第18話 気が付けば ともだち
セレネは 涙をボロボロと流しながら飛び出して行ってしまった。
セレネを追いかけてサウレが出てきたが
「おや オーレンスさんじゃないですか?セレネに会いに来てくれたのですか?
ですが 見ての通りです。
育て方を間違えてしまったのかもしれません・・・・
もう私はわからなくなってしまいました。」と落胆した顔で崩れて腕を地面についてしまった。
「大丈夫です。俺が セレネを連れ戻します。行ってきます。サウレさん!」
俺は セレネを追いかけた。
オーレンスさん・・確り追いかけてあげてやって下さい・・・バカな娘ですがお願いします。
俺は走った。
「追いかけてどうするでチュか?」
「まだ間に合うかもしれないゲロな」
「何を ツタエル?」
今のセレネは正気じゃないかもしれないけど
でも 俺の気持ちを伝えてみるよ。
カッコよくなくていいんだ。
燃え上がる恋心とは違うけど
でもセレネは俺にとって大切な人なんだ。だからほおって置けない。
コガネムシが飛び出して村長の邸宅の方向へ道案内をしてくれた。
「コガネムシだけじゃないでチュよ。オーレンスが本気を出してくれて嬉しいでチュ
みんな、オーレンスについていくでチュよ」
「フラれてコイ(恋) ガハハ」
だから 違うってばぁ~。今は不純な気持ちは一切ないからね
村長の邸宅に入ってしまう前に追いつけるだろうか?
でも 走っていくと 待っていたかのように戦士マクアが立っていた。
「よう オーレンス。セレネに会いに来たんだろ?
おいおい驚くなよ!がははは。村娘が大人気だな。
なんであの村娘は人気があるんだ?
魔女になり損ねた、ただの村娘だぞ。
それでだ?セレネはオレのところへきたわけだが、お前は何をしに来た?
というか無様な顔だな ククククク
オレも男だ みなまで言うな。
お前はセレネを取り返しに来たのだろう?
出なければ二度も挑むはずがない。
いいぞ。オレは優しい男だ。オレに勝てたら セレネを返してやるぜ。
さあ 死ぬ気でかかってこい!!」
戦いは始まったけど武器は使わず素手同士の殴り合いになったというか
剣を抜く様子はなかったので殴り合いになった。
だけどボコボコに殴られてしまいしまいには
「弱いな~お前は、、でもわかってんだよ!違うだろ?本気でやれよ」
と戦士マクアが剣を抜いた。
フロン頼む
今度は フロンが泣きながら飛び出してベロを伸ばして攻撃したけど、
長ネギを刻むように細かく切られてしまいフロンも真っ二つにされてしまった。
そしてヘラヘラと嬉しそうに笑っている。
「オーレンスお前!ゴーレム使いだったのか?なるほどな。
オノを持った小人なんているはずがないからな。予想とは違っていたが、スッキリしたぜ」
と剣先を俺に向けて突進してきたときに 戦士マクアにこん棒が投げつけられた。
「オッと! 危なかったぜ!
また 小人か?がははは。
今度は くちた小人を見せればオレが怯むと思ったのだろう?
だがな。相手が悪いぞ。 見当違いもいいところだ。
オレはくちた小人では動揺したりしない。なぜかは言えぬが残念だったな」
コルビンか?助けてくれたんだ。
村の焚き付け用の小人の死骸に入り込んでこん棒を投げてくれたんだ。
でも 死んだ小人に潜ったせいでそのまま崩れるように壊れてしまった。
崩れてしまう体に入るなんて辛かっただろ・・ごめんよぉ ごめん。。。
コルビンはいなくなって元の壊れた小人に戻ってしまったけど
その顔は俺を悲しげに見つめていた・・。
「オーレンス。もう無理でチュ チャポンするから息をいっぱいに吸うでチュよ
どうしたでチュか?オーレンス。みんな無事でチュ 生き残ればまたチャンスはあるでチュ」
「切り札で作ったゴーレムまで倒されてゴーレム切れか?やっぱりお前は 情けない男だ。
オレが立ちはだからなくてもお前じゃ、セレネは連れ返せなかったんじゃないか?
