第19話 情けは人のためならず

 いや、思った以上の成果があった。何の事かと言えば試験勉強会の事だ。

 リュネットもナージャも、あとおまけでリリアとナタリアも勉強会の成果が出たのか成績はなかなかいい感じだった。少なくとも4人自身の捉え方では。

 でも私の『思った以上の成果』はこの事ではない。


「期末試験の成績がよくなってお父様に褒められましたの。今回は頑張ったのかいと聞かれましたので、アンフィ―サ様と勉強会をした事をお話し致しました。そうしたら夏休み、ちょうどいい機会だから是非にと領地へお誘いしたらどうですかと」


 リリアからこんなお誘いを受けた。正直なかなか魅力的なお誘いだ。

 実際夏休みはどうしようかと思っていたのだ。放っておくとエンリコ殿下と近づけるよう頑張れと父方面からせっつかれる。私としてはこれ以上余計なフラグは立てたくないのに。そういう意味でもちょうどいいお誘いだ。リリアの処は伯爵家だから父もオルネットも文句は言わないだろう。


 ただ懸念というかお願いしたい事項がひとつある。

「リュネットやナージャも宜しければ御一緒して宜しいでしょうか。出来れば夏休みのうちに一緒にもう少し魔力や体力を鍛えておきたいのですわ」


「勿論ですわ。あとナタリアを併せて4人をお誘いするつもりです。父の方にもそう伝えました。場所は領地内のユダニにある別荘ですわ。小さいですが迷宮ダンジョンもありますし、出来ればそこで魔法の訓練もしていただければと思いまして」


 おお、何という事だ。最高じゃないか。

 なお男子の方から僕は僕はという視線を感じるのだが無視である。これ以上フラグを立ててたまるか。君は王家の一員として正しく過ごしてくれ賜え。


「それでしたら喜んでお受け致しますわ。皆さんもどうでしょうか?」

 勿論この皆さんとはリュネット、ナージャ、ナタリアの3人だ。だから君は含んでいないからこっちを見ないでくれ殿下。何度も言わせるな。実際には言っていないけれど。恐れ多いから。


「私が行ってもいいのかにゃ。獣人は苦手なところも多いと聞いているのにゃ」

「領地のミタニは山間部でイズモーも遠くありません。イズモー連邦のイイシ国からは商隊もよく来ておりますし、魔獣討伐でいらっしゃる方もいます。ですから父も領民も獣人の方には慣れておりますわ」


 うんうんいいぞいいぞ。条件最高だ。


「リュネットとナタリアはどうでしょうか?」

「いいのかな、お邪魔して」

「勿論ですわ」

「それでは私もお願いします」

「こちらこそ。それでは皆さんのご実家へも招待状を出させていただきますね」

「宜しくお願いしますわ」


 よしよし、ついにロリまで含めた女子だけの完全編成が完成だ。あ、でも向こうには大風呂はあるのだろうか。無いと魅力が半減する。でも尋ねる訳にもいかない。


「でも迷宮ダンジョンへ行くなら装備はどうすればいいでしょうか?」

「その辺は戦闘スタイルに併せて考えた方がいいですわ。何でしたら一度、この近くのクーザニ迷宮ダンジョンへ行ってみません? あそこの低層階なら学校の装備で充分ですし、迷宮ダンジョンがどのようなものか参考になると思いますわ」


「何か楽しそうな話をしているな」

 おっと、ついに堪えきれずエンリコ殿下が乱入だ。あまり放っておくのも悪いから少しは構ってやることにしよう。


「今度はこの5人でお試し迷宮ダンジョンへ行こうと思いますの。殿下もいかがでしょうか?」

 これくらいは誘ってやらないとすねそうだ。


「いいな。なら今日の放課後にでも冒険者証を取って行こうではないか」

 殿下、思い切り前のめりだ。でもいいだろう。それくらいは面倒見てやろう。他の御令嬢も喜ぶと思うし。


「でも冒険者ギルドは少々怖い場所にあるので不安ですわ」

「商業街に出張所がありますから問題無いよ。私達もそこで登録したし」

 経験者のリュネットがここでサポートしてくれる。


「そうなのにゃ。それにクーザニ迷宮ダンジョンなら殿下と私がいれば余裕なのにゃ。2時間もあれば第5階層ボスまで一気に行けるのにゃ」

 いいぞナージャ、殿下もある程度持ち上げないとな。


「全く経験が無い私達が一緒でもそんな事が出来るのでしょうか」

「問題ないにゃ。全員いれば余裕なのにゃ」

 

 実際その通りだと私も思う。

 もともとクーザニ迷宮ダンジョンは初心者用の迷宮ダンジョン

 そして私とリュネット、殿下は魔法については既に初心者ではなく中級者かそれ以上のレベルに達している。ナージャと殿下の剣術も同様だ。小さい頃から訓練してて下地が出来ていたところに迷宮ダンジョンで実戦を得た事で一気に能力が開花したのだろう。


 結果、殿下とナージャの2人攻撃役アタッカーだけでも充分以上に強力。それなのにリュネットの魔法のおかげで殿下と私が攻撃魔法使い放題。この編成では攻撃力が過大過ぎてクーザニ迷宮ダンジョンのほとんどの魔物が瞬殺コースになる。


 第10階層のボスはストーンゴーレム、第15階層のボスはスケルトンナイトで決して弱い魔物ではない。ストーンゴーレムは魔法も剣も効きにくいしスケルトンナイトは弱点以外を攻撃してもすぐ復活するし応援も呼ぶという強敵だ。


 でもストーンゴーレムは殿下の極炎熱魔法の後、私の極寒冷魔法をかけて弱体化したところをナージャが攻撃してあっさり。スケルトンナイトに至ってはリュネットの聖属性破邪魔法一発でダウンだ。そこまでの雑魚は私が出るまでもなく殿下とナージャで瞬殺。たまにアンデッドが出てきてもリュネットの聖魔法で即終了だ。


 クーザニ迷宮ダンジョンで一般が攻略出来るのは第20階層まで。そこから下は騎士団の訓練区域だ。そして迷宮ダンジョン維持の為第20階層以降のボスは討伐を禁止されている。

 だから私達は事実上クーザニ迷宮ダンジョンでこれ以上攻略する場所はない。それでもレベル上げや魔法の練習には近くにこれ以上いい場所はないから通うのだろうけれども。実はその辺がテスト勉強に専念できた理由のひとつでもあったりする。


「それでしたら早速今日の放課後、行ってみましょうか」

「そうですね。少し怖いけれど楽しみです」

 殿下がまさにハーレム状態になってしまうが勘弁してやろう。実際迷宮ダンジョンではかなり役に立つし。2人程守る対象が増えれば余計に。

 それに迷宮ダンジョンが終わったら私のハーレム時間、つまりお風呂が待っている。試験勉強期間中我慢した甲斐があった。今日は全員楽しませて貰う。絶対だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る