第55話:ルーパス帰還
「大丈夫か、何も起こっていないか」
ルーパスは真っ青になって戻ってきた。
大魔王に指摘されて慌てて人界に戻ってきたのだった。
当然だがルーパスが僅かだと思っていた時間でさえ、三カ月も経っていた。
だがその三カ月がそれなりの仕事をやり遂げていた。
大陸にいる多くの混血魔族を捕獲して、生かさず殺さず魔力を搾り取っていた。
そしてオードリー嬢が大きな魔力を創り出していた。
「ルーパス様、ご無事のご帰還おめでとうございます。
領民一同お帰りをお待ちしておりました」
グレアムが何ともとぼけたセリフでルーパスを迎えた。
表現が何とも微妙だが、本気でルーパスに帰還を喜んでいる。
ルーパスとしては何とも言えない複雑な心境だ。
「うむ、無事に戻った。
領民云々の言葉は気になるが、何よりもオードリーの無事を確認するのが一番大切だ、話はあとで聞く」
「了解いたしました」
ルーパスは目に映る気になる風景をすべて無視した。
現実にこの場にあるのなら全てオードリー守護石が認めた事だ。
今更文句を言ってもどうしようもない。
そもそもうかつにも時間の経過を考慮していなかった自分が誰よりも悪いのだ。
またも長期間オードリーを放置してしまう事になったのだ。
オードリーの守護石がやった事に文句を言える立場ではなかった。
「お帰りなさいませ、ルーパス様」
オードリーの寝室を護る場所にフリデリカがいた。
ルーパスが貸し与えた守護石を首から下げている。
この前見た時よりも遥かに血色も肉付きもよくなっている。
僅かに身長も伸びているような気がする。
それほどの変化が現れる長期間、またしてもオードリーを放り出していたのかと思うと、ルーパスは情けなくて恥ずかしくていたたまれない気分だった。
「オードリーはどうしている」
今直ぐにもオードリーに会いたい気持ちで一杯のルーパスだったが、自分の失態を思うと直ぐに寝室に入れず、無意識にフリデリカに声をかけていた。
「ルーパス様がでていかれた三カ月前から比べますと、いく分眠りが浅くなったような気がいたします。
時々瞳が震えるようになりましたし、血色もよくなった気がいたします。
僭越ながら、眠った状態でも口からよくすり潰した果物を食べていただくようにしましたら、少し肉付きがよくなられた気がいたします。
グレアム様がお世話をしていた時にはなかった、下の方も出ております。
時期が来れば目を醒ましてくださると信じております」
ルーパスには耳覆いたくなる内容も含まれていたが、確実にオードリーの目覚めが近づいていた。
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