そうだ、お前じゃ無理だな。あのネックレスはな・・・おっと
そんなにいい顔するなよ!今スッキリさせてやるぜ!!」
そんなとき「モー モー メェー メェーメェー」と声がした。
「サフォークブレード!!」という声と共に
戦士マクアの剣は大きな鉄の塊のような大剣にぶつかってはじき返された。
「おーい どこへ行くんだ。羊たちと思ったら、よお、オーレンスじゃないか?
それに戦士マクア様。俺の恩人にあなたは何をしているのですか?」
とぼけたセリフでヨーゼンと羊たちが俺のところにやってきた。
「お前!その頭の角は半獣か? ちぇ! 邪魔が入ったな。だが オレの用事はすんだ。
オーレンスよ。いつでも勝負は受けてやるが、、よく分かっただろ?
セレネはオレたちのものだ諦めろ。さらばだ」といって邸宅のほうへ行ってしまった。
その後はヨーゼンに助けられてヤギのミルクを貰った。
少し暖かいミルクを飲むとなぜか気持ちが落ち着いて 涙が止まらなくなった。
「お前はこの角を見ても驚かないんだな。
この角は原因はわからないが興奮すると出てきてしまうんだ。
それより 俺でよかったら相談にのるぜ
お前は一人じゃないんだ。俺に話してくれ」
俺はヨーゼンに「死出のネックレス」の事を話した。。
「そうか そうか。俺はその時は羊を連れて村から出ていたが
帰って来てからセレネの話を聞いておかしいと思ったんだ。
それにネックレスの話は俺が思っていた以上だ。
おそらくサウレ様に相談されたほうがいいだろう。
母親だからではないぞ。
魔法を作るために魔女は世界中の不思議な話を集めているんだ。
だから きっと力になってくれるはずだ」といって、ヨーゼンは羊の世話をするために帰っていった。
ありがとう。それにミルクおいしかったぞ。
俺一人でセレネの家には行きづらかったけど
ニーマンたちが励ましてくれた。
すると サウレがドアの前に立ってセレネの帰りを待っていた。
「オーレンスさん。。その姿を見ればわかります。元をただせばうちのバカ娘のせいなんです
さあ 中に入ってください。傷の手当てをしましょう」といって中へ入れてくれた。
部屋の中は ラベンダーなのか、花の匂いや色々な匂いが混ざっていた。
俺は 傷の手当をしてもらいながらネックレスの事についてサウレに話した。
「黒い霧ですか?私には見えませんでしたが詳しい話は追々聞いていくとして
まずはネックレスです。
もしネックレスに効果があったとしても本人がよほど望んだりしない限りは
人格のすべてを変えることはできません。
まあ そうやって人格を変えてしまうといつかしっぺ返しを受けてしまうのですが
セレネはまだ説得ができるはずですよ。
だからと言って母親の私が言ったのではセレネは戻ってこないでしょう。
そこでです!! オーレンスさんは私の修行を受けてみるつもりはありませんか?」
戦士マクアを倒せるくらい強くなって俺が説得するってことか?
ニーマン使いは魔女の始祖だってセレネがいってたな。
修行してもらえるならそれは願ったりかなったりだけど、
それよりサウレはセレネのお母さんなんだろ?
修行なんかしている場合じゃないんじゃないか?
戦士マクアとセレネが一緒に暮らすのはまずいだろう?
