第20話
「何この変なの」
俺の腕についている点滴の線を不思議そうに眺めながらリズが言ってくる。
リズは別の世界の人間だしな、点滴とかも知らなくて当然か。
「これを使って腕越しに体の中に薬を入れるってやつだよ…多分」
「そうなんだ、へぇ〜すご」
「というか、どうしてリズがここにいるんだ?」
元の世界に帰ってきたのなら一緒にいるのは沙月のはずなのだが、目の前にいるのは向こうの世界に住んでいるリズだ。
「それは“アレ“のせいね」
「アレ?」
「あいつ…あの黒いドラゴンが持ってたあの石」
ああ、確かにあの時何か持っていたがーー
「それが何かこの状況と関係があるのか?」
「そうね」リズが頷く。
「あれは転移石といってあの時、光を浴びた対象を一時的に別の世界に飛ばすことができるの」
「一時的…それは大体どのぐらいなんだ?」
「私も詳しいことは知らない。一週間かもしれないし一ヶ月ぐらいかもしれない…もしかしら一生このまま向こうの世界に戻れないかも…あの石の存在は知ってたけど細かい効果まではわからないわ」
「じゃあ、沙月はーー」
「別の世界に飛ばされたって可能性もあるかもね。私は気がついた時、この部屋の前にいたの、その時聞き覚えのある声がしたからこの部屋に入ったって訳、お姉様や他の人たちもこの世界にいるかもしれないけど…」
手を俺に向いてくる。
「さっきから魔法が使えないのよね、他今も使おうとしてるけど何にも出ない…だから探すにも方法がないって訳、変える方法もね」
やっぱり、魔法が使える使えないってのは世界自体を関係しているのか?ゲームとかでもあるような魔素みたいなやつが…
というかリズのやつさっき俺に魔法使うとしてなかったか?
「山下さんですね?」
俺の病室に二人の男が入ってくる。
「はい、そうですが…どちら様ですか?」
当然俺も見覚えがない人たちなので聞き返す。
「私たちは警察です」
「警察…」
「はい、目覚められたばかりで申し訳ないのですが、いくつか質問してもよろしいですか?」
「…はい」
「闇城沙月さんはご存知ですよね?」
「…彼女です」
「貴方が刺されて倒れていた部屋…そこに一緒にいたグチャグチャになった赤ん坊の死体…鑑定した結果それはあの日殺された妊婦さんの赤ん坊だと分かりました。
そしてあなたはあの部屋で闇城沙月とは二人暮らしだそうですね?
あの時、部屋にいたのは二人だけ闇城さんだけはいなかったんです…」
「え?」俺も驚き声が漏れる。
沙月がいない?あの時…沙月も死んだはず
「ちょっとさっきからなんなのあんたたちお姉様のこと聞きに来たりして」
隣に立っていたリズが警察の人たちに向いていう。
「こちらの方は?」
「ゆ、友人です。俺のお見舞い来てくれたんですよ。沙月とも仲が良かったから」
「そうですか、ご友人さんですか?」
少し疑うような素振りを見せたが、また俺に質問をしてくる。
「今、現在私たちは彼女を捜索しているのですが、どこにいるのか?ご存知ないですか?」
「いえ…さっぱり」
「そうですか…すいません、ありがとうございましたこれで失礼します」
そういうと警察の方々が病室から出ようとする。
「ちょっと待ってください!沙月はなんであんな事をーー」
警察が知っているはずはない…咄嗟に出た言葉だった…
「そ、それは…いや、すいませんがお話しすることができません」
そして警察の方々は出ていた。
濁した?ということは何か知っているのか?
「沙月…」
何故、あの人たちを殺したんだ?
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