こっち来んな!

 僕はどこか「人とは違う」と思い始めたのは保育園に通っていたときだ。当時は友達らしい友達もいなかった。だからいつも一人遊びをしているか、塀の外をただぼーっと眺めながら母が来るお迎えの時間を待っていた。母は仕事の関係でお迎えが遅くなることが度々あった。それもあってか、一人の時間を過ごすことに慣れていった。


 ある日、お昼ご飯の時間が終わって、遊びの時間になった。そのときは砂場でドロだんごを作ることに熱中していて、一目散に砂場へ駆け出した。黙々とドロだんごを作った。周りには僕に声をかけてくれる人は誰もいない。


 しばらくして一人、誰かが砂場へやってきた。見慣れない顔だった。たぶん、年長組のクラスの男の子だろうとそのときは思った。すると突然、


 男の子「あっち行け!」


 と、罵声を浴びせられた。僕は状況がのみ込めず、ただただ困惑していた。


 男の子「あっち行け!」


 男の子「こっち来るな!」


 罵声だけではなく、僕のドロだんごや砂、ドロまで投げられた。でもなぜその男の子がそんな執拗なまでに僕に対して意地悪をするのか、全くわからなかった。


 状況に気がついた先生がとうとう止めに入ってくれた。


 先生「〇〇くん、どうしてそんなことするの?」


 男の子「ん!ん!(こちらを指さして、今度は自分のほっぺを指さしながらこちらをじーっと見ていた。)」


 幼いながらも、僕はどこか「人とは違う」という考えに至ったのは当然だったのだろう。アザが在ることはそんなにもいけないこと、悪いことなのだろうか。


 当時の僕はそれを言語化できず、ただただ泣きじゃくっていた。

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