「大丈夫でチュよ、オーレンス。セレネが暮らすのは村長の邸宅でチュ。」
そうか、賢者スデーモたちって村長の家で暮らしてたんだっけな。
むしろ セレネとジェブラは一つ屋根の下で暮らすことになるわけだ。
「儀式に日に私は賢者スデーモと魔法で語り合おうと思っています。
恐らく私が勝ちますが、セレネを人質にされないように
オーレンスさんには儀式の途中でセレネを戦士マクアから取り返してほしいのです。
取り返した後のセレネはオーレンスさんが好きにしていいですよ。
母親の私が認めます。どうでしょうか?」
セレネもそうだけど、オーレンスさんもわかりやすい、きっと根の優しい人なのでしょう。。ふふふ
・・次の日・・・
サウレは首をゆっくりと振りながら魔女の力で年を取らなくなった幼い顔で
「ふざけているのかと思いましたが、まさか 井戸の魔道具も使えないとは・・」と飽きれていた。
だけど「魔道具は魔法が使えなくても魔力さえあれば使えるので
オーレンスさんは魔力の事を勘違いしているのかもしれません」と
ひらめいたように手を叩いた。
そしてイヤリングを触って「ファイアボール」とサウレは唱えると
手のひらサイズの小さな炎が現れた。
オーレンスさんはこのファイアボールは何だと思いますか?
と聞いてきたけど 答えられないでいると
「ではいきます~落とさないでくださいね~」といってボールでも放り投げるように
ゆっくりと 投げてきた。
何だと思いますかと言われても炎の玉だろ?落としたらダメなのか?
火の玉なのにもかかわらず、放り投げられたファイアボールを
馬鹿正直にキャッチしてしまったが「アッち ああ 熱い熱い!」と手のひらで
お手玉のように弾ませて消えるまで我慢してしまった。
地面には落とさなかったけど手のひらがヒリヒリする・・。
「ひどい事する ゲロ。シクシク」
サウレは 手のひらをフーフーとしている俺を見て 微笑みながら問いかけてきた。
「ファイアボール」は魔法使いや賢者が使う魔法です。
私には使えない魔法なのですがイヤリングの記憶を使って作ってみました。それでどうですか?
ファイアボールをキャッチしてみた感じは?
とそんなことを聞かれても熱かったとしか言いようがない。
「熱かったですか?ふふふ そうですね。
ですがオーレンスさん、どうしてオーレンスさんは実態のない炎を触ることが出来たのですか?
魔法とは魔力を自然界にあるものに似せて実体化するために
熱に加えてさらに重さも硬さが加えているのです。
実は魔女の魔法もそういう点では共通していて同じものなのですよ。
難しい話でしたか?」と言われた。
でも 地球人の俺には逆に異世界の魔法が腑に落ちた。
俺は再び井戸の魔道具に手を触れるとイメージを少し変えてみた。
「ブッシャ!!ドドドドドドドドド」
「水が出たゲロ やったゲロ 嬉しいゲロ 涙が・・ぶっシャー!!」
魔道具の先にある筒から壊れてしまいそうなくらいの水が噴き出した。
サウレは驚いたように目を見開いていたけど
「さすがだぜ。あ・・・、初めてとは思えませんね。
すごい量ですね。すごーい。オーレンスさん」
と言いながら大きなイヤリングをさすっていた。
・・・・・
邸宅では朝を迎えていた。セレネは単に家出をするという理由では泊めてもらえず
賢者スデーモの元で修行を付けてもらうという理由で邸宅に泊まれるようになった。
もちろん ジェフラの部屋の隣の部屋で過ごすことになる。
「あら おはようセレネ」
「おはよう ジェフラ。あ、あの・・ 泊めてくれたことだけはお礼を言うわ」
「いいのよ。それより・・賢者さまとの修行は止めなさいよ。
あなたの顔、何かおかしいわよ!
ねえ、私の事が嫌いなことはわかってる。でもあえて聞くわ。私の事が嫌いになっちゃったの??」
「な~にそれ?ふふふ。それに相変わらず 口が悪いわね。それも作戦かしら??
心配してくれてありがとう。でも勝負は私たちが勝つから!
