第45話:眠り姫
オードリーは懇々と眠り続けていた。
あまりにも辛い人生に蘇る事を拒んで眠り続けていた。
守護石はオードリーの気持ちを優先した。
今オードリーを蘇らせても幸せには成れないと判断していた。
何が作用したのか、ルーパスが創り上げた時とは比較にならない高性能だった。
だがいつまでも眠り続けさせてはいけないとも判断していた。
いつか世の中がオードリーの望む優しい世界になったら蘇らせる心算だった。
だが今のまま、深く心が傷ついたままのオードリーを蘇らせる事などどできない。
無理矢理蘇らせようとしても強く抵抗する事は目に見えていた。
ルーパスと同等かルーパスを超えるかもしれない魔力量のオードリーが激しく抵抗してしまったら、どれほどの魔力を消費するか分からない。
オードリーと守護石の魔力争いになってしまう。
下手をすれば守護石がオードリーに破壊されてしまうかもしれない。
そんなことになったらオードリーを護る存在がなくなってしまう。
そんな理由もあって守護石はオードリーを眠らせ続けていた。
だが単に眠らせ続けているわけではない。
周囲の出来事を夢という形でオードリーに見せていた。
グレアムが助けに来た事で、世の中捨てたもんじゃないと教えようとした。
そういう意味ではグレアムは救世主だった。
少々頼りない存在だが、守護石にとっては最良の存在だった。
とても善良であると同時に抜けた所もある救い主。
カッコいいだけの嘘臭い作られた勇者ではないのだ。
とても人間臭い失敗だらけの親しみやすい存在。
オードリーの夢に出させて、人間の善良さを押しつけがましくなく伝えるには最適な存在、それがグレアムだった。
だからこそ守護石はグレアムに最低限の加護や支援しか行わなかった。
変に力を貸してしまったらオードリーが信じてくれないかもしれない。
守護石はそれを恐れていたのだ。
守護石はまるで人間のような知能と感情を備えていた。
残していく幼い娘に対するルーパスの想いが反映されたのか、それとも虐められ続けたオードリーの哀しみが反映されたのか、誰にも真実は分からない。
だがその影響はとても大きかった。
怒りと憎しみの渦巻くオードリー心の中にあるわずかな人間への優しさ、残飯をくれた王宮の下働きに対する想いを反映させて、人族を滅亡から救っていた。
同じように夢で見続けたグレアムと軍馬達への感謝の想いが、グレアムと軍馬達を加護する力となっていた。
オードリーと守護石の想いが一つになった事で、今までない力がグレアムと軍馬達に与えられることになった。
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