第20話 目指せ山頂

儀式復活の当日

「いよいよでチュね」

ああそうだな。短い期間だったけどやれるだけのことはやったと思うし

修行のほうはバッチリだ。

でも 心配なのがセレネの噂だった。

「変わってしまったらしいゲロね」

セレネは 元々元気なところはあったけどよく言えばさらに前向きな性格に

悪く言えば無鉄砲な性格になってしまったらしい。

ジェフラが夜中に泣きながら俺のところに来たのは驚いた。

「私が悪いの!セレネを助けて・・」なんて言ってたけど、賢者スデーモのもとで無茶な修行をしていたのだという。


恐らく呪術とは違う方法で、セレネは戦士マクアたちに心のどこかをゆがめられてしまっているのは間違いない。

でも ジェフラから聞いた情報では、セレネが水浴びをしていたときはネックレスは外していたらしいから

ネックレスを外せば解決するという問題ではなさそうだし

胸とお尻が大きいこととブラジャーを装備していない意外には特別おかしなところはなかったらしい。


こうなったら戦士マクアを倒して直接聞いてみるしかないな。

俺はこぶしを握った。

「やるぞ!」

すると力がみなぎっているのがわかる。

サウレに修行を付けてもらった今なら以前のようにやられることはないし

何でもできそうな気がする。


「村長様よ」

「パチパチパチ」

村長がジャンバル様のあった像の前に現れて レインボーアホー鳥の卵を持ち帰る祭事の

挨拶を始めた。

「それではこれより 古くから伝わる村の儀式を再び再開しようと思う!!」


「おーー!!」「うぉーー!」

「パチパチパチ」


目指すははるか遠くにそびえ立つお椀を逆さまにしたような山、チャワイ山の頂だ。

あの山には毎年のようにレインボーアホー鳥が卵を産んで育てている。

そこで勇者たちにはあの山に登り卵を持ち帰ってもらおうと思う。

そして 今回の儀式ではジェフラとセレネを先頭にどちらが先に帰ってくるかを競ってもらうので

まずは あの山まではトカゲとウサギに乗って腕を競争してもらうぞ。

そこからは切り立った山を登ってもらうが、ガケもあるし洞窟も無数にあり小人も出るやもしれん。

くれぐれも気を付けるのだ。そしてジェフラとセレネに続く戦士たちは確りと二人を守ってやってくれ」


「おーー!!」「うぉーー!」

「パチパチパチ」


俺たちはジャンバルの像が置かれていた台座に集まった。

勇者たちはこの石像からスタートして本来ならジャンバル様に卵を捧げる

というお祭りらしい。

「人が集まると 気温が高いわけじゃないのに熱いゲロな」

やる気というか熱気に包まれていた。


「セレネ!私が勝ったら私の言うことを一つだけ聞いてほしいの!帰って来てセレネお願い」

「もうやめましょうジェブラ。私はあなたに勝ちたいのよ!今のあなたじゃないわ。

あなたに勝ちたいの!! もう話すことなんてないわ。さよなら」


二人の勇者が挨拶を交わすと 村人たちは二山に二分された。

「二分でチュか?」

いいや ほとんどの村人たちがジェフラのほうに集まった。

ジェフラ・俺・門番のガネルと村人たち多数。

一方 セレネ・ヨーゼン・診療所のスニーク・戦士マクアと村人少数だ。

なんだか俺たちのほうは野次馬が多い気がするけど小人が出ても大丈夫なのだろうか、心配になってきた。


「それでは ワシがスタートの合図をしてやろう。爆裂系魔法 アークシュ、その名はコガル!!」

空高く打ち上げられた光の玉は 頭上に打ち上げられ 爆発した。

しかし 花火のような大きな爆発が鳴り響き爆発したのでトカゲとウサギは

一斉に逃げてしまった。逃げてしまったというより、俺のところへ みんな逃げてきた。


「オーレンス 何をやったの?」

ジェフラにそんなことを言われてもわからない。

俺よりも大きなウサギやトカゲが俺の服の中に隠れようと頭をスリスリしてきた。

「あはなは くすぐったい。 お前みたいな大きな頭じゃ 

服の中には入れないだろって・・あははは やめてくれ」


門番のガネルが「これはチャンスだ! ウサギに乗って進むんだ」と叫んだ。

俺たちは数匹のウサギの頭をなでるとウサギは落ち着きを取り戻したようになったのでウサギに乗って走り出した。

「もふもふ フカフカじゃないか」

ウサギはフカフカで乗っているうちに眠ってしまわないか

心配な乗り心地だけどスピードは結構出ているようで快調だ。

トカゲとウサギの取り合いになるかと思ったけど

俺たちはウサギを確保してスタートを切ることが出来た。


「後ろを見るでチュ!」

「トカゲも俺たちに付いてきているゲロゲロ」

セレネ達に用意されたトカゲたちまでが俺たちに付いてきているようだ。

もう俺たち勝っちゃったんじゃないか?


ヨーゼンが両方の手のひらを持ち上げて「お手上げ」ってポーズをしながら

「オーレンスは・・あれは獣使いだな。どうするセレネ?」と問いかけた。

「いいわ。私の修行のせいかを見せてあげるわ。ウオーターバルーン!!!」

セレネは両手に一つづつの大きな水のバルーンを出現させた。


「やったな セレネ。でも二つじゃ二人しか乗れないぜ。誰が乗るんだ?」

一つのウォーターバルーンが精いっぱいだったセレネが同時に二つも

バルーンを作れるようになっていた。

自信に溢れた顔のセレネは 力のある声で

「大丈夫よ、考えがあるの、ふふふ。ヨーゼン。あなた板になって!」といった。

ヨーゼンは何を言われたのかわからなかったけど 

「え?何言ってるんだセレネ?」と聞き返すと

セレネはウオーターバルーンを二つくっつけて、

さらにバルーンの上にヨーゼンが板のように乗せられた。

そしてさらにヨーゼンの上にセレネたちが乗ったのだった。


「ヨーゼン、明日死ぬと思って!そうすれば板として 死ぬまで頑張れるはずよ!!

いくわよ!

賢者様との修行の成果を見せてやるわ! ブシャーズッドドドドン!!!!」

「すごいスピードです!大男の使い方が間違えている気がするが!

ヨーゼンは大丈夫か?うわぁぁぁぁ」


「ブルブルブルブル・・ ときどき水で息が・・できねぇ。明日というか今死にそうだぜ」

ヨーゼンのかいもあってオーレンスたちにどんどん追いついていった。

「まだまだよ! 山の中まで突っ込むわよ!」

「ウソだぁろぉぉぉおぉ!!」

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