さあ 顔を洗ったら早く朝食に行かないとね。
賢者スデーモ様の特訓でお腹がペコペコだし、私たちは明日はどうなるのかわからないのよ」
「違うの! 待ってよ。セレネ! セレネってばぁ~~~」
どこへ行っちゃうのよ・・私のライバル・・・
・・・・・
俺はサウレの召喚する炎の動物たちについて聞いてみた。
「強い魔獣と契約をしたり物語に眠る生き物たちの力を借りるのが魔女の魔法なのです。私は後者のほうです」と言っていたけどゴーレムを使う戦術などの話が フロンと重なるところがいくつもあって興味深かった。
でも ついつい熱心に聞いてしまったばかりに
「あら オーレンスさん。私に隠していることがありますね。
あなたもゴーレム使えますよね?」と気づかれてしまった。
「女の堪は怖いゲロ」
「オーレンスはサウレの尋問にいくつも引っかかってたでチュよ。
けど魔女の尋問じゃ 逃げるのは無理でチュね」
「サウレハ。オーレンスはゴーレム使いだと思ってイル」
仕方がないので石像のフロンを召喚してみた。
するとサウレは「あら可愛いカエル。 ストーンゴーレムですか?
初歩的なゴーレムですがストーン系はかなり使えますよ。
ふふふ 面白くなってきました。それでは手合わせしてみましょう。
私が勝ったら魔法が使えないフリをしていた理由を教えてくださいね」
サウレはキツネを一体召喚した。
だけど フロンは石なのでベロを伸ばして一撃でキツネを消してしまった。
「やはり 石と炎では相性が悪いですね。でも あなたの周りを見てください」とニッコリと微笑むと
俺の周囲の地面には無数の文字が刻まれていた。
賢者スデーモと戦っていたときもそうだったけど一体いつ書いたんだ?
「では 召喚してみましょう~ そーれ!」
サウレは杖の先を燃やすとその炎を地面にこすりつけた。
すると 炎の動物たちがスックスックと生まれ始めた。
「がんばるゲロ!! ベローチェ! ベローチェ!」
フロンは 賢者スデーモとの戦いを見ていたので
召喚される順番にベロを伸ばして炎の動物をかき消していく、
しかし サウレの表情は笑顔のままこちらを見ていた。
「ゴーレムには 欠点が一つあります。それは術者が届けられる願いの数が決まっていると言うことです。
前回の賢者スデーモとの戦いを見ていたことは私も予想していたのですよ。
つまりそのストーンゴーレムには「召喚された炎の動物たちを倒せ」という願い事しかしていないはずなので
だから これで「お・し・ま・いです。」と燃やした杖をそのまま俺に投げつけてきた。
燃えた杖がゆっくりと飛んでくるように見えた。
そしてサウレの顔は勝利を確信していたけれど
でも ゴーレムとニーマンには決定的な違いが一つあるそれは・・
「甘い攻撃ゲロ! ベローチェ!!」
「バッキ!」
「まさか! そんなはずは・・キャー」
フロンの攻撃で杖は弾き飛ばされて サウレはそのまま杖に当たって転んでしまった。
「いてぇーな!! けど この勝負はオメェの勝だぜ!
今日からあたいとお前は ダチだかんな!」
え!どうしたんだ?
口調が変わりホホを膨らませてなんかヤンキーっぽくなった。
でも見た目が若いと 心の成長がアンバランスになるのかな?
「大丈夫ですか?サウレさん」
「ふざけんな!サウレって呼び捨てにしろよ!
だから~ あたいらは もうダチじゃねぇ~かよ!
だけどオーレンス。 お前はあたいの予想を超えていたぞ。
いったい何者なんだ?
イイヤ まて!何も言うな! 何かの使命でこの村に来たんだろ?
ダチに野暮なことはきかねぇから安心しやがれ」
そして俺は知らないうちに 友達が増えていた。
友達ってこうやって増えていくんだね。
「よかったでチュね」
「友達嬉しいゲロ ブシャー」
「ナカマ 増えタ 嬉しイ」
いやいや そもそもサウレはどうしてこうなってしまったんだ?
「あのぉ~ サウレさ・・ん サウレさぁ。元には戻るんだよね?」
「ああ、でもおめぇーが 興奮させすぎたからな。いつ戻ってくるかわかんねぇぞ」
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