あにラブ Another Story
詩和翔太
お正月番外Ⅰ みんなの願い
一月一日――即ち、お正月。
それは新年の始まりを告げるおめでたい日であり、父母や祖父母、親戚の方々からお年玉なるお小遣いをもらうことが出来るという子供たちからしてみれば一年の中で一番来てほしい日なのではないだろうか。
しかし、一年の始まりだからと言って、これといって特別な日というわけでもない。
ご家庭によっては門松を飾ったり鏡餅を置いたりだとかするのだろうが、言ってしまえばそれだけ。三月三日に飾るお雛様や、五月五日に飾る鯉のぼりと似たようなもので、新年の初日だというのに、おめでたいはずなのに、正直に言えば普段の休日と何ら変わりないのである。
そんな普段と変わらない元旦。夜は二次元部のみんなで神社へとやって来ていた。
何のためかなど言わずもがな、俗にいう初詣のためである。
昼間は人が多いだろうということで朝早くから待ち合わせ、参拝するべく列に並んでいるのだが。
「……誰だよ朝早くだったら人少ないだろって言ったやつ俺ですすみません」
思っていたよりも人が多く、かれこれ三十分は並んだままだった。
もしかしたら、たかが三十分如きで何言ってんだと思う初詣のベテラン(?)もいるかもしれないが、考えても見てほしい。
夜と夏希は対人恐怖症を患っているのだ。日常生活にはそこまで支障がない夜ならまだしも、未だにトラウマが過る夏希が大勢の人に囲まれたらどうなるのか。
「な、ナイトぉ……」
「落ち着け夏希、ここにいる人みんな野菜と思えば少しはマシになるから」
答えは唯一の心の拠り所である夜にべったりくっついて離れない、である。
別に、いつもは夜の隣をあかりが占領してるから今日くらいいいでしょ? と対人恐怖症をいいことに夜にべったりなわけではない。ただ純粋に安心したいがために夜の傍にいるだけである。
それがわかっているからか、あかりも夏希に離れるよう言えないでいた。だからといってそんな夏希の行動を許せるはずもなく、握りしめられた拳がわなわなと震えているが。
そんな光景に梨花と瑠璃が顔を見合わせながら苦笑いを浮かべていると、ついに順番が回って来たのか天井に釣らされた巨大な鈴とお賽銭箱が見えた。
お賽銭箱へご縁がありますようにと五円玉をぽーいと放り投げ、鈴をがらんがらんと鳴らして二拝二拍手一拝。
お願いします、とそれぞれ願い事を思い浮かべる。
――これからずぅっとおにいちゃんと過ごせますように。
もう二度と、おにいちゃんと離れて過ごしたくないから。
少しでも一緒にいたいから。傍にいたいから。
大好きだから。
だから、おにいちゃんと楽しい日々を過ごせるように。
――ナイトとたくさん遊べますように。
一緒にいるだけで今が楽しいと思えるから。
少しでもナイトの傍にいたいから。唯一無二の盟友だから。
大好きだから。
――今年もみんなと……よ、夜と一緒に過ごせますように……。
幼馴染として夜の前でも後ろでもなく隣に立ちたいから。
ちょっとくらいは頼ってほしいから。
だ、大好きだから。
――卒業しても夜クンといられますように。
高校生活はもう少しで終わるから、否、終わったとしても夜と過ごしたいから。
二人で作った部活を大切にしたいから。
大好きだから。
――今までも、そしてこれからもみんなで楽しい日々を過ごせますように。
一緒に過ごすなら楽しい方が断然いいに決まっているから。
だから、今年もよい一年でありますように……。
~あとがき~
ども、詩和です。いつもお読みいただきありがとうございます。
さて、今回の時季外れの番外編は本編の方で投稿したものをそっくりそのまま番外編集へ移しただけのものです。なので、新作という訳ではないのであしからず。
ちなみに、これからもちまちまと番外編を投稿していくつもりなのでこちらもよろしくお願いします。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。
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