早番で出勤してきた井上君がご機嫌で挨拶してきた。
「おはよう!加藤さん。」
「お、おはよう・・・井上君。朝から元気だね・・・?」
するとそこへ太田さんが声を掛けて来た。
「おはよう、2人とも。今朝も仲良しだな。」
さわやかな笑顔で誤解されそうな言葉を掛けて来る。
「ええ!勿論ですよっ!何せ俺は先輩よりも多く加藤さんからチョコを貰っていますからね。」
またしても井上君は誤解を呼びそうな発言をする。
「何だ?その話は本当か?」
そしてクルリと太田先輩は私を見ると真顔で尋ねてきた。
「2人は・・そう言う関係だったのか?」
「まさか!ただの同期仲間ですよ!」
即答すると、何故か井上君はショックを受けた顔になっている。
「そうか、なら今日のランチ一緒に行こう。チョコのお礼だよ。奢ってやるから。」
すると素早く井上君も言った。
「俺も!俺も行きますっ!」
「・・・奢らないぞ?」
「う~・・・もとよりそんなつもりありませんよ・・・。」
そして急遽、本日のランチは井上君と太田先輩の3人でランチへ行く事になった―。
昼休み―
私と井上君は太田先輩に連れられてラーメン屋に来ていた。
「ほら、好きなもの言えよ。」
お店のサンプル品を見ながら太田先輩が言う。
「何ですか・・先輩。奢ってやるって言うからどんな店かと思って楽しみにしていたらラーメンなんて・・・。」
井上君がどこか不満気に言う。
「うるさい、文句あるなら帰れ。」
太田先輩は腕組みしながら言う。
「ねえ、井上君はラーメン好きじゃないの?私は好きだけど・・?」
すると
「まさか!日本人でラーメン嫌いな奴なんているはずないじゃないか!いや~どれもうまそうだな・・・。」
井上君の言葉に太田先輩がおでこを軽く小突いた。
「全く調子のいい奴め。それで?加藤さんは何にする?」
「そうですね~・・・寒いから・・あんかけ野菜ラーメンにします。」
「そうか。よし、それじゃ中へ入ろう。」
太田先輩はもうメニューが決まっているのか、迷うことなく自動ドアをくぐって店の中へと入って行く。
「あ!そんな!俺まだ決めてないのにっ!」
後から情けない声を上げて井上君が私たちの後を追ってきた。
「よし、加藤さんはあんかけラーメン・・・と。」
太田先輩は食券機にお金を入れると、あんかけラーメンのボタンを押した。
ピッ
そして音もなく出て来た食券を手渡してきた。
「はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
頭を下げて受けとると、太田先輩は『チャーシュー5枚乗せ』というメニューボタンを押した。おおっ!なかなかのボリューム・・。
「ほら、お前も買え。」
券売機の場所を太田先輩が譲ると井上君は暫く迷い・・・。
「よし、俺はネギたっぷりチャーシューを・・・。」
するとくぎを刺すように太田先輩が言う。
「井上、俺たちの仕事が接客業だって事・・・忘れるなよ?」
アドバイス・・・ならぬ注意をしてきた。
「は、はい!そ・そうでしたね・・・。」
そして井上君は結局ワンタンラーメンを選んでいた。
店内はコの字型のカウンター席と4人掛けと2人掛けのテーブル席があり、座席の半分以上は埋まっていた。私たちはたまたま席が空いていた4人掛けのテーブルに座った。私の目の前には太田先輩と井上君が並んで座っている。・・何だか違和感のある組み合わせだと感じてしまった。
着席するとすぐに若い男性店員が3つお水を運んできて、テーブルの上に置いた食券を持つとすぐに厨房へと入って行った。
「先輩は良くこの店に来るんですか?」
井上君が尋ねてきた。
「う~ん・・そうだな。週3で来てるかな?」
「え?!週3?!」
私は驚いてしまった。それは・・ちょっと来過ぎでは・・?
「へ~・・そんなに来てるんですか・・。うまいんですか?」
すると太田先輩は真顔で言った。
「お前・・・本当に何も知らないのか?グルメ本にもたまに紹介されているのに・・。」
え?そうなの?ちっとも知らなかった・・。
「まあ・・・食ってみればそのすごさが分かるさ?」
大戸亜先輩はニヤリと笑い・・その結果は―。
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