End of eternal.

nekuro

第1話 エトニアの血

 紅蓮の槍を手にして、戦場を駆けまわる。

 数多の敵を、幾千の馬を、幾万の軍を相手に、その女は怯まなかった。

 女には加護がある。神の加護が。

 戦の神に愛され、その契約を結んだ女の前に、人など有象無象の蟻に過ぎない。

 夜のような漆黒の長い髪を翻し、女神のような造形の顔立ち。

 身軽さを重宝するため、黒い薄着に上から胴体のみ金属の板で包み込む。腕は白い肌を晒し、それは陶器のような美しさ。


 幾度の戦場を駆け、幾度の勝利を手にし、幾度の悲哀をその身に刻んだ。

 女は笑う。

 何故笑うのか、それを一番身近で見ていた俺は知っていた。

 楽しくて、悲しくて、苦しくて。全てを表す表現だという事を。

 とても長い時間、女は笑っていた。

 それが俺の師匠「エルメス」だ。

 笑わなくなったのは、全てが終わった時だった。


 神との契約は、代償を伴う。

 その代償が寿命だった。

 まだ、人として油の乗る頃と言うのに、師匠はベッドから動けなくなっていた。

 その傍らには飾りとなった紅蓮の槍。

 全ての世話を、その時10の小僧である俺が努めなければ生きていけないほどにまで衰弱していた。

 何かをするたび、師匠は言う。


「――すまない」


 詫びの言葉。そこに全盛期の面影は何処にもなかった。

 ある日の出来事。

 その日の昼餉のスープをベッドで横になる師匠に渡した時だった。


「昼餉、出来たぞ」

「すまない」


 食事をとる木製のスプーンを師匠は手から零す。みかねて俺はスプーンを拾い、昼餉のスープを師匠に飲ませる。

 その外見からは見て分からないが、もう一刻の猶予も無いのは感じていた。

 近くにあった椅子に俺は腰かける。

 抜け殻のように、ただ黙って死を待つ師匠に、俺は何とかしてやりたかった。


「なぁ、師匠。なんか願いはないのかよ」

「……願い?」

「ああ。何でもいい。やり残した事はないのか?」


 師匠は虚ろな目で顔を下に向けていた。

 やがて、その目に少しだけ光が灯った。


「一つ、あったな」

「あるのか。じゃあ、それを教えてくれよ。必ず俺が叶える。だからさ、もう少し頑張ろうぜ師匠」


 その時の事は未だにハッキリと覚えている。

 あの師匠が、久々に笑ったのだから。





 ★★  ★★




「エトニアの血」という言葉がある。

 このレンドヴァ大陸で起きた、歴史上もっとも大きく、そして凄惨な争いを意味する。

 大陸でもっとも大きな戦力を持つ「ヴァンケ王国」「グラナード王国」の両家の激突。両国が争いをする引き金となったのは、ヴァンケ王国が主催した催しものから始まる。

 両国は互いに巨大な力を持つ王国同士という事もあり、蜜月な関係を保っていた。

 ヴァンケ王国の催しものに招待されたグラナード王国は、その時まだ幼子であった「エトニア=グラナード」という次期王子と、その母方「イリス=グラナード」を連れてヴァンケ王国に向かった。だが、その催しものの最中、エトニア=グラナードが誘拐される。

