第3話 パーティーからの追放劇とやらに遭遇しています。

「すまないがエド、パーティーを出て欲しい」


ああああ聞こえちゃいけない話がきこえてくるぅぅぅ!!!!!!


店長さんなんて普段カウンターにいるくせにしれっと奥に引っ込んじゃったじゃん!

チーズケーキ来たばっかだし帰れないじゃんあたし!気まずい!めちゃくちゃ気まずい!

店長さぁんこれ持ち帰りで!!って言えない!いたたまれないよ!?


しぃんとした中、あたしのカトラリーの音だけがする店内! でもこれ食べないでいたら聞いてるってバレバレじゃんよ!? いや聞かなくても聞こえるんですけどぉ!!


「エドが優秀なのはわかってる、あんたを失うことで俺たちはきっと手痛い目を見るかもしれない。………けど、これから先、エドのレベルの低さは………」


沈黙ぅぅぅぅぅぅ!!!!!!


「わかった」

「すまない」

「ごめんなさい………」

「悪い」

「ごめん」

「今までありがとう」


あれ?

………『エド』って、『黄昏に消えゆく魂』の『エド』って、


つい、お隣テーブルをガッツリ見てしまった。

金髪、赤髪、青髪、緑髪、金髪、まさに異世界カラーリング集団の中にいる、ひときわ地味な焦げ茶の癖毛。美形集団の中にいる、親しみの持てる普通顔。


………エイドリアン・アラン・オロックリン!


「そこのエドさんを追放するって本気なの?」


思わず、あたしは声に出していた。いきなり横から口を挟まれたからだろう、全員の目があたしに突き刺さる。


「………聞こえていただろう」


当の本人が不快そうに呟いた。声だけはものすごいイケボイス………!


「ああ。俺たちは方針が合わなかったんだ」


金髪サラ髪イケメン、スタンリー。勇者スタンリー、みんなの憧れスタンリー。剛剣スタンリー、頼れるスタンリー。

近くで見たのは初めてだ。本当にイケメンだな!?サインくださいっ!


………じゃなくて。

いやいやいやいや、あの『エド』だよ?

『プロ支援職エド』だよ?

そんな簡単に手放していいの?

『勝利の立役者エド』だよ? 『完全勝利メーカーエド』だよ? 『知性のエド』だよ?


「だったら、あたしが貰う」


うわー、こんなこと言っちゃうかねあたし。

心臓はドキドキだ。手だって震えてる。声は震えていないだろうか、パーティー申請ってこんな感じでもいいのだろうか?


「エド………エイドリアン・アラン・オロックリンさん、ずっとファンでした、あたしとパーティーを組んでください!幸せにします!!!!!!」


あたしは立ち上がって『エド』のすぐ近くに向かう。片手を差し出し、頭を下げた。


さっきの重い沈黙よりも静かになるってどういうこと!?


「ぷっ」

「………ぶふぉっ!」

「プロポーズ………?」


他のメンバーの反応に、あたしはどうやら何かを間違えたらしいと悟る。これでは断られるに決まってる。………ああ、こんなだから明日もぼっち、明後日も、あたしはきっと誰とも『パーティー』を組めないんだ………。


「………自分でいいのであれば、受けよう」


パチパチと拍手の音がした。エドの手は大きくて、温かくて、どうしよう推しと握手してしまった………。



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