第5話

ディアモンとはクラスが違う。もちろん、ミアとも。

良かった。

同じクラスだとみんなが気を遣うだろうし、私も気まずい。

だから夢にも思わなかった。ミアが休み時間になる度に私の元へ来るなんて。

「セイレーン」

ミアは大きな声で私を呼ぶ。

無遠慮に近づいてきて彼女は悲しげな目を私に向けるのだ。

「どうしたら認めてくれるの?ミアとディアモンとのこと」

「認めるも何もその話は既に決着が着いてます。あなたは何をそんなに気にしているの?」

うんざりしていた。そのせいで突き放すような言い方になるのは仕方のないことだ。

するとミアは目に涙を溜めながらそれでも健気に訴える。

「うっ、うっ、くすん。分かっているの。たとえ相思相愛でなかったとしてもセイレーンとディアモンが婚約者同士で、ミアのせいであなたに酷いことをしたって。分かっているぅ」

ポロポロとミアの目から大粒の涙が流れる。

「でも、どうしても止められないの。この想いを。ミアはディアモンを愛してる」

「そうですか」

だから何?

ここでそんな宣言をすることに何の意味があるって言うの。

「仕方がないよな」

「俺たち獣人にとって番は理屈じゃないからな」

「二人が羨ましいよ」

獣人の生徒からはそんな声が聞こえた。

私たち人族には理解できない感覚の為、人族の貴族からは非難の目が向けられる。

気まずそうに視線を逸らすのは良識なく、ディアモンとミアを応援している獣人達だ。

「ミア、セイレーンにも認めてもらいたいの。ミアたちの関係を」

「必要ないかと」

「いいえ!必要よ。ミア、みんなに祝福してもらいたいの。その中にはもちろん、あなたも含まれているわ」

「ウェルツナー嬢!」

耐えかねたようにマリンが声を荒げる。

「先ほどから無礼がすぎますわよ。恥を知りなさい!」

「だぁれ?」

急に怒鳴り出したマリンにミアは驚きながら聞く。

マリンはミアをン睨みつけながら名乗った。ミアは興味なさそうにどうでもいい返事を返す。

「関係ない人はぁ黙ってて欲しいかなぁ」

ぴくぴくとマリンの顔が引きつる。

「行きましょう、マリン」

「でも」

文句を言ってやらないと気が済まないとマリンは目で訴えてくる。でも、彼女は何を言っても無駄だと思う。

彼女の目的は私を貶めること。

獣人が番に抱く想いがどういうものか私には分からない。

「これ以上、関わり合いになりたくないの」

私の言葉にマリンは泣きそうな顔をした。私が傷ついていると彼女は解釈してしまったようだ。

そういうわけではない。ただ面倒なだけなので彼女には申し訳ないと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る