 事件は解決したが、エトニア=グラナードは無残な姿で発見される。

 その首謀者が、なんとヴァンケ王国の三人いる王子の一人だった。

 これを王「ベイル=グラナード」が知り、催し物はれっきとした計画的な犯行だと主張。

 そして、エトニアの血を語る上で欠かせないベイル=グラナードの言葉がある。


「エトニアが流した血は、同じ血をもって償わせる」


 そして、それから10日経たずして、両国は激突した。

 たった一人の幼子の血が、数万を超える血を生み出す。

 開戦当初、グラナードの軍が圧倒的優勢であった。

 グラナードが誇る「魔法使いの軍勢」中でも「グリム」と呼ばれる老年の魔法使いはグラナードはおろか、ヴァンケ王国でも有名な稀代の魔法使いであった。

 グリムの行う魔法は他の魔法使いとは一線を画するほどの強さ。

 巨大な火の塊を放ったと思えば、氷漬けにしたり、相手の兵士を操り相打ちさせたり。その魔法の種類は数え切れないほどであった。


 ヴァンケ王国は劣勢。一時は降伏も止む無しと言われた最中。

 救世主が現れる。

 紅蓮の槍を手にした女戦士。その一撃は相手を薙ぎ払い、大地を割ったとされる。

 神の恩寵を賜りし、その女性は「戦乙女」とまで称えられ、その戦況を一気に覆した。

 拮抗する互いの戦力。この戦火は大陸全土に広がり、破滅へと向かおうとした時。


 にも両国の王が病に倒れる。


 両国の王は次第に弱っていき、どちらの王も再び立ち上がる事は無かった。

 王の継承を受け継いだのはどちらもまだ若い者同士だった。

 ヴァンケ王国は第一王子である「エドワード=ヴァンケ」そしてグラナードは「リオ=グラナード」と呼ばれる王女であった。


 この二人に関しては、ある噂があった。

 幼少の頃から知り合っている仲であり、その仲睦まじい姿を他の人間も何度も見かけており、実は恋仲の関係ではないか? という事だ。

 それを示唆するように、グラナードの王は亡くなる前は徹底抗戦をリオに伝えていた。だが、亡くなった後、リオは戦いを続ける事無く、和平の交渉をエドワードに通達。ヴァンケ王国にとってこれは渡りに船のような物。それを直ぐにエドワードは受けた。和平の内容はグラナードに分があるような恰好になったが、それは些細なものであった。


 グラナードが起こした事件、更に新女王としての初仕事の面子、兵士の不平不満を取り除くだけのギリギリの内容であった。

 まるで、さも『あらかじめ決まっていたかのような』和平はとんとん拍子で進み締結された。

 争いは終息を迎え、両国の関係は年月をかけ、取り戻しつつあった。


 深い爪痕を残し、エトニアの血と呼ばれた戦いから6年の月日が流れた。

 大陸はその傷を癒えそうになっていた時、不穏な空気が流れ始める。




 ★★



 ヴァンケ王国には客人を迎える応接室がある。

 豪華な部屋。一級品の赤い絨毯が敷かれ、テーブルに向き合う形で柔らかく、弾力に富んだソファーが置かれている。

 周囲には煌びやかな調度品が並び、壁には幾つもの絵画が飾られている。その中でも一際大きく目に付く絵画が存在していた。

 勇敢そうな顔立ちに白ひげを蓄え、その頭には豪華な宝石をちりばめたサークレットが乗っかっていた。

 そんな豪華な応接室に、似つかわしくない男がソファーに座り、足をテーブルに置いてふんぞり返っていた。



 逆立つ髪に、据わった目付きの若い男。だが、その身体は屈強であった。

 着ている黒いシャツは肌に張り付き、その頑健な筋肉が浮き上がる。それでいながら、その身は細く、無駄な筋肉をそぎ落とし凝縮した結果であった。

 その領域に達するには、並大抵の鍛え方ではないと、想像をするに容易い。

 胴回りは青い塗料で染めた胸当てをつけており、身の丈よりも長い、蒼い槍が男の手に収まっていた。

 男は天井を見上げ、吊るされているシャンデリアをけだるそうに眺めていた。

 この部屋に男が呼ばれてから長い時間が経っていた。

 苛立っているのは明らかで、時折ブツブツと文句を漏らしていた。

 それでもこの場を離れないのには訳があった。

 ギィ、と部屋の入口にある重厚な扉が開かれる。

 その音を聞くと、男の首が直ぐにそちらへと向き直る。



 扉から出てきたのは聡明そうな男であった。

 黄金色に輝く髪を優雅になびかせ、その表情は慈悲深そうに穏やかな表情。

 だが、その体は銀の甲冑で身を纏い、胸の中央部分には太陽の印が刻まれ、その中心に鳥が羽ばたく姿が記されていた。

 それは紛れもないヴァンケ王国の紋章であり、その頭には絵画の男が付けていたのと瓜二つなサークレットが乗っていた。


「やぁ、待たせてしまったねレオン」


 涼やかな声が部屋を満たす。

 ふんぞり返っていた男は、入ってきた男がそう言ったのを聞いて姿勢を正す。

 黄金色の髪をした男はソファーにまで歩いていき、ゆっくりとした動作で対面のソファーに座る。その一つ、一つの動作はとても鮮麗されていた。


「どれだけ待たせる気だエドワード。王様になったから気がデカくなったか?」


 レオンは散々待たされた為か、失礼な物言い。

 エドワードはそんなレオンの失言を許す。いや、むしろ笑っていた。

 久しい旧友との会話。王となった彼にため口をきく相手などレオンぐらいだった。


「こっちの身にもなってくれ。本来ならレオンと会うだけだったのに、色々なもめ事が次から次へとやってくるんだよ」

「俺は直ぐに終わるって聞いたから来たんだぞ」

「とりあえず話だけだからね。どうしても、君に頼みたい事……いや、君にしか頼めない事があるんだ」


 エドワードの顔から笑顔が消え、表情が硬くなる。

 それ相応の話、と理解したレオンも、その目が細くなる。


「まず、エトニアの血……あの時は君には世話に――」

「やめろ。あの時この国を助けたのは俺じゃない、師匠だ」

「分かっている。それでも、礼を言いたい。実は、今からの話はエトニアの血が関連している」

「なんだと? 6年前の出来事だぞ」

「そうだ。実はあれ以降、両国で内密に調査を続けていた」

「調査? 何の?」

「あの戦争が起こるキッカケとなった暗殺事件だ。私は当初より、弟がしたとは思っていなかった。誘拐事件を起こした三男はとてもやさしい子で、誰よりも平和を愛していた。だから、あんなことを起こせばどうなるか、分からない子では無かった筈」

「気の迷い……ではなかったんだな?」


 エドワードはしっかりと大きく縦に頷く。


「調査の結果、弟は何らかの強い暗示を掛けられていた。それは処罰で幽閉された時に分かっており、その暗示をかけた人物の特定をしていた」

「分かったのか?」

「ああ。暗示をかけた人物はなんと「グリム」だった。グラナードの稀代の魔法使いだ」

「グリム……まぁ、アイツなら全然やれるな」

「グリムの目的は両国の滅亡。奴はグラナードの王に対して進言した時、その地位をはく奪され、理不尽ともいえる軟禁もされた事がある。その時から強い不満と怒りを募らせていたらしく、また、グリムは一度このヴァンケ王国の魔法使いだったことも判明している」

「あの魔法使いがヴァンケの?」

「ただ、ヴァンケ王国の魔法使いたちは、その才能を認めなかった。だから、彼は認めてもらえるグラナードに移住した」

「ふーん、なるほどねぇ。良く分かったなエドワード」

「それもこれも、私の言葉を信じてくれたリオのおかげだよ」

「流石は、恋人ってところか」


 途端にエドワードの表情が崩れる。

 その頬に紅が差し、その視線はキョロキョロと落ち着きが無くなる。


「れ、レオン! 彼女はグラナードの女王だ。そんなことを……」

「さっさと結婚しろよ。向こうだって待ってるぞ」


 のろけ話をレオンが聞かされるのは今回が初めてではない。

 もう二人の関係は火を見るより明らかな状態だというのに、それを見せつけられるレオンとしては苛立ちが募るばかり。

 ごほん、と気を取り直すエドワード。


「リオのおかげで、グリムの側近からその情報を聞きだせた。そして、戦争を引き起こした罪として、内密に処罰される予定……だったのが2年前の話だ」

「……なんだと?」

「奴は処罰される前に行方をくらまし、消息不明となっていた。だが、ここ数日の間でその所在が判明した。それは我がヴァンケ領だった」


 話の途中で、何故レオンは自分が呼ばれたのか薄々気づき始めていた。

 だが、それでも彼は話を最後まで聞くことにした。


「騎士団は?」

「もちろん、向かわせた。だが、あと一歩の所で敵の強力な兵士に一網打尽にされてしまった」

「強力な兵士? 魔法じゃないのか?」

「ああ。生き延びた兵士の話では、赤子の手をひねられるように一瞬で壊滅したそうだ」

「ドグラ騎士団長は?」


 ドグラ騎士団長は剣の達人であり、レオンも何度か手合わせさせてもらったことがある。

 頬の辺りまで髭を生やした無粋な男であり、豪胆の持ち主。あのエトニアの血を生き延びた歴戦の猛者であった。

 最近、平和と歳で腕は落ちたものの、それでも他の者よりは一つ頭がぬけた強さだった。


「ダメだった。彼は他の隊員よりも深い傷を負っており、流石に騎士団長を務めるのは今後むりかもしれないほどだ」

「あのドグラ騎士団長がか?」

「もう、彼より強いものとなれば、私の中で思い当たる人間は一人しかいない」


 真っすぐその瞳はレオンを見ていた。

 その強さを知っているのは数少ない人間。

 ヴァンケ王国の王であるエドワードの頼み。そして、ドグラ騎士団長の仇。断る理由は何もない。何もない、はずなのだが、二つ返事で快諾とはいかなかった。

 それはレオンの中で渦巻く疑念。


「なぁ、エドワード。一つ、聞きたい」

「何だい?」

「その強力な兵士と言うのは、男か? 女か?」

「……それは言えない」


 疑念は、確信に変わった。

 何てことは無い、この依頼は元より、レオンが依頼だったのだ。

 そして、旧友のいらぬ気遣いに、レオンは舌打ちをする。


「全ては現地で見てこい? そう、言いたいんだな?」

「すまない、レオン。本当に」


 王様であるエドワードが頭を下げた。

 この先に待ち受ける困難に対し、エドワードはそれだけの事をする意味があった。

 それを見たレオンは観念し、息を吐く。


「依頼は受ける。場所は?」

「ヴァンケ領にある『嘆きの森』だ」

「嘆きの森か……準備をして、明後日には向かう。馬は手配してくれ」

「分かった、他に何か必要なら伝えて欲しい。私から兵士には通達しておく」

「じゃあ、もう一つ頼む」

「何だい? 言ってみてくれ」

「お前とリオの結婚報告だ。早めに手配してくれよ」

「れ……レオン! それはだな!」


 王様とは思えぬほど子供のように怒るエドワードに、ハハハ、と笑いながら部屋を後にする。

 だが、部屋から出た後、レオンの表情は沈痛な面持ちとなっていた。



 ★



 ヴァンケの城を抜け、城下町へとやってくるレオン。

 城下町は6年前の傷跡がすっかり消えたかのように、活気に溢れていた。

 石が敷き詰められた道を挟み、数多くの露天商が店頭に様々な商品を並べていた。行き交う民の顔には笑顔が戻り、以前のような苦悶の表情は影も形も無かった。

 長い時間待たされた為、陽は少し落ちてうっすら暗がりが広がっていた。

 石を敷き詰めた主要な道を外れ、レオンは小路に入る。そこには小さいながらも、立派な一軒家が存在していた。

 その家へとレオンは入っていく。

 レオンは一人暮らしをしている。だが、中に入ると、食欲を刺激する香りが家に充満していた。

 そこには台所で調理をする女性の姿があった。

 同世代ぐらいの若い女性。頭巾で髪を覆っているが、長い黒髪は背中まで垂れている。目鼻の整った顔立ちは、とても美しい。黒のワンピースの上からエプロンを着て目の前で火を入れた鍋を見ていた。


「アイリーン?」


 レオンが声をかけると、アイリーンと呼ばれた女性は一度びくっと体を震わせる。鍋から目を離し、今入ってきたレオンへと向き直る。あ、その、と、口ごもりながら俯いてしまうアイリーン。


「ご、ごめん。仕事が早く終わったから、その……」


 消え入りそうな声で喋るアイリーン。その理由は勝手な押しかけで夕飯を作っていた為である。頼んでも無いのに、自分の好意だけで行った事。本当は作ったら直ぐに立ち去る予定であったが、レオンの帰りがこんなにも早いのは想定外だった。


「迷惑、だったよね……」

「この匂いは……シチューか?」


 鼻をすんすん、と動かすレオン。うん、と小さく頷くアイリーン。


「アイリーンのシチューは絶品だからな。早い所頼むぜ」


 粗雑な木の椅子にドカッと腰を掛けるレオン。素っ気ない誉め言葉ではあったが、アイリーンはその言葉に嬉しさを感じずにはいられなかった。

 はい! と再び鍋に向き直るアイリーン。


 それから時間が経ち、バスケットに入った大量のパンと、アイリーンのシチューが食卓に並ぶ。二人は向き合う形で夕飯を共にしていた。

 勢いよく夕飯を口に掻きこむレオン。それに対してアイリーンはその食欲旺盛なレオンを微笑ましく見ているだけであった。


 アイリーンとレオンが出会ったのは4年前。

 父と母を戦争で亡くし、姉は行方不明。両親と親交があった人に拾われ、何とか生きていたが、拾ってくれた人が他界。働けるだけの年齢にはなっていたが、女一人で働いて得る金子の額などたかが知れていた。

 それでも働き、その日の飢えを凌ぎながら生きていた中、夜道で暴漢に襲われる。

 押し倒され、首を絞められて命の危機を感じた時、救ってくれたのがレオンだ。

 暴漢を持っていた槍を使って一瞬で叩きのめす。それだけではなく、それ以降アイリーンが困っていた時には何かと支えてくれる事になる。

 その理由をアイリーンは知りたかったが、レオンは答えない。

 だが、日増しにアイリーンの気持ちは強くなり、密かに思いを寄せるようになっていた。

 奥手な彼女はそれを口に出せず、微妙な関係を続けていた。


「アイリーン、少し良いか?」


 目の前にあるバスケットからパンを取り出し、千切りながら口に入れているレオンからの声。


「何? レオン」

「実は明後日、俺は嘆きの森に行かなければならない」

「嘆きの森……大丈夫なの?」

「ああ。ただ、アイリーンに頼みがある。聞いてくれるか?」


 その言葉にアイリーンは耳を疑った。

 なぜなら、レオンが頼み事をしてくるなど、今まで一度として無かったからだ。


「何? 私でよければ」

「その時に、俺と一緒についてきて欲しい」

「私が、レオンと一緒に?」


 口元に手を当て驚くアイリーン。

 アイリーンはか弱い女性。家事はこなせるが、レオンのように腕が立つ事は無い。嘆きの森にはモンスターが住み着いている。それらを考慮すれば、自分がレオンの足手まといになるのは明白。

 アイリーンは返事を躊躇う。


「ダメか?」

「ダメ、と言うわけじゃないんだけど……レオンの足を引っ張ると思うわ」

「構わない。元より、それは承知の上だ。頼む、アイリーン。お前は必ず俺が守って見せる、どんなことがあろうと、決してお前を危険に晒したりはしない!」


 純粋に真っすぐなレオンの瞳がアイリーンを射った。

 レオンのその言葉はアイリーンにとって、堅牢な城壁や、万を超える軍勢が霞んで見えるほど、信頼できて頼りになるものであった。

 それだけの言葉を聞いたアイリーンに、迷いはなくなった。


「はい、わかりました。レオンがそれだけ言うなら、私は貴方を信じます」

「……ありがとう、アイリーン」





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