第9話


「こっちです」

そう言って俺たちの前を歩くこの人は、Bランク冒険者のジークさんだ。

ギルドで依頼を受けた後、ザーメル森までの行き道が分からない俺たちにギルド長がこの人を紹介してくれた。

髪型はマッシュの銀髪で顔つきは整っており、theイケメンって感じの青年だった。

「けど、凄いですね!たった二人であのギルドの人たちを倒すなんて」

「ああ」と返事をする。

まぁギルドを潰したのは二人じゃなくて彼女一人だがな…俺は檻から人を出しただけだし

「ほんとは…同じ街のギルドとして僕たちがどうにかするべきだったのに…僕が無力なばっかりに…どうすることもできなくて…」手をぎゅっと握りしめ、話す声も震えていた。

「……だから、本当にありがとうございました。貴方達のおかげです」

こちらに振り返り頭を下げてくる。

「こちらこそ、ここまで道案内していただいてありがとうございます。」

「それぐらい全然大丈夫ですよ!」と彼も笑顔で言ってくれた。


「いましたね」

俺たちは森を散策し、ゴブリンを見つけた。

「数は三匹ですね…どうしますか?一人一匹ずつ倒しますか?

ゴブリンがどのぐらい強いのかは分からないが…彼女に全て任せっきりってのもだめだし…まぁ武器を使ういい機会だ…

俺は「わかった」と返事をした。

沙月も「ともくん、大丈夫?」と聞いてくる。

「ヤバそうなら…その時は頼む」

そう言うと、沙月も頷いた。

「じゃあ、行きますね!」

そう言ったと同時に俺たちは草むらから飛び出す。

ゴブリンたちは「ぎっぎぁ?!」と不意をつかれ驚いている。

そして俺は、一番近い位置にいたゴブリンに剣を振り下ろす。

だが、それをゴブリンが持っている棍棒で受け止める。

剣ではじき一度距離を取り、剣を構える。

やっぱり、使い慣れていないものを扱うのって難しいな…そんなふうに考えていると、

「ぎあぁぁ」ゴブリンが飛びかかってくる。

「っ!」俺は咄嗟に剣を振る。

グチャっと音がなり、剣が少し重くなる。

どうなったんだ…

俺が目を開けると辺りが青色に染まっている。

「これは…」

倒れているゴブリン…持っている剣につくそれを見て、それがゴブリン血だとわかった。

倒れているゴブリンは動かない…

「殺したのか…」

あの一振りでゴブリンは死んだ…

命ってこんなに一瞬で消えるものなのか…?

「やりましたね」ジークが話しかけてくる。

「…そうだな」

そうだよな…冒険者をやるんだからモンスターを殺す当たり前だよな…

俺はゴブリンの耳を剥ぎ取りながら、この世界で生きていくということを改めて感じた。

その後、俺たちはもう数匹ゴブリンを倒した。

武器をしまい、ジークが倒したゴブリンの耳を縄巻き一つにする。

「じゃあ、帰りますか」


ーーその時だった

「あれ?強力な魔力を感じてきてみれば……人間?間違いだったかな?」頭上から声がする。

見上げてみると、そこには

「女の子?」

だが、彼女の頭には大きな角が生えている。人間ではないのか?そうだな…

あれはまるでーー

「ま、魔族だ…」とジークがいう。

魔族も正解か…まぁ俺は悪魔かなって思ったんだけどね。

「まぁ違ったならいいや」

「え?」

その瞬間、俺たちの目の前が光に覆われる。

ーーー「大丈夫だよ、ともくん」

声が聞こえ、気がつけば俺は彼女に抱かれていた。

別の方にはジークさんも抱かれている。

そして先程、俺たちの立っていた場所は木や草が綺麗さっぱり無くなっている。

「へぇ〜あれ避けれるんだ」魔族の女の子が笑顔で言う。

「お姉さんは私をどのぐらい楽しませてくれるかな〜」俺たちの周りを飛びながら煽ってくる。

沙月は黙ったまま下を向いている。

どうしたんだ?…

「あれ?恐怖で体も動かないかな?」


「…………ねぇ、ともくん…」


「ん?」


「アイツ、ウザいから殺していい?」


笑顔でいう沙月に「それはダメ」と俺はいうのだった。